シリーズ「なぜその言語?~東京外大生に聞いてみた!~」第2回「茨田唯花さん:スペイン語」
外大生インタビュー
前回の「『なぜその言語?』東京外大生に聞いてみた!」では中国語を専攻する海老原大誠さんにインタビューしました。今回は言語文化学部スペイン語4年の茨田唯花(ばらだ?ゆいか)さんにお話を聞いてみました。茨田さんは東京外大への入学を機にスペイン語を学び始め、セビーリャ大学(スペイン)に派遣留学をしていました。スペイン語を学ぼうと思ったきっかけ、そしてスペイン語をどのようにして学んできたのか紐解いていきます。語学学習に悩む方、留学について悩んでいる方、必読です!
インタビュー?取材担当
- 言語文化学部フランス語4年 石山(いしやま)なるみさん
- 言語文化学部フランス語2年 菊谷真理(きくたにまり)さん
(いずれも広報マネジメント?オフィス学生取材班)
スペイン語との出会い
——茨田さんは幼少期にアメリカに住んでいた経験があるとのことですが、英語ではなくスペイン語を専攻しようと思った理由を教えてください。
父の仕事の関係で小学1年生から6年生の間、米国のケンタッキー州とテキサス州に住んでいました。テキサスはメキシコと近い場所なので、移民の方も多かったことから、英語以外で身近な言語はスペイン語でした。小学校では少しですがスペイン語も学んでいましたね。
そもそも大学受験を考え始めた時に、経済とか政治ではなく、アメリカでの経験から文化というものに興味をもっていたので、文化を学べる大学に行きたいという気持ちがありました。それで東京外大に興味を持ち始めて、何語を学ぼうか考えていたのですが、最初はロシア語やドイツ語など、話せたらかっこよさそうな言語がいいなって考えていました(笑)。東京外大に入ったら留学したいとも考えていて、高校の先生と面談をしたとき、「留学するなら、ドイツやロシアは寒そうだし、もう少し温暖なスペインの方が過ごしやすいかもね。」と言われました。私としても陽気で温かい国に留学したいなって思っていたので、先生のその言葉をきっかけにスペイン語に興味を持ち始めました。
あともう一つ、東京外大を知ったきっかけがあります。通っていた高校に当時の東京外大の学長だった立石博高前学長が来てくれたことがあり、1時間の模擬講義に参加しました。立石前学長はスペインの専門家で、東京外大のスペイン語の卒業生だったんです。模擬講義の内容では、スペインの料理文化についてお話しされて、その時におもしろいな、大学ではこういうことを学びたいなと思いました。その時に初めて東京外大を知って目指そうと思いました。
——東京外大に入学して、初心者としてスペイン語を学び、派遣留学に行けるくらいまで語学力を向上させましたよね。東京外大の授業ではどのように学習を進めていましたか?
高校の時から勉強スタイルは変わっていないのですが、自分としては授業メインで勉強して、できるだけ家では勉強したくないっていうのがあるんですね(笑)。大学でも授業重視で、予習?復習はできるだけ大学にいる時間で終わらせていました。とくに1、2年生の時は空きコマが多いと思うのですが、その時間に次の授業の予習、読解の訳や、テキストの演習問題を解くことにより習った文法の復習していました。
家で勉強したくない、家に勉強を持ち帰りたくないというのが一番の大きな理由ですね(笑)。
——予習?復習で意識していたことはありますか?
友達と一緒に空きコマを過ごしていたので、協力し合うことが多かったです。授業中に聞き逃したところや、理解しきれていないところを友達に説明してもらっていました。やはり1人だけではきついところもあって。私の友達は結構真面目な子が多くて、授業中も先生に積極的に質問していたんですね。だから、わかんないところも聞きやすかったですし、周りがすごいから私も頑張ろうと思えました。感化されていましたね(笑)。
テストも普段の勉強で疑問点は解消されているので、範囲の見直しとか読み直しをやるくらいでした。大体1週間くらい前から対策していましたね。
——授業以外に何か自主的に勉強していたことはありますか?
授業以外でいうと、東京外大の多言語ラウンジ*を活用することが多かったです。1、2年生の時に利用していたのですが、スペイン語が母語の留学生とお話しをしたり、わかんない所を教えてくれるところなのですが、友達と一緒に利用していましたね。
*多言語ラウンジ(LINGUA):本学が教育する言語を中心に、多言語の会話が楽しめるスペースとして、「多言語ラウンジ」を開室しています。だれでも気軽に立ち寄り、留学生を交えた多言語の会話を楽しめるスペースとして活用しています。
——茨田さんはチアリーディング部にも所属していましたが、週5回の練習に加え、バイトもしていたとのことですが、勉強との両立は大変だと思います。何か両立させるコツはありますか?
