シリーズ「TUFS PLAYLIST」 “Youth” きみに私の青春を奪うことはできない:藤原萌乃さんインタビュー
外大生インタビュー
「TUFS PLAYLIST」企画では、東京外大生にインタビューを行い、専攻地域の楽曲や個人的な思い入れのある世界の名曲を紹介してもらい、音楽を通して学生たちの個性?魅力に迫ります。
第2弾は、国際社会学部アフリカ地域2年の藤原萌乃(ふじわら?もえの)さんにお話を伺いました。おすすめの作品は、カナダ出身のシンガーソングライターであるShawn Mendes(ショーン?メンデス)氏の『Youth』。
取材?記事担当:言語文化学部フランス語2年?村上眞海(むらかみ?まりん)さん
曲との出会いと魅力
―――まず、この曲を知ったきっかけを教えてください。
もともとShawn Mendesの”Lost in Japan”という曲が好きでした。この曲を何度も聞いているうちに彼の曲がYouTubeのおすすめに頻繁に表示されるようになってきて、今回紹介する”Youth”にも出会いました。その時は曲の背景を知らなかったのですが、ミュージックビデオに、いろいろな若者たちが出てきているところなどに何となく強いメッセージ性を感じ、何度も聞いているうちに夢中になりました。
―――さまざまな曲がある中で、とくにこの曲に惹かれたポイントはどこですか。
ミュージックビデオに曲の内容とは直接関係のないような人たちがたくさん出ているところです。普通ミュージックビデオに登場するのはアーティストに加えダンサーやモデルの方々であることが多いと思います。しかし”Youth”の場合は歌っているわけでも踊っているわけでもない若者たちがじっとこちらを見つめてくるので、その様子がとても印象的でした。また初めは英語をすべて聞き取れたわけではないので意味を完全に理解することはできませんでしたが、強いメッセージが込められているのだろうなとは感じていました。
―――その後ご自分でこの曲の背景を調べられてどのようなことがわかりましたか。
この曲はShawn Mendesがある事件にインスピレーションを受けて作ったものであることがわかりました。2017年6月にロンドン橋にて、車を暴走させたり刃物で歩行者を襲ったりして8名の死者と50名近くの負傷者を出すという痛ましいテロ事件がありました。前々から社会のために何かできないかと考えていたShawn Mendesがこのことを知り、このような事件やそれに対する報復といった憎しみの連鎖などに自分たちの若者時代を奪われたくないという思いから、若い世代の持つ力について歌った曲です。
―――他にこの曲の好きなところはありますか。
ミュージックビデオが特徴的である点です。長めのミュージックビデオなのですが、前半は曲で、後半は曲ではないのです。曲の中に出てきた若者たちは「プラスサイズ」と呼ばれるバレリーナや、双子のピアニスト、ラッパー兼環境保護活動家、まだ子どもながらに現地でボランティアを行う男の子といったさまざまな分野で活躍する人たちなのです。ミュージックビデオの後半は、彼らの主張や特技を披露する場になっています。シェイクスピアの詩を暗唱している女の子はシェイクスピアの詩を力強く語りますし、双子のピアニストはピアノを弾く、といったように才能を披露する場が設けられていることが魅力的だと思います。
―――そのようなさまざまな分野で活躍する若者たちを集めたのもShawn Mendes自身のアイデアなのでしょうか。
そうですね。この曲はそもそもKhalid(カリード)という米国出身の歌手をフィーチャリングとして迎えた曲なのです。2人はもともと仲が良く、以前からともに社会性のある曲を作りたいと考えていたところにテロ事件があったので、2人の考えで世界の活動家などに呼び掛けたのだと聞きました。
藤原さんと曲
―――かなりメッセージ性のある曲であることが伝わりました。藤原さん自身、この曲によって影響を受けたと感じる部分はありますか。
私がこの曲を知ったのは高校時代で、当時は国際協力をしたいと考えていたのですが、それはどこか世間の「社会のためによいことをした方がよい」といった風潮に流されたものでもありました。しかしミュージックビデオで若い頃から主体的に活動している人々を見て、全然違うなと感じました。きっと彼らはまだ切り拓かれていないところにでもどんどん飛び込んでいくし、彼らなりに問題意識を持って活動しているのだろうと感じ、自分も「言われているからやろう」ではなく自分から問題を見つけて行動していこうと思うようになりました。
―――どのような時にこの曲を聴きますか。
悩んでいるときに聴くことが多いです。自分の将来のことで迷いが生じている時にこの曲を聴くと、自分の決めた道を信じて進もうと思うことができます。また自分に自信を持ちたい時にもこの曲に励ましてもらっています。
―――お気に入りの歌詞はどこですか。
何度も登場する”You can’t take my youth away”( 和訳:きみに僕の青春を奪うことはできない)という歌詞です。この”You”は誰かを指すのではなく暴力や憎しみ、ヘイトのようなものを指すのだと思うのですが、それらが私たちの青春時代を奪うことはできないといった意思が現れていると感じます。
―――他にShawn Mendesの好きな曲はありますか。
“Wonder”という曲も好きです。優しく想いを伝えるラブソングなのですが、単なるピュアなラブソングではなく、「世界はうまくいく」というようなフレーズもあり希望を感じられる曲です。
メッセージ
―――やはりShawn Mendesならではのメッセージ性が感じられますね。
はい。「世界平和観」とでも言えばよいでしょうか、そのようなものが感じられますね。
――――――彼の曲にはそうしたメッセージや世界観が現れていることが多いのでしょうか。
そうですね。他にもアメリカ国内でのDV被害をテーマにした”Treat You Better”という曲があるのですが、ミュージックビデオのラストにDV相談専用のナショナルホットラインが表示されます。そうしたことからも彼の社会問題への関心の高さが伺えると思います。
―――そうしたメッセージ性に関連してなのですが、藤原さんは音楽にはどのような力があると思いますか。
曲によっても異なるとは思うのですが、言葉や音、リズムなどさまざまな部分で聴いた人の心に訴えかけ、さらには行動や人生にまで広がるように影響を及ぼしていく力があると思います。またそれが連鎖して他の人の行動につながったり、ともに聴いた人が一緒に動こうとなったり、そのようなつながりを生み出す力もあると思います。
―――最後に読者のみなさんに向けて、”Youth”のおすすめコメントをお願いします。
この曲では若者たちに焦点が当てられていましたが、行動する力を秘めているのはどんな年代でも変わらないと私は思います。自分が何歳であろうと”Youth”、青春時代にいるのだという勇気をもらえるようなこの曲をぜひ聴いて、ミュージックビデオも観てほしいです。そしてそこに登場する若者たちの中にも、もしかするとあなたと同じような思いを抱えている人がいるかもしれません。そういった彼らの姿はきっと励みになると思います。
―――本日はありがとうございました。
インタビュー後記
私はこの曲を知らなかったのですが、藤原さんがこの曲について存分に語ってくださったおかげで、その魅力を知りとても好きになりました。知らない方はぜひ聴いて、そしてミュージックビデオを見てほしいですし、知っている方もこの記事を読んだ後にまた見てみるとその魅力をさらに感じることができると思います。また今回、曲が与えてくれる力やメッセージについても話していただき、あらためて音楽の素晴らしさを感じることができました。貴重なお話をありがとうございました。
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取材担当:村上眞海(言語文化学部フランス語2年)