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在宅研究生活のリアル~大学院生インタビュー~

外大生インタビュー

2020年10月25日(日)に、イベント「大学院ってどんなところ?~知られざる外大院生の生態~」が開催されます。このイベントを企画開催するのは、東京外大の大学院生のグループ「TAMA研*」。大学院での研究生活のリアルを語りつつ、大学院進学を考えている方の疑問に現役大学院生が答えます。進学を特に考えていない方でも、「大学院ってどんなところ?」と考えたことがある方は、ぜひこの機会にご参加ください。詳細や参加方法は、こちらをご覧ください。

ところで、このコロナ禍で、大学院生たちはどのような研究生活を送っているのでしょうか。

今回のTUFS Todayでは、TAMA研の皆さんにインタビューしました。

*【TAMA研とは?】TAMA研とは、非公式の東京外大の大学院生グループです。研究の情報交換や、研究会のお知らせ、奨学金、就活、博士課程を生き抜く生活の知恵など、大学院生が主体となって様々な情報を共有し交流する場を作り、日頃孤独になりがちな大学院生の生活と研究をより良くしていく、ということを目的に2017年11月に作られました。
[詳しくはこちら:http://wp.tufs.ac.jp/tufstoday/students/19082201/

  • 今城尚彦さん:博士後期課程。専門は文化人類学。アレヴィーにみる現代トルコの「世俗」と「宗教」の動態について研究している。(以下、今城さん)
  • 井森彬太さん:博士前期課程。専門は宗教社会学。イスラエルのドゥルーズについて研究している。(以下、井森さん)
  • 小栗宏太さん:博士後期課程。専門は香港文化研究。近年は香港のデモに関連する研究も行っている。(以下、小栗さん)
  • 川本夢子さん:博士後期課程。専門は社会言語学。ポーランド語の敬語的表現について研究している。(以下、川本さん)
  • 佐藤ひとみさん:博士後期課程。専門は歴史学。共産主義体制下におけるチェコスロヴァキアの「市民社会」論について研究している。(以下、佐藤さん)
  • 新谷和輝さん:博士後期課程。専門は映画学。ラテンアメリカの映画について研究。現在はチリの映画に焦点をあてた研究を行う。(以下、新谷さん)
  • 満生紗希子さん:外務省に勤務(本学大学院博士前期課程修了、現在は外務省の研修制度でトルコのボアジチ大学大学院に在籍中)。東京外大の修士では地政学を、現在は国際関係学を専攻。アメリカとロシア間におけるトルコのソフトバランス政策ついて研究している。東京外大の先取り履修制度を利用して1年間で博士前期課程を修了している。(以下、満生さん)
    [先取り履修についてはこちら:http://wp.tufs.ac.jp/tufstoday/alumni/19082701/

——現在の研究状況について教えてください。

今城さん:フィールドにいけなくなってしまいました。本来ならこの9月から調査でトルコに行くはずでした。予定が思うように進まず困っています。でも、逆にこのフィールドに行けない時間を使って、研究の理論の部分を勉強できている点はよかったと思っています。

井森さん:僕もこのコロナで現地に行けなくなってしまいました。調査ができなくなってしまったので、修士論文の内容を変更しました。現地に行けないのは寂しいけれど、仕方ないですね。

川本さん:10月からポーランドに留学する予定が、1学期延期することになりました。延期になったのでこれまでの計画が真っ白になり、それを立て直すのに時間がかかりましたね。今は現地の先生と連絡を取りながら、日本でできることを見つけてやっています。

井森さん

佐藤さん:私もこの夏にチェコのサマースクールに参加する予定でした。そこで、来年留学するときにお世話になりたい先生とコンタクトをとりたかったのですが…。あと図書館で複写ができなかった時期は、資料が集められなくて本当に辛かったです。

新谷さん:東京外大をはじめ、いろんな図書館が使えないのは不便でした。東京外大の図書館は郵送サービスも行っていましたが、禁帯出の本は図書館に入らないと読めないので…。

小栗さん

小栗さん:図書館に以前のように気軽に入れないことは研究に大きな影響があります。大学院生は、集めたデータを論文や研究発表としてまとめないといけないのですが、その時に、大量に文献を調べる必要があります。それをやるには図書館という場所が必要です。東京外大には郵送サービスがある点では素晴らしいと思うのですが、院生の場合、数冊で事足りる話ではないんですよね。あとは人と会えないのも辛いです。院生仲間との他愛のない話って、研究をまとめたり、モチベーションを保ったりするのにすごく役立つと思うのですが、そういうこともできない。