両立できていたかは分かりませんが、先ほどお話したようにどれだけ大学にいる間に勉強できるかだと思います。授業は基本的に休まず、寝ることもなくきちんと聞いていました。そこを頑張ればのちのち大変になることはないですし、空きコマで予習?復習を欠かさずやることが大切だと思います。ほかにも、文法の授業は毎回小テストがあったのですが、通学時間でその勉強をしていました。私は家が大学から遠かったので、長い通学時間を活用することも大切だと思います。
留学
——派遣留学に行く前にやはり会話力を高めたいと思うのですが、会話の練習はどのようにしていましたか?
留学前にやったのは、生活でよく使う単語や身近な表現を覚えることですね。意外と野菜の名前とかって知らないので、単語帳を持ち歩いていました。けれど、やはり会話力に自信がある状態ではありませんでした。なので、派遣留学が始まる前に3週間だけ、自分で申し込んだ語学学校に通っていました。そこでは、現地の人が話すスピードや、スペイン語を実際に使って話すということに慣れることができました。留学先はリゾート地だったので、海辺でスペイン語の本を読んだりもしていました(笑)。
——次は派遣留学についてお聞きしたいのですが、期間としては3年生の8月から次の年の7月までですよね? セビーリャ大学に通っていましたが、セビーリャ大学を選んだ理由を教えてください。
セビーリャ大学の校舎が1番きれいだったんですよね(笑)。結構歴史ある建物で。
あとセビーリャ大学だけ学部単位で募集があって、地理学部の国土管理コースでは2人募集していました。私は休学しての留学などではなく、休学せずに留学できる派遣留学で留学をしたいと思っていました。他の協定校よりも行ける確率の高いセビーリャ大学にしました。
この地理学部は、地理を学ぶというよりは、経済?人口、気候、地形や観光など、地理にまつわるいろいろなことを学べる学部なので、私の興味とも合致していました。
——留学における目標は何でしたか?
DELEスペイン語検定*でB2を取得することでした。そもそも、派遣留学の条件としてB1レベルが必須となっていました。スペイン留学中でも、帰国後でもいいからその試験に合格するのが学力のゴールでした。最終的に日本に帰国した後に受けて、合格することができました。
*DELE:スペイン教育?職業訓練省が発行する日本で唯一の公認資格であるスペイン語の検定試験。ヨーロッパ言語共通参照枠MCER(CEFR)に基づき、A1(入門)、A2(初級)、B1(中級)、B2(中上級)、C1(上級)、C2(最上級)がある。
——留学中の生活についてお聞きしたいのですが、シェアハウスに住んでいたと聞きましたが、どうやってシェアハウスは見つけたのですか?
留学した当初は、2か月くらい先にセビーリャにいたスペイン語専攻の友達の家に住まわせてもらっていました。その間に自分でシェアハウスを探しました。ですが、最初に入ったシェアハウスはあまり納得がいかず、3か月後くらいに新しいシェアハウスを探して、引っ越しました。
——1個目のシェアハウスでは、なにが納得いかなかったのでしょうか?
私を含め4人の住人がいたのですが、それぞれ大学などの友達と過ごすことが多くあまり交流がありませんでした。私もずっと部屋にいるような感じで、あと半年は少しきついなと思いました。せっかく留学しているし、人生で1回しかない貴重な機会だと考え、このままではいけないと思ったんです。だから、シェアハウスを探し直しました。
——2個目のシェアハウスはいかがでしたか?
1つ目のシェアハウスが現地の学生が多かったので、次は私と同じ留学生がいるところにしました。7人くらい留学生がいたのですが、みんな交流しようって感じで、ほんとに引っ越してよかったです。ホームパーティーもよくしましたし、近所のアイスを食べに行ったりとか、日常的に交流があったのでとても楽しかったです。
——次はスペイン留学中の生活についてお聞きします。セビーリャ大学に通って実際に授業を受けるとなると大変なことも多いと思いますが、授業はどのような感じでしたか?
聞くだけの授業が多かったのですが、やはり最初はついて行くのも必死でした。語学学校に行って耳が慣れたといっても、セビーリャは方言もきついので、聞き取りにくかったです。なんとか聞き取れた部分をメモして、配付された資料と照らし合わせて理解していきました。中間と期末にはレポートの提出もあって、もちろんスペイン語で書くので大変でしたね。やはり時間が経つと耳もだいぶ慣れてきて、授業の理解度も上がりました。最初が10段階中3だとすると、最後には7くらいは理解できたと思います。
あとは発表の授業もあって、1グループ4人で発表するんですね。私以外みんな現地の学生だったんですが、留学生の私に優しくしてくれて、資料作りも率先してやってくれたので発表もうまく行きました。
——スペイン留学中で、辛かったことは先ほど聞いた1つ目のシェアハウスの時だと思うのですが、反対に楽しかったことはなんですか?
