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愛知県豊橋市~新たな世界と出会った場所~:外山朝陽さんインタビュー

外大生インタビュー

みなさんは愛知県豊橋市を訪れたことがありますか? 今回の「私のふるさと~外大生にインタビュー~」では、愛知県豊橋市出身の外山朝陽(とやま?あさひ)さん(国際社会学部ラテンアメリカ地域/ポルトガル語4年)に、豊橋のお気に入りの場所や食べ物など、ふるさとの魅力を伺いました。外山さんには、以前TUFS Todayにて「Estudamos Português!」という、ポルトガル語を学ぶ団体の活動についてインタビューをさせていただきましたが、今回のインタビューでは、ポルトガル語を学ぶきっかけとなった場所やエピソードについても詳しくお話していただきました。

取材担当:言語文化学部フランス語3年 菊谷真理(きくたにまり)さん
記事担当:国際社会学部西南ヨーロッパ地域/イタリア語4年 塩田明子(しおたあきこ)さん
(以上、広報マネジメント?オフィス学生取材班)

外山さんと豊橋

―――こんにちは。外山さんは、豊橋にいつからいつまでいらっしゃったのですか。

実は私は、豊橋で生まれたあとすぐに名古屋に引っ越しして、幼稚園の年長の時にまた豊橋に戻ってきました。そのあと小学校の低学年時は三重県で過ごし、愛知県の一宮市に引っ越しして6年生まで過ごしました。中学生から大学に入るまでは、豊橋で暮らしていました。

―――そうだったんですね。豊橋に生まれてからずっと住んでいらっしゃったわけではないんですね。

はい、愛知県内や三重県などを転々としたノマド(遊牧民)的な生活でした。高校は名古屋の高校に通っていたので、豊橋から片道二時間かけて通っていました。高校3年生の受験シーズンは学校で朝補修があったのですが、在来線では間に合わないので、新幹線の定期券を買って通っていました。

ブラジルとのつながり

―――豊橋のお気に入りの場所を教えていただけますか。

ブラジルスーパーの外観

ブラジルスーパーです。この場所はブラジル社会やブラジル人に興味?関心を持つきっかけとなった場所です。というのも、豊橋にはブラジル人が多く住んでいて、彼らの住む団地の周辺など、各地にブラジルスーパーがあります。私は幼いころから外国のものに憧れがあって、ブラジルスーパーの存在も知っていたのですが、小学生の頃はポルトガル語をわかるわけがなかったですし、ブラジル人の友達もいなかったので、ブラジルスーパーは「興味はあるけれど、なかなか入りづらい場所」だと感じていました。しかし中学生の頃、ブラジル人の母を持つ後輩と仲良くなって、「ブラジルっておもしろいかも」と思うようになり、ブラジルスーパーに入ってみました。ブラジルの香水の香りだったり、ご飯の匂いだったり、エキゾチックな香りが充満していて、それが本当におもしろいと思いました。これがきっかけで、ブラジルへの愛が目覚めました。そういった意味で私のお気に入りの場所です。

―――そうなんですね。外山さんが前回TUFS Todayで受けてくださったインタビュー記事を拝見しました。ブラジルスーパーが発端でブラジルや外国に関心を持つようになったんですね。

ブラジルスーパーの店内

はい。この写真は許可をもらって店内を撮影したものです。ブラジル人ってビーチサンダルを履くのが大好きなので、ビーチサンダルを売るコーナーがあったり、ブラジルでよく飲まれている「Guaranà(ガラナ)」というブラジル版コーラのような飲み物があったり、奥の方にブラジルの香水なども置いてあったりします。石鹸などもブラジルのものを取り揃えていて、たぶんどれも日本で見かけたことが無いブランドのものだと思います。1リットル近い大きな洗剤が置いてあったりするのは、ある意味、カルチャーショックでした。

―――大きさ的にも普段あまり見かけないものが多いのかな、という印象を受けました。1リットルの洗剤ってあまりないですよね。

そうですね。いろいろなものがとにかく大きいです。思い出の食べ物に、ブラジルのボリューミーなハンバーガーがあります。日本のブラジルスーパーの多くには軽食屋さんが併設されていて、この軽食屋さんの大きなハンバーガーを清涼飲料水や揚げ物と一緒に食べたりするんですが、とにかく量が多いのがブラジル料理の特徴だと思います。私は、そうしたボリューミーな食べ物がとても好きでした。

―――ほかにも豊橋とブラジルのつながりを感じる出来事はありましたか。

ええじゃないか祭りでボランティア

ブラジルとの出会いを通してポルトガル語を学び始めて、スピーチコンテストに参加したり、ブラジル人の知り合いも作ってきたりしました。ある知り合いの方のお誘いで、ブラジルコミュニティのイベントやお祭りにボランティアとして参加する機会を得ました。豊橋は「ええじゃないか」の発祥の町で、踊りながら町を練り歩く祭りがあるのですが、それに参加したブラジルグループを、この写真のように看板を持って先導しました。また、「Festa Junina(フェスタ?ジュニーナ)」という、チェック柄のシャツやジージャン、麦わら帽子など田舎の格好をしてダンスをする6月に行われるブラジルの伝統的なお祭りがあります。このお祭りに、私はボランティアとして参加して、ポルトガル語と日本語の翻訳や通訳をしました。日本各地にブラジルコミュニティがあるのですが、豊橋が最大のコミュニティの1つで、この豊橋のFesta Juninaには、静岡県など愛知県外から訪れるブラジル人も結構います。

