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ムスリム留学生は今~パンデミック下の日本で学ぶ~

外大生インタビュー

中国体彩网手机版感染症が世界で猛威を振るう中での留学は、今までにはなかった試練が多く待ち受けています。日本で今学んでいる、ムスリムの留学生たちはどうでしょう。生活環境や、アルバイト、ハラール製品…。ムスリムとして日本で暮らす学生だからこそ直面する困難は、パンデミックで鮮明になります。東京外国語大学の国際日本学部1年生の2人の言葉から、パンデミック以前から日本に存在する社会的な課題も見えてきました。日本は果たして、ムスリムフレンドリーな場所になれるのでしょうか!?

インタビュー?取材担当:国際社会学部西アジア北アフリカ地域4年?大竹くるみ(おおたけくるみ)さん(広報マネジメント?オフィス学生取材班)

座談会参加者:

  • 国際日本学部1年 ファティマさん インドネシア?ジャカルタ出身、日本育ち
  • 国際日本学部1年 キアラさん インドネシア?パダン出身、2年前に来日
  • 大熊さん 日本の企業とムスリムの方々を繋ぐメディア、Salam Groovy Japanを運営。今年のラマダン明けのイード(ラマダン明けの祭礼)の際に、東京外大のムスリム学生にハラール食品を配布。

*文中では、ファティマさんを「」、キアラさんを「」、大熊さんを「」と表記しています。

インドネシアから府中へ

——お二人が日本に来て、東京外大で学んでいる理由は何ですか?

 最初に日本に出会ったのは、インドネシアで日本のアニメが流行っていた時でした。中学生くらいの頃から、日本語に興味があって、その後高校で日本の文化クラブに入りました。そこで日本語や、日本の食べ物、漫画の描き方などを学んだことが日本に来たきっかけです。

 2000年代に、インドネシアで日本のアニメや文化がすごくブームになっていました。そこから、インドネシアで日本のものがどこでも見られるようになってきました。例えば、たこ焼きとか、日本の食べ物をインドネシア人が屋台で出そうとしたり、日本の企業がインドネシアで発展していたりしますね。

——インドネシアで日本ブームがあったのですね!ファティマさんは日本育ちですが、どうして東京外大に?

 将来、日本とインドネシアのビジネス関係とか、翻訳系の仕事に就きたいなと思っています。インドネシアのクリエイティブ、IT系をどうにかして発展させたいのです。日本はそういった面ではかなり発展しているじゃないですか。なので、インドネシアも進化させていきたいなと思っています。

キアラさん:インドネシアの日本文化クラブで行われたポスターコンテスト

ハラール食材を買っているのは、日本で人気の????

——ハラールの食べ物について。日本で生活していて、ハラール食材は手に入っていますか?また、どこで手に入れていますか?

 東京ではハラール食品を手に入れる方法はいくつかあります。業務用食品スーパーや輸入食品店ではインドネシアの食材をよく売っています。私が以前いた大阪には、インドネシアの食材のお店もありました。他には、友達がインドネシアに行くときに、インドネシアの食材を買ってきてくれるように頼みます。ハラール食材をたくさん売っている、タイやベトナムの食品を扱ったお店の商品を買うこともあります。

 私もキアラさんと同じく、主に業務用食品スーパーですね。調味料などを買うには、輸入食品店もよく行っています。

——業務用食品スーパーではなく、一般のスーパーマーケットでも買い物をすることはありますか?

 あります。でも、スーパーでハラール認証の食材を探すのはとても大変です。なので、野菜などの生鮮食品や水を買っています。日本のお菓子などを買いたいときは、原材料をチェックする必要があります。

 業務用食品スーパーは自宅からだと電車に乗る必要があって遠いので、一般のスーパーマーケットに行くこともあります。その時は、私も商品の裏面の原材料表示などを見て、豚や牛乳があるか毎回確認しています。

——一つの商品を買うのにとても時間がかかってしまいますね。

 そうですね、結構時間がかかっています。また、裏面の表示には書かれていない成分もあるんです。その場合、面倒ですが、業者さんに電話をして、何を使っているのか聞くんです。例えば、お菓子に入っている乳化剤は何由来か、もし動物由来だったらそれは牛なのか、とか(笑)

——ハラール食材は、他の食材と比べて値段の違いはどれくらいあるのですか?

