日本と私 ?INZHU BAKHETNURさんインタビュー?
外大生インタビュー
東京外国語大学では、日本の国立大学に進学予定の国費留学生に、1年間の予備教育をおこなっており、2020年度からは文科系の学生を受け入れています。このコースの目標は、日本の大学での勉学に必須である十分な日本語力を身につけること、また、それぞれの専攻に応じて、人文?社会科学の基礎的な学力をつけることです。毎年、世界各国から集まった約60名の留学生がこのコースで日本語をはじめ、文科系の基礎科目や専門科目を学んでおり、来日前に日本語の学習経験がまったくなかった学生たちも、1年後には日本語を含めた十分なアカデミックスキルを身につけてコースを修了し、各地の国立大学へ進学していきます。
今回のインタビューを受けてくださったのは、そんな学部進学留学生として本学で学んでいるカザフスタン出身のBAKHETNUR, INZHUさん(以下、「Inzhuさん」)さんです。学部進学留学生という立場で学ぶ彼女の視点から見た外大における学びと日本への留学に至った経緯に迫ります。
取材担当:長谷川 悠成(はせがわ ゆうせい):言語文化学部フランス語2年、広報マネジメント?オフィス学生記者
TUFSでの勉強
―――なぜ日本への留学を決めたのですか
私は物心がついた時から、アニメを日常的に見ていました。特に姉が好きだった影響もあって『ナルト』をよく見ていました。そんなことを繰り返しているうちに、15歳ごろになって今までは聞き取れていなかった日本語が字幕なしでも少しずつ聞き取れるようになってきました。もともと、日本も好きだったし、日本語の勉強をしてみたいと思っていましたが、私の様子を見ていた母に「あなたは才能があるから日本語の勉強を本格的にしてみれば?」と勧められ、それが最後の一押しとなり、日本語の勉強を始めました。そして、カザフスタンにある日本語学校に1年間通いましたが、途中から中国体彩网手机版流行が始まり学校に行けなくなると、自分で日本語の本を買って家で勉強していました。勉強していて思ったのは、日本語の言語構造が英語やカザフスタンの学校で勉強させられるロシア語よりもカザフスタン語に似ているということでした。このようなところから日本語に対してより一層の「親しみ」を抱くようになり、その一環で日本に留学してみたいと決心しました。
―――日本語を勉強するうえで大変なことは何ですか
私は中国で生まれて、8歳まで住んでいたので中国語と日本語の違いを学習するうえで苦労しています。日本語の漢字の読みと中国語の漢字の読みでは大きく異なるときや中国語の単語の意味と日本語におけるその単語が表している意味が異なっていたりする時があり、混同してしまうことがあります。例えば、日本語の勉強という単語は、中国語では義務的にやらなくてはいけないことをするという意味で、初めて日本語の勉強という単語の使われ方を知ったときは驚きました。あとは、中国語の簡体字と日本語の漢字を混ぜて使ってしまうこともあり、その暗記に苦労しました。
―――東京外国語大学ではどんな勉強をしていますか
私は今、学部進学留学生として東京外国語大学の留学生日本語教育センターで日本の大学に進学するための一年間の準備コースを受けています。一学期は主に日本語の勉強と社会文化論、多文化コミュニケーションを勉強し、さらに選択制で統計学や古文の講義もとることができます。私は、月曜日から金曜日まで朝1?2限は日本語の授業を受けて、午後からは日本語の授業以外の社会文化論や古文の講義もとっています。日本語の講義は、聴解や作文、プレゼンテーションの授業に分けられています。8人という少人数のクラスなので、一人一人に手厚く日本語を教えてくれます。午後の社会文化論の授業は日本社会について多角的に分析しなおすのがとても面白いです。数ある講義の中でも、私が特に好きなのは古文の授業です。日本語能力試験でN1はとっていますが、古文になると全然意味を理解できないことが多いです(笑)。けれど、漢字が少ない日本だけの文化や当時のさまざまな文化事情?歴史的背景について知ることができ、本当に古文は面白いと思います。古文の講義は、和歌を中心に学習しています。この講義では、まず、先生が今日の扱う和歌に出てくる単語の意味など重要項目について説明し、その後和歌を逐次で訳します。講義内では、訳すだけではなく、当時の文化についても学びます。例えば、平安時代、女性のもとに男性が三日間通うと結婚したことになるなど私にとって初めて知ることばかりで学びがいがあります。
東京での生活
―――普段はどんな食事をしていますか