ゴミ袋に注目すると

―――豊橋のおもしろいところはどういうところだと思いますか。

地元のおもしろいなと思ったところは、ゴミ袋です。表示されている言語別に見ていくと、とてもおもしろいと思うんですよね。最初に日本語が書いてあって、その下に、ポルトガル語、スペイン語、そしてその下にやっと英語が表示されているんですよ。それだけブラジル人やペルー人の人口が多いというのを感じます。これは本当に豊橋市のおもしろさや特徴を表しているなと思っています。

路面電車が走るまち

―――こちらはなんの写真ですか。

豊橋市を走る路面電車

これは駅前の風景で、広島市みたいに「まだ路面電車が走るまち」というのが特徴的です。路面電車の柄もいろいろあって、例えば豊橋はお菓子の「ブラックサンダー」発祥の地なので、ブラックサンダー柄の路面電車が走っていたりします。あと、車内でおでんが食べられる路面電車もあるんですよ。そういうのがおもしろいなと思っています。ただ、路面電車の線路が道路の真ん中にあるので、線路に気付かずに、線路をまたいで右折を待つ車があるのは危ないなと思います。駅の周りには、やや古い面影がありつつも、お洒落な通り道などもあって、冬にはイルミネーションがキレイです。

豊橋の好きなところ

―――ふるさとの「ここが好き」というところを挙げるとしたら、どのようなところですか?

豊橋の国際的な面が好きなところです。東京にも、たしかに外国人の方はたくさんいらっしゃいますが、観光で来ている方や、住んでいても数年という方が多いと思うんですね。しかし豊橋は、ブラジル人で定住する方がとても多いですし、他にもペルー人、フィリピン人、ベトナム人、中国人、韓国人など、とても国際色豊かな町だと思います。先ほどお見せしたゴミ袋でさえ、ポルトガル語やスペイン語、英語、中国語が書かれてあって、こういった町は他に無いのでないかと思っています。

豊橋と東京

―――豊橋と東京で異なっていると感じたことはありますか。

東京に来る前は、東京は豊橋よりも国際色豊かなのではないか、と想像していました。日本の中心でいろいろな大使館も集まっていますし、たくさんの外国人が住んでいて、国際色豊かだろうと考えていました。同時にブラジル料理もたくさん食べられるだろうと思っていたら、ブラジルの高級な肉料理シュラスコ以外の庶民的なレストランはあまり無かったんですよ。豊橋には、人や食べ物などを通してブラジルと触れ合う機会があったのですが、東京にはあまり無いと思いました。あと、これは地方から来ている人はほとんどの方が感じると思うんですけど、交通機関が東京の方が発達しているなと思いました。豊橋にはバスや路面電車は通っていますが、何本も来るわけではないですし、愛知県という土地柄もあって車社会なんですよ。なので、車が無いと本当に生きていけない社会だと思います。そういった違いはとても感じました。

―――どのような時に豊橋が恋しくなりますか。

やっぱり本物のブラジル料理を食べられるのは豊橋だと思うので、「ブラジルの、あのパン食べたいなあ」とか、「知り合いのブラジルの人たちにまた会いたいなあ」と思ったときに豊橋が恋しくなりますね。あとは、私は車がとても好きなので、車を運転したくなった時にふるさとが恋しくなります。東京では、まったく運転しないので。

豊橋への思い

―――今後、ふるさとの豊橋とどのように関わっていきたいと考えていますか。

豊橋はブラジル人が多いので、今まで学んできたポルトガル語のスキルを用いたいという気持ちがあります。日本語指導が必要な外国人の子どもの人数がダントツで多いのが、愛知県なんですよ。そして、日本語指導が必要な外国人の子どもたちの言語別の割合を見ると、ポルトガル語が一番なんですね。特にブラジル人の子どもや、雇用の問題を抱えているブラジル人の大人の方の助けになれるような活動を将来ボランティアとしてできたらな、というようなことを考えています。

――最後に、外山さんにとってふるさととは?

私にとってふるさとは、新たな関心と学びの扉を開いてくれた場所だなと思います。豊橋に住んでいなかったら、ブラジルへの関心や移民問題に対する関心、そしてもっと広く国際的な問題への関心は生まれなかったと思います。

――貴重なお話をありがとうございました。

編集後記

愛知県豊橋市の国際的な魅力を、記事内では紹介しきれないほどの多くの写真とともにお話していただき、終始内容の濃いインタビューでした。特に、地元のゴミ袋に書かれている言語に、国際色豊かな一面を見ることができるというのは、実際にその場所で暮らしていたからこそ伝えられる内容だと思うので、興味深かったです。車内でおでんが食べられる路面電車は今まで聞いたことが無かったので、ぜひ一度豊橋市を訪れて乗ってみたいと思いました。

塩田明子(国際社会学部西南ヨーロッパ地域/イタリア語4年)

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