 値段の違いは確実にありますね。一般の食材と比べたら、かなり高いです。

 たしかにそうですね。特にハラールのお肉は、輸入したものがほとんどです。なので、一般のものより少し高いなと感じます。

 飛騨地方で、ムスリムの方々に観光に来てほしいといって、ハラール和牛を商品として出している方がいます。日常で、自分で買うとなると難しいですが、2020年のラマダン期間中のイフタールで召し上がってもらおうと、ムスリムの方々が集まるジャパンダワセンター(Japan Da’wah Centre)に寄付をさせていただいたことがあります。

*イフタール:ラマダン期間中、日没後にとる食事

——日本でもハラールの肉があるのですね。

 少しずつですが、そうですね。ただ、オリンピックに向けてムスリムの方もたくさん日本にいらっしゃると期待していた企業もたくさんあるんですけど、海外から来られないということになって、今まで頑張ってきたハラール食品を続けるか悩んでいる方々もいるんですよね。

 たしかに、今コロナで海外から来る人も制限されていますし、ムスリムで日本に住んでいる人の数もかなり減っていると思います。だんだんと帰国している人も多いですね。以前は、インドネシアなどのムスリムの多い国から観光客が来ていましたよね。でも今は来ていなくて、ハラールのお店でも閉めているところが多いと聞いています。

ファティマさん:業務用食品スーパーやオンラインショップ(左)、近くのお店(右)で購入するハラール食材

ハラールは、食べ物だけじゃない!

——ハラール商品には食材だけではなく、化粧品や歯磨き粉、石鹸なども含まれますが、そういった商品は日本で手に入っていますか?

 私は、ハラール認証された化粧品などをいくつか使ってはいるんですが、主に一般のスーパーや薬局で手に入れられるものを使っています。

——一般の薬局にもハラール認証されたものはあるのですか?

 それはないですね。ハラール認証されていないものを使っています。私はあまり化粧品の場合気にしない方ですが、成分的に問題のないものを使っています。

 私も薬局で買っていますね。また機会があれば、やっぱりインドネシアの友達に送ってもらえるように頼みます(笑)。

——日本で、ハラールだと確実にわかる商品は手に入らないのですか?

 まだ日本国内では、ハラール認証を受けている化粧品を作って販売している会社自体が数社しかないんですね。やっぱりムスリムの人数が多いのは海外になるので、日本で作って海外で販売するという形が多いようです。また、日本の化粧品って高いことが多くて、海外で出しても、国や地域によっては経済的な水準が合わずにミスマッチが起きているという話も耳にします。

——せっかく日本でハラール認証される化粧品をつくっても、日本ではないところで売られるのがメジャーなのですね。

 そうですね。ハラールの商品は体に良いものでもあるので、日本の方にも使ってもらえれば、日本で普及しやすくなってコストも下げられる。そうして、手に取りやすい金額になるのかなと思いますが、まだ少しずつですね。

日本で、ヒジャブを着けて働く

——日本でアルバイトをされたことはありますか?

 かなりたくさんやりましたが、ほとんどは工場です。というのも、コンビニやスーパーで働く場合、服装がとても厳しいからです。なので、自分の思うような恰好で働ける企業の仕事をするようにしています。

——服装の規定が厳しいというのは、ヒジャブの着用とも関係があるのですか?

 そうです、これが結構大変なんです。一般的なレストランで働いてみた時、私はヒジャブを着けていたのですが、周りの人が危険だと感じたり、お客さんから良くない対応を受けたりしました。なので、そのような働き方はあまり好みません。

——ヒジャブを着けて接客をするのは、日本では難しいのですね。

 はい、それを頭に着けているならダメだと、直接企業に拒否されたこともあります。それは肉の工場で、工場内で髪をカバーするための制服があったので、その下にヒジャブを着けていて良いか聞いたら、それは規則違反だからダメだと言われました。日本で公やお客さんへのイメージが重視されていることは理解しているので、考え方はわかりますが。

 私は以前家庭教師を少しやっていました。それは、知人に教えてもらったヒジャブOKの仕事でした。担当の子からも、ヒジャブを着けていてもOK、という許可がもらえたから出来ました。他には、友人から某衣料品店はヒジャブを着けていても大丈夫だと聞いたので2回応募しましたが、落ちてしまって。なぜかというと、バイトを募集していたのがコロナの時期で、海外の人も来ないから、どっちかというと従業員もあまり英語を使わないだろうから、と。日本語メインで仕事をするから、日本人を優先して仕事の効率を考えていると面接で言われました。

キアラさん:大阪の食料品工場でアルバイトをしていた時の同僚と。体と頭が全て覆われるのでキアラさんにとって適切だったそう。

パンデミックで顕著になる、ムスリム留学生の困難

——今までアルバイトをされていたということで、今回のパンデミックで仕事や収入に影響はありますか?

 ヒジャブOKの仕事だと、英語を必要とされていることが多いので、コロナの時期でそういった仕事が減っているようで、今は仕事が全然なくて探しています

 私は1年ほど前から自立して生活しているので、とても不安定です。工場でのアルバイトの他に、オンラインでフリーランスの仕事をしています。

——収入に変化はありますか?