満生さん:今トルコにいるのですが、授業は3月から全てオンラインになりました。授業の時間の合間に、電子書籍を読み研究を進めました。トルコでは、図書館にある本はほとんどオンラインで閲覧可能なので、図書館に行かずに研究ができました。一方で、対面授業がなくなると、友人に会えなくなってしまい寂しかったです。

——先が見えないですよね。

川本さん:それが一番精神的にきついので、先のことは考えないようにしています。

新谷さん:研究計画がまったく立てられないです。この時に何をするということが決められないので。

今城さん:奨学金や助成金の渡航期限も、心配の種のひとつです。僕は助成をもらってトルコに行く予定で、今は渡航を延期していますが、いつまで延期できるのかと思うと焦ってしまいます。

川本さん:留学に関して言えば、時間の制約が色々とあるという点で、学部生の方が大変なのではないかと思います。

——現地にいかなくてはならない理由とは?

今城さん:フィールドでは、時間をかけて人間関係を築くことが重要になってきます。僕の場合、次のフィールド先はトルコにある博物館なのですが、そこで働くスタッフの行動や生活に密着したいと思っています。それは調査に行かないと得られない体験ですよね。それから、フィールドに行ってみると、行く前に予想しなかった出来事に遭遇することがあるのですが、それが案外次の研究テーマになることもあります。

新谷さん

新谷さん:僕の研究も、現地にいって映画資料館で上映の記録を調べたり、日本では入手しづらい文献を手に入れたりする必要があります。あとは映画の関係者とコネを作って話を聞かないといけないです。

川本さん:やはり研究をしていく上で、日本だと資料に限界がありますね。また、現地の学会に参加して研究の人脈を広げられることも、留学をする大きな理由の一つです。

——フィールドに行けないとき、日本で現地を感じる方法を教えてください。

川本さん:ポーランド語で交わす何気ない話がすごく恋しいので、現地の知り合いと連絡を取るようにしていますね。あとは、ポーランド食器を使うと懐かしくなりますね。ポーランド料理が恋しくなったら「ポンチキヤ」(東京都調布市)というポーランド料理屋に行くといいですよ。

小栗さん:やっぱり現地の日常を感じたいので、ラジオを聞いたり、広東語で書かれた小説を読んだりしていますね。また、個人的に香港のミルクティーが好きでして、今は美味しい香港ミルクティーの入れ方に凝っています。

佐藤さん

佐藤さん:この前、ハルシュキという、スロヴァキアの伝統的な家庭料理を自分で作ってみました。すごく懐かしくなりましたね。あとは、以前先生から1988年のチェコスロヴァキアの新聞を譲っていただいたのですが、読むだけでなく、新聞のにおいもかいで、30年前のチェコスロヴァキアを感じています。本格的なチェコ料理を味わいたい時は、チェコ料理レストランの「だあしゑんか」(東京都新宿区)に行きます。

新谷さん:音楽を聴きますね。おすすめはビクトル?ハラです。それと、コロナビールを片手に自作タコスを食べることもあります。お店でタコスを食べたい時は、「Hacienda del cielo MODERN MEXICANO」(東京都渋谷区)がおすすめです。デートスポットとしても良いですよ。

今城さん:音楽を聴くと、その曲を聴いた場所や、現地の人と交わした会話を思い出しますね。特に民謡をアレンジした曲をよく聴きます。トルコは老若男女民謡を聞くので、例えば僕がトルコで民謡の最初を口ずさむと、その続きを誰かが歌ってくれたりします。おすすめはアルトゥンギュンというバンドですね。サウンド的には普通のバンドなのですが、そこにトルコの伝統楽器であるサズ(リュートのような形の弦楽器)が入ってくるところが特徴です。最近日本の野外フェスティバルに来る予定だったということで、日本でもにわかに有名です。アルトゥンギュンの曲は、YouTubeなどでも「アルトゥンギュン」と検索して聴けますよ。

満生さん:私も、日本にいるときはトルコ人の友人と連絡を取るようにしていました。トルコ料理レストランにも行きましたね。おすすめは「ボスポラスハサン」(東京都新宿区)、「ジェイハン」(神奈川県横浜市石川町)、「イズミル」(東京都杉並区)です。あとは、ドラマを観てトルコを感じていましたね。なかでも、『アシュク?メンム』というドラマにどハマりしてしまいました(笑)。「アシュク?メンム」は、「禁断の愛」という意味です。タイトル通り、このドラマの話は、富豪の男性と「年の差」結婚した女性が、その嫁いだ先の甥と禁断の恋に落ちるというものです。最後の最後まで面白いので是非観てほしいです。

井森さん:僕はクーフィーヤ(アラブ地域で男性が頭に巻く伝統的な装身具)を被ってアイデンティティを確認していますね。ちょっとやってみますね。

満生さん
ディープな世界になってきた???!