楽しかったのはいっぱいあります! やっぱり、2つ目のシェアハウスで他の留学生との生活はとても楽しかったですね。みんなで一緒に映画を見たり、パーティーするのが日常でした。いろいろな国の出身者がいたので、それぞれ自分の国の文化について話したりしていました。日本のトイレはとてもきれいなんだよっていう話もしましたね(笑)。
他にも、旅行でたくさんの国に行けたのはとても貴重な経験でした。ポルトガル?イギリス?フランス?オランダ?ルクセンブルク、あとスペイン国内など本当にたくさん旅行しましたね。
スペイン語を褒められた時はとても嬉しかったですね。一番覚えているのが、行きつけのスタバの店員さんに褒めてもらったことですね。大学の近くのスタバで勉強することが多かったのですが、そのスタバの店員さんに「アクセント上手いね」って褒めてもらいました。現地の人に褒められるとやはり自信になりますね。留学に行ったことで私は自信をもつことができたというのが大きくて、スペイン語を褒められたりとか、6枚のレポートをスペイン語できちんと書き上げたとか、そういう小さな積み重ねのおかげで自信をもつことが出来たので、成長できた留学だったと考えています。
——やはりシェアハウスの生活はとても思い出深いものになったんですね。もし後輩が留学先で住む場所に悩んでいたらシェアハウスをオススメしますか?
オススメします。私の友達はホームステイしている子もいましたが、ホームステイだと結構おばあちゃんとかが多くて、そういう人と話せるのはいいけど、その人だけになっちゃうのでやっぱりいろんな人と話せるシェアハウスはオススメです。そもそも私は留学先で一人暮らしは考えていなかったですね。スペインで一人暮らしって結構高いし、助け合いながら生きていきたいなって思っていたので、誰かと住むことが苦にならなくて、会話力を上げたいと考えているなら、シェアハウスはオススメです。
これから
——次はこれからスペイン語をどう活かしていきたいかについてお聞きします。茨田さんは今スペイン文化?文学ゼミに所属されているとのことですが、卒業論文のテーマは何ですか?
卒論のテーマは、1929年にセビーリャで行われた「イベロアメリカ博覧会」という万博みたいなものがスペインの文化にどう影響を与えたかについてです。スペインというと、フラメンコとか闘牛、イスラム系の建築とかをイメージすると思うのですが、それらは実はアンダルシアの文化なんですね。それがスペイン全体のイメージになっているのはどうしてなのか。観光の問題でもあるんだけど、それを卒業論文で書いています。イベロアメリカ博覧会という存在を知ったのは留学の時で、セビーリャにとって変化があった展覧会なんですね。そもそも留学中に卒業論文のテーマを決めようと思っていたので、セビーリャを題材にしたのは留学の時の経験が大きいです。
——次は就活についてですが、スペイン語を使いたいなって思いながら就活はしていましたか?
どちらかというと英語を使いたいなと思っていて、できればスペイン語も、という感じでした。なので、スペイン語は必須条件としては考えていなくて、海外で働くことが必須条件でした。内定先は海外にも積極的に進出しているところでスペイン語ももしかしたら使えるかもしれないです。就活中には大手メーカーや商社を筆頭に色々なところを見ていました。
——これからスペイン語や留学での経験をどう生かしていきたいですか
できれば海外駐在はしたいと思っていまして、そこで語学力や留学経験を活かしたいと思っています。経験でいうと留学で辛かった時でも、改善しようとして自分自身で行動を起こすことが出来たので、そういう経験をバネに頑張りたいと思っています。もともと楽観主義なので、留学でもどうにかなったからどうにかなるだろうっていう精神でいたいなと思います。
——最後にスペイン語を学びたいと思っている受験生や、スペイン語を学んでいる後輩にメッセージがあればお願いします。
スペイン語を学ぶメリットとしては、スペイン以外にも中南米などでも話されていて話者人口が多いことが挙げられます。植民地だったという歴史もありますが、その分、多様な歴史があるので、同じ言語でも文化が違うというのはおもしろみがあります。もしスペイン語を学ぶのなら、スペインと中南米の両方に行ってほしいです。あと、今まで私が持っていたスペインの明るいとか陽気っていうイメージは本当でした。そういうのが好きなら、ぜひ学んでほしいです。私はスペイン語を学べてよかったなって思っています。
——本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
インタビュー後記
2つの異なるシェアハウスを体験した茨田さんのお話を聞き、もし留学中にうまくいかないことがあったとしても、自分で行動を起こすことで状況を変えることもできるのだと学びました。私も留学していた経験がありますが、もう一度留学できるならシェアハウスに住みたいと思いました。
取材担当:石山なるみ(言語文化学部フランス語4年)