JICA×TUFS ヨルダン短期派遣事業(青年海外協力隊:日本語教育分野) ?国際日本学部?松浦千紗さんインタビュー
外大生インタビュー
東京外国語大学では、2023年度から独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携して、日本語教育分野に貢献する青年海外協力隊員の派遣事業を開始しました。今回のTUFS Todayでは、冬学期を利用してヨルダンに短期派遣された国際日本学部4年の松浦千紗(まつうら?ちさ)さんにインタビューしました。
???ヨルダン派遣について伺う前に、本学で学ぼうと思ったきっかけを聞かせていただけますでしょうか。
小学生くらいの頃から、テレビの影響で海外に憧れていました。高校生の頃には、国際協力を学ぶ目的でカンボジアスタディツアーに参加しました。その際にお世話になったガイドから、ガイドの資格を得るために日本語を一生懸命勉強したという話を聞き、日本語教育に興味を持ちました。そして、東京外国語大学国際日本学部を志望校として考えるようになりました。また、外国語を学ぶことが好きだったことも東京外国語大学を志望した大きな理由です。
???大学ではどのような分野を特に学修していますか。
日本語学を専攻していて、現在は日本語の文法に関する卒業論文に取り組んでいます。外国語を学ぶ科目もたくさん履修してきました。例えば、これまでにアラビア語、アイヌ語、タミル語などの授業を履修しました。さらに最近、ビルマ語の勉強を始めました。日本文化の発信にも興味があり、「TUFS Japaneque」という学生サークルの代表を務めています。この団体では、主にSNSを通じて日本文化を発信する活動を行っています。
???さっそくですが、今回松浦さんが参加したヨルダンへの日本語教育派遣についてお伺いできたらと思います。松浦さんは本事業で本学から派遣した一期生ですが、興味を持ったきっかけは。
以前から、日本語教育能力検定試験の対策や大学の授業を通して得た日本語教育の知識を活かす活動を行いたいと思っていました。先ほどお話しましたがアラビア語も勉強していたので、アラビア語の授業でヨルダンの話を聞くことが何度かありました。そんな時に、この派遣を知り、強く惹かれました。
???アンマン、そして派遣先だったヨルダン大学はどんなところですか。
アンマンは、渡航前からヨルダンの中でも最先端をいく場所だと聞いていましたが、まさにその通りでした。大きなショッピングモールが複数あり、友人とご飯を食べたり、ショッピングをしたりしました。他にも、店がたくさんあり、ここのこの商品が良いという情報を友人や他の隊員から入手しては、実際に足を運んでいました。
ヨルダン大学は、たくさんの学部学科があり、とても活気がありました。よくイベントが開かれていて、日本の屋台に近いものが並んでいるところや、ラジオを公開収録しているような場面も見ました。ヨルダン大学はトップクラスの大学なので優秀な学生が集まっていて、彼らの姿から、同じ大学生として刺激を受けました。ヨルダン大学に日本語学科はないので、日本語の授業を履修する学生は、専攻分野の勉強をしながら日本語を学ぶことになります。それにも関わらず、日本語の勉強に熱心に取り組む姿が印象的でした。
???ヨルダン大学ではどのような業務を担当したのでしょうか。
配属先であるヨルダン大学では、日本語弁論大会、大使館主催イベントや交流イベントを軸に活動しました。日本語弁論大会に関しては、出場者とのスピーチ練習をするのが主な仕事と聞いていましたが、実際には、審査基準の策定に関わったり、審査表やプログラムのデザインをしたりしました。弁論大会当日は、運営スタッフの一員として活動しました。
大会プログラムにヨルダン大学の学生による合唱があり、私も一緒に歌いました。歌は「花は咲く」で1番は日本語、2番はアラビア語で歌いました。大使館主催イベントでは、おにぎりブースを企画?実施しました。交流イベントは週に一回のペースで、折り紙やLanguage Exchange(言語交流)のイベントを行いました。
???大学外での活動もありましたか。
ヨルダンJICA同窓会(JAAJ)の活動に参加していました。JAAJでは、毎週日本語講座が開かれていて、現地の講師と長期隊員が教えています。私は、毎週JAAJに行き、日本語学習者と交流しました。また、JAAJでは月に2回、「会話クラブ」という日本語でテーマに沿って会話をするイベントが開かれています。私も顔を出し、学習者との会話に加わりました。
さらに、日本語教育とは異なりますが、バカアにある難民キャンプを訪問する機会もありました。親しくしていただいた長期隊員が、バカアキャンプの学校で体育教師として活動されていて、その様子を見学させていただきました。また、学校を出て、バカアキャンプの中を散策しました。
???印象に残っていることはありますか。
短期派遣者はもう1名いるのですが、残念ながら途中帰国となってしまいました。彼女には渡航前の準備段階から、たくさんお世話になりました。特に、大使館主催イベントでのおにぎりブースは彼女が考案し、何度もどのように実施するかを話し合った企画でした。帰国することになったのは、このイベントの直前でした。そこで、ヨルダン大学の仲良くなった学生にボランティアを依頼しましたが、米を炊いたり、おにぎりの作り方を知っていたりする人が私だけだったので、このイベントを実施できるかとても不安でした。しかし、当日会場に着くと、ボランティアを依頼していない学生がイベントの情報を聞きつけ、手伝いに来てくれました。空きコマを利用して複数の学生が交代で来てくれ、大変助かりました。最終的に、私はやることがなくなり、ごみ拾いをするだけになったことも良い思い出です。この出来事もそうですが、ヨルダンの人々の温かさを感じる機会が多かったです。
???初めての経験ばかりで苦労することも多かったのではないでしょうか。
準備で苦労することが多かったです。派遣期間は1カ月だけなので、日本である程度の準備をしていかないといけません。ヨルダンでは、今回が初めての短期派遣だったので、これまでの活動報告もなく、活動内容を具体的に考えることが難しかったですね。長期派遣者やJICA職員の方々とお話ししても、具体的な活動を指定されるというよりは、比較的自由に企画して良いという雰囲気を感じました。そこで、長期派遣者にメールで何度も質問し、どのような企画なら実施できるか考えました。
このようにイベントの準備に取り組んでも、実際のイベントでは想定外のことが起きます。そのような事態に対応する力が私には足りていないと感じました。イベント参加者が想定よりもかなり多く、私1人ではまとめきれず、長期隊員に頼ることもありました。多くの人の前に立ち、何かを教えたり、まとめたりする力を鍛える方法は、日本語教育のテキストなどにはあまり載っていないと思います。今回の派遣は、この力を実践の形で養うことができた貴重な経験となりました。
???今後、この経験をどう活かしていきたいですか。
今後も日本語教育に関わりたいと考えています。具体的な関わり方や方法は模索中ですが、何らかの形でこの経験を活かしていきたいです。これまでは、日本語教室にボランティアとして行っても、ただ先生の指示に従って、レポートを添削したり、発表の練習に付き合ったりするだけでした。今後は、先生がどのように学生に話しかけているか、授業をマネジメントしているのかなどにもっと注目してみたいです。これからさらに経験を積んで、再びヨルダンに、今度は長期隊員として行ってみたいとも考えています。
???最後に、日本語教育派遣に興味を持っている学生や一般の方へメッセージをお願いします。
これまで学んだ知識を実践できるとても良い機会でした。日本語教育について学んだけれども実践する場がないという方にとっては、とても良い派遣制度だと思います。ぜひチャレンジしてみてください。
本学参考サイト