——今後の目標は?

今城さん:直近の目標は、フィールド調査の準備をしっかりやることですね。フィールドから帰ってきたら、博士論文以外でも執筆する機会があるので、それに向けて頑張ろうと思っています。

井森さん:質の良い修論を書くのが目標です。将来は本を出したいです。

川本さん:自分の研究テーマはもちろん、日本語や日本文化といった私自身の身の回りのことにも注意深く目を向けていきたいと思っています。

小栗さん:地域の専門家として、時事問題にも気を配っていたいなと思っています。昨年あたりから、研究に加えて香港のニュースも追うようになり、その重要性を痛感しました。世の中に還元して役に立てる情報を発信していきたいです。

満生さん:トルコ語を仕事で生かせるレベルまでに引き上げることが目標です。

佐藤さん:今、本を一冊翻訳しようと奮闘しているので、これをいつか刊行できたらいいなと思っています。

新谷さん:今年中に論文を一本書くことと、来年に映画の上映会もやりたいですね。チリの映画で上映したいものがあるので。

—— 進学を考えている皆さんへのメッセージをお願いします。

今城さん

今城さん:僕の場合は留学に行きたくて大学院に進学しました。進学してみると、学部の頃に知らなかったことにたくさん出会えたので、大学院にきて良かったと思っています。学部の時にやりきれなかった研究テーマがある場合は、思い切って進学してみるといいのではないかと思います。

井森さん:今城さんと同じで、卒業論文でやりたくてもできなかったことがあれば進学するのも視野に入れていいと思います。大学院に入ると、これまであまり面識のなかった先生とも交流できたりするので、すごく楽しいです。

新谷さん:修士(博士前期課程)への進学は、あまり気負わずに目指してもいいと思います。それから、周りが就職や経済的に自立していくなかで、親に頼るのは気が引けるかもしれませんが、頼れる時に頼っておいた方がいいです。そちらの方が、貸与の奨学金を借りてバイト漬けになり研究に時間が割けなくなるよりも、しっかり研究に打ち込めると思います。

小栗さん:研究をするときは、自分が調べたことを位置付ける作業が必要になるので、広い視野を持ちながら研究を進めていって欲しいと思います。

佐藤さん:研究は大変だけれど楽しいものです。大学院に進学したら充実した研究生活が送れると思うので、是非検討してほしいです。

川本さん:私は、学部生の時は修士など行かないと思っていたし、修士の時は博士なんて行かないと思っていたんですよね。その都度選択をして、今があります。好きなことをやっている人は、社会の変化に強いような気がするので、好きなものを続けることにストイックになる学部生が増えるといいなと思います。

満生さん:私が大学院を考えたのは、留学から帰国した後です。先生から先取り履修の話を聞いて、試してみようと思ってやりました。実際に大学院に入ってみると自分の世界がとても広がったので、挑戦してよかったなと思っています。怖がらずに、機会があればどんどんチャレンジしてください。

川本さん

イベント「大学院ってどんなところ??知られざる東京外大院生の生態?」のお知らせ

TAMA研による学部生向けイベントが2020年10月25日(日)午後4時から5時30分に、Zoomを利用してオンラインで行われます。

「大学院ってどんなところ??知られざる東京外大院生の生態?」は、学部生がイメージしにくい大学院のこと、例えば院試や研究生活、さらには生活費のことなどに関して、本学の院生がざっくばらんに語るイベントです。今回のインタビューを受けた皆さんを登壇者としてお迎えします。大学院への進学を迷っている方への一助になることを目指した企画です。
参加者は事前に質問を送ることができます。参加ご希望の方は登録フォームより必ず事前にお申し込みください。参加登録をしていただいた皆様には、イベントの前日にZoomの情報をお送りします。

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