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理論と実践を行き来する:高藤郁咲さん(博士前期課程:日本語学/日本語教育研究)インタビュー

外大生インタビュー

大学院に進学する理由はさまざまですが、日々の生活と大学での学びとを往復する中で問題意識を持ち、進学を決意する人は多くいます。今回インタビューにご協力いただいた高藤郁咲さんもその1人です。高藤さんがどのような経緯で大学院に進学し、学んだことを将来どのように生かしていこうと考えているのか、留学生日本語教育センターにてお話を伺いました。

高藤郁咲(たかふじ いくえ)さん:大学院総合国際学研究科国際日本専攻国際日本コース博士前期課程1年。専門は日本語学、日本語教育。

取材担当:山本哲史(やまもと さとし):大学院総合国際学研究科世界言語社会専攻国際社会コース2年、広報マネジメント?オフィス学生記者

大学院進学について

―――大学院に進学しようと思ったきっかけについて教えてください。

東京外国語大学言語文化学部のポルトガル語専攻2年生の時に受講した授業で、日系ブラジル人の方々について調べたことがきっかけでした。親がブラジルと日本を行き来することで、子どもたちの言語習得が、日本語もポルトガル語も不安定になることを知り、自分でも何かできないかと考えました。3年次には国際日本学部へ転学部し、より専門的に学びたいという思いが強くなり、大学院進学を考え始めました。日本語教育に興味を持ったのは、母が地域の日本語教室に関わっていて、そこで彼らがいろいろと悩みを抱えていることを知り、自分の専門性を生かして地域の日本語教室に関わりたいと思ったからです。

―――進学準備を始めたのはいつ頃でしたか?

大学4年生になる直前です。3年生の頃に参加した、漫画とアニメを通じて日本語を学ぶプログラムでお世話になった幸松英恵先生に相談したところ、ゼミを担当できるということでした。私は推薦入試を受験したので、入試対策は研究計画書のブラッシュアップと、面接練習のみでした。

東京外国語大学オープンアカデミー短期日本語?日本文化研修プログラム「アニメ?マンガを使って探求をしよう!」での発表内容。

研究について

―――大学院ではどんな研究をしていますか?

言語学の中でも、「行く/来る」の表現や「能動/受動」に関わる「視点研究」に取り組んでいて、特に「~てしまう」という表現に着目しています。この表現には、話者がストーリーテリングをする際に物語の登場人物に対して共感を示す機能があると言われています。一方で、日本語学習者はこの表現を習得しにくい傾向にあります。それがなぜなのかを調べるために、日本語の教科書を分析しようと考えています。今の研究テーマに関心を持ったのは、学部の時に聞いたサンフランシスコ州立大学の南雅彦教授の講演会がきっかけです。その時のテーマがまさに、日本語学習者が「視点」に関わる表現を習得しくいという話でした。

大学院での生活

―――授業はどのくらい履修していますか?

指導教員のゼミを含めて10コマなので、かなり多い方だと思います。睡眠時間が短くなってしまう日もあります。日本語教育の実習授業や、来年タイの大学の日本語学科で日本語を教えるのでそのための事前準備の授業、外国につながる子どもについての授業、日本語教育の理論的な授業や日本語の読解などです。理論と実践両方ありますね。特に大変だったのは、留学生も交えてグループで発表をする授業でした。日本語母語話者が少なくて、自分の伝える力が不足していることもあり、意思疎通の面で難しさもありました。

グループワークで作成した教材。

―――大学院での交友関係について教えてください。

ゼミの仲間や指導教員の先生に修士論文について相談することはありますが、一人で過ごす時間が比較的多いと思います。ただ、研究テーマからして調査の依頼をする場面があるので、日本語母語話者よりは、日本語学習者とのつながりを大切にしなければいけませんね。

―――研究や将来について、悩んだり落ち込んだりした時はどのようにリフレッシュしていますか?

悩んだり落ち込んだりしたときは、よく家族に相談します。それから、母が以前から和太鼓をやっていて、日本語教師として日本文化を知っていないといけないなと思ったのもきっかけで、最近和太鼓を習っています。いざ始めたらハマってしまって、ストレス発散にもなっています。

将来の展望

―――今後の目標や進路はどのように考えていますか?

在学中に外国で日本語を教える経験をしたくて、1年休学をして日本語教育関連の派遣事業に挑戦したいと思っています。まだ就職活動はしていなくて、博士後期課程も興味はあるのですが、研究を続ける自信がなくて迷っています。将来は日本語教育や国際交流、多文化共生などに関わる仕事に就きたいと考えています。地域の日本語教室をはじめ、日本語教育はボランティア頼りになっている側面が強いと思っていて、きちんと対価が支払われるような環境をつくっていきたいという、より大きな目標もあります。

大学院進学について

―――博士前期課程への進学を考えている人たちに向けてひとことお願いします!

学部と違って、与えられたものをこなすだけでなく、自分で問題意識を持ってテーマを見つけていく必要があります。それは大変でもあり、同時に楽しいところでもあります。本学の国際日本専攻ならではの点で言うと、さまざまな国?地域から多様な背景を持った学生が学びに来ていて、彼らとの密な関わりを通して、日本にいながら留学をしているような体験ができます。ぜひ興味にある方には来てほしいです。

留学生日本語センター前にて。

インタビュー後記

高藤さんの言うように、大学院は、自分で問題意識を持ってテーマを見つけることを常に求められ、最後には論文という形で自分なりの「答え」を示す場所です。口で言うほど簡単ではありませんが、高藤さんのように、授業だけでなく自分の身の周りで見聞きしたことからヒントを得るのも1つの手かもしれません。例えば、一度大学を出て働くことも、そこでの経験から問題意識を持って大学院進学や研究者の道に進むにあたってプラスに働くことでしょう。

山本哲史(大学院総合国際学研究科博士前期課程世界言語社会専攻国際社会コース2年)

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