カザフスタンにいたときは、家族内の女性たちみなで日本のうどんのようなご飯を作ることが多かったですが、日本に来てからは、なるべく自炊しようとは思っているのですが、やはり大学の学食を食べることが多いです(笑)。特に100円朝食をよく食べに行きます。ただ、バランスの良い食事をとろうとすると、学食のメニューは少し揚げ物が多いので苦労しています。お昼ご飯を食べると夜はあまりお腹がすかないので、小腹がすいたときは家にある野菜や冷蔵庫に残っているものを食べています。日本食で好きなものはまずは日本の魚料理が好きです。中でも寿司は特に好きです。魚ごとに異なった食感が感じられてとてもおいしいと思います。それ以外だと、意外かもしれませんが親子丼が好きです。「親子丼」という料理の名前も独特で好きですし、加えて量も多くお腹いっぱい食べられるので親子丼が大好きです。
―――所属しているサークルやアルバイトについて教えてください
サークルは、東京外国語大学クラシックバレエ部Etoileに参加しています。日本に来た時からサークルには参加したいと考えており、友達といろいろなサークルの体験会へ行きました。初めは、弓道部にも興味がありましたが、私自身、学部進学留学生であり、受験勉強にも時間を割く必要があったので、入部は断念しました。そんな中、見つけたのがEtoileでした。私は、昔からクラシックミュージックが好きで、母国でもバレエの公演を観に行ったりもしていました。また、カザフスタンでも伝統的な踊りを習ったりもしていたので、このサークルの体験会へ行ってみることにしました。実際に、体験してみるととてもいい雰囲気のサークルで、留学生である私に優しく教えてくださいました。それに加えて、先生がいないのにも関わらず、皆まじめにバレエの練習をしている姿に感動しました。私の国では、先生がいないと絶対に練習が進まない(笑)ので、自主的に振付を考えたり、練習に取り組むのは本当にすごい!と感じ、Etoileに入部を決めました。今は、初心者として練習を頑張っています。
―――学校が休みの時はどのように過ごしていますか
留学が始まったばかりの頃は、慣れない生活に順応するのに苦労してあまり遠出はせず、東京外大の周りや府中を散歩していました。ある程度、生活に慣れてからは、休みの日には、電車に乗って友達と一緒にぶらっと外出するのがとても楽しいです。吉祥寺や高円寺、新宿、渋谷など... それぞれの町で雰囲気もすることも異なっていて面白いです。最近は、鎌倉に友達と遊びに行きました。鎌倉では、初めて浴衣を着てみたり、有名な大仏を見に行きました。東京外大の周りとは違って、海が近くて、昔の日本の歴史や文化を感じました。また、課題の一環として、高尾山にも行きました。ここにもたくさんのお寺や仏閣があり、日本の文化にじかに触れている感じがして楽しかったです。ただ、頂上までは歩いて登ったのですが、私にとっては高尾山の舗装された道は、少し硬くて歩きづらかったです(笑)。
私と日本、変わった習慣
―――母国に帰国する際に家族や友達に買っていきたいお土産は何ですか
買いたいものが多すぎて、なかなか決められません。家族に日本に来てもらって、運ぶのを手伝ってほしいくらいです(笑)。日本の絹織物を持って帰りたいです。手触りや日本らしい色使いがいいと思います。また、日本の食器も持って帰りたいです。私の母国では、ワンプレートで完結しているので、さまざまな形や色、用途をもつ日本の食器を持って帰って向こうでも使いたいです。食べ物としては、抹茶を持って帰りたいと思います。他の国と比べても日本の抹茶は特に美味しいです。他にも、梅干しを持って帰りたいです。梅干しのあのすっぱさがたまらなく好きなので必ず持って帰ろうと思います。
―――日本に来てから変わった自分の習慣は何ですか
日本だと夜になるのがカザフスタンに比べて早いので、それに合わせて私も眠るのが早くなりました。また、日が昇るのも早いので、起きるのも5時?6時になり、結果的に早寝早起きの習慣に変化しました。加えて、朝は寮のベランダから富士山が見えるので、朝一番にカーテンを開けて、ベランダに出て富士山を見ることが日課になり、朝起きることがすごく楽しみになりました。
インタビュー後記
今回のインタビューでは、今まで自分にあまりなじみのなかったカザフスタンと日本の思わぬ共通点や外大の魅力についてたくさん教えていただきました。特に、学部進学留学生という一般の留学生たちとは少し異なる立場で本学で学ぶことの面白さや大変さ、大学進学前の予備教育コース終了後の進路についてなど、日本人学生としてはあまり目につかない本学が行っている取り組みについて多くのことを学ばせていただきました。Inzhuさん、インタビューに協力してくださり本当にありがとうございました!!
長谷川 悠成(言語文化学部フランス語2年)
本記事は本学の「学生取材班」により準備されましたが、文責は、東京外国語大学にあります。ご意見は、広報マネジメント?オフィス(koho@tufs.ac.jp)にお寄せください。