 私の場合、50%くらいになりました。昨年の4月くらいには、アルバイトが見つからずに、なので、3、4か月の間は全く仕事がありませんでした。東京に来たばかりの時期がちょうど緊急事態宣言下で、アルバイトも失ってしまったので、状況を改善するのは大変でした。

——お二人の周りのムスリム留学生の方々も、パンデミックによってアルバイトに影響が出ていますか?

 そうですね、翻訳のバイトに合格した友人に仕事の依頼が全然来なかったり、某衣料品店で働いている友達もシフトがかなり減っていたりして収入が得られないと聞きました。

——パンデミックの影響で収入が減ってしまう分、どのようにやりくりしていますか?

 コロナ前は自立して生活していても、今は、ほとんど家族に頼って生活を維持していますね。

これからの日本に求めること

——ムスリムとして、また、日本で学ぶ留学生として、あったら助かると思うことは何ですか?

 ヒジャブを被っていても出来る仕事がもっと増えればいいなと思います。

 私は、お祈りの時間に関して、日本の会社がもう少しフレキシブルになればよいなと思います。日本では季節によってお祈りの時間が変わります。例えば、夏には11時くらいにお祈りの時間があるのですが、その時間に休憩をとることは難しいです。以前働いた工場では、自分の選んだ時間に休憩が取れるので助かりました。もう少しだけ、お祈りの時間への理解が深まってほしいです。

——ハラール商品や食材で、もっと広まってほしいものや、身近に手に入ったらいいと思うものは何ですか?

 日本に来た時からずっと、ハラール食材がコンビニにあったらいいなと思っています。

一同 おおお!

 なぜなら、コンビニはどこにでもありますし、お弁当だけでも、ハラールがあればと願っています。

 私も食品系は身近なスーパーやコンビニにもっと増えたらいいなと思います。主に料理に使うお肉などだけではなくて、コンビニのように手軽に食べられるインスタントラーメンやお弁当などが食べられると助かります。

——コンビニに置いて、ムスリムではない人でも気軽に買ってもらえるようになって広まってほしいですね。

 健康的な食事だから、線引きをせずに、みんなが食べられるもの、として置いてくれればよいですね。そうやって広がっていくのが理想です。

——大熊さん、今日のお話から今後やってみたいことは何でしょう?

 そもそも働き口が探しにくいことの根本的な理由が、ヒジャブをつけているとか、お祈りの時間への理解がないとかであれば、コロナが改善したとしても、ひょっとすると、アルバイトのしやすさ、しにくさというのは変わらないかもしれない。日本企業にとって変わらないといけないところですね。日本の労働人口がどんどん減っているので、海外の方の力にも頼らなければいけません。特に、世界人口の約4分の1を占めるのがムスリムの方々。なので、ムスリムの人たちが観光でたくさん来るようになったときにムスリムを採用したいという企業が増えるかもしれませんが、そういう単純な考え方になってしまう今の状況を改善したいですね。特にアルバイトだからそういうところがなかなか受け入れてもらいにくいというのがあるかもしれないですね。私たちの会社ではマレーシア出身のムスリムの社員が活躍してくれています。同じように、ハラール関係の商品?サービスを扱う企業が、もっと積極的にムスリムの方を採用してくれるようになったら、ムスリムの皆さんに、日本に留学したいって思ってもらえるのかなと思います。

ムスリムフレンドリーな日本に向けて

——最後に、これから日本でやりたいことは何ですか?

 これからもっと日本人にとって、ヒジャブを着けているムスリムもいるんだよということをノーマルにしたいと思っています。結構まだ聞かれるんですよね。私がこれを被っていると、「え、これは何?」みたいな感じで(笑) それは確かに当たり前の反応なんですけど、それと反して、やっぱりまだ知らない人が多いんだなと感じたので、これからもっと馴染みのある雰囲気を増やしていきたいなと思います。

 ファティマさんに同意です。ムスリムがどんな人たちなのかを広めて、どうしてヒジャブを被っているか理解をしてもらえれば、それがノーマルになります。また、Salam Groovy Japanのように日本にムスリムをサポートするコミュニティがあることに驚きました。日本は将来、きっとムスリムフレンドリーになると信じています。

インタビュー後記
パンデミックで浮かび上がった社会のひずみはたくさんありますが、日本でムスリムとして生活することのハードルがより上がってしまったことを突きつけられました。そんな中でも、キアラさん、ファティマさんのエネルギーや大熊さんの活動は、日本をムスリムフレンドリーにする大きな要素だと思える対談でもありました。また、興味本位でインドネシア料理について伺ったのですが、キアラさんの故郷パダンの料理が国内でも人気で辛くて美味しいと聞き、早く食べたくて仕方がないです。
取材担当:大竹くるみ(国際社会学部西アジア北アフリカ地域4年)

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