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対談:歴史総合×歴史教育

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これまでの日本史と世界史を融合した「歴史総合」が、2022年4月から新たに高等学校の必修科目となりました。そして、本学では2025年度から一般選抜前期日程試験の個別学力検査の試験科目として「歴史総合、世界史探究/日本史探究」を導入します。高校で「歴史総合」が開設される中、大学の歴史教育はどう変わるのでしょうか。篠原?副学長と小野寺拓也准教授が対談しました。

[対談] 高校で「歴史総合」が開設される中、大学の歴史教育はどう変わる?

対談者

篠原 ? 教育担当副学長(以下「篠原」):1989年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。修士(文学)。1993年同博士課程中退。2018年カレル大学プラハ大学院修了。博士(歴史学?チェコ史)。専門はヨーロッパ史、アメリカ史。東京外国語大学外国語学部講師などを経て、同大学院総合国際学研究院教授。

小野寺 拓也 大学院総合国際学研究院准教授(以下「小野寺」):2010年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。昭和女子大学人間文化学部専任講師などを経て、東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。専門はドイツ現代史で、近著に『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? 』(共著/岩波書店)。


篠原副学長

篠原 2022年度から高校の地理?歴史の科目に「歴史総合」が開設されました。本学では、2025年度の大学入学者選抜から、個別学力検査に「歴史総合」を導入します。「日本史」と「世界史」を一つのものとして学ぶことは、大学での歴史教育にも影響を及ぼすかもしれませんが、そもそも大学で歴史を学ぶ意味とはどこにあると思いますか?

小野寺 本学の場合、「地域基礎」という科目があって、各地域の基礎的な歴史を学びます。ただ、学生の多くは歴史を学ぶために入学したわけではなく、どこまで意味を感じているのかわからないと思っていました。そこで、2023年度春学期は、「地域基礎」の「ドイツ近現代史」で、「ドイツ現代史を学ぶことにどんな意味があると思うか」という課題に取り組んでもらいました。

篠原 課題を通して、学生の歴史観で見えてきたことはありますか?

小野寺准教授

小野寺 一言で言うと、歴史の結果に関心を持つ人と、プロセスに関心を持つ人に分かれることがよくわかりました。たとえば、「移民?難民」というテーマを選んだ人たちでは、ドイツの難民受け入れ制度に比べて日本の制度は不十分、といった議論が非常に多かったのが印象的でした。ドイツも昔は難民の受け入れが不十分で、ある時点から変わったので、そこを学ぶのが歴史を学ぶことだと思いますが、結果だけを見てしまいがちのようです。

篠原 過去があって今があるわけですが、そこがあまり見えていないのかもしれないですね。あるいは、過去の歴史を引用することに慣れていないとも言えるかもしれません。

小野寺 ドイツに限らず外国の歴史は、日本にいるとリアリティをもって感じるのが難しいですが、それを補足できるのが留学経験です。その意味では、本学の学生は歴史を学ぶにはよい環境にあると言えますね。

篠原 私は、東ヨーロッパが専門ですが、日本では民族の対立ばかりが強調されたり、エキゾチックに見られたりすることが多い地域です。しかし、東ヨーロッパの歴史を学ぶことは、決して「珍しい他者」を知ることではありません。実は、自分たち(日本)の足元にあって見えにくいものを認識する力を鍛えるのだと考えています。

小野寺 同感です。外国史は「鏡」、それも少し歪みのある鏡だと思います。他国の歴史と自分たちの社会とを見比べて初めて、自分を映すことができます。ただ、鏡がなければ絶対に自分を見ることはできません。そう考えると、歴史を学ぶことには重要な意味があると言えますね。

篠原 大学での歴史学習に必要なスキルというのはあると思いますか?

小野寺 本学の話になりますが、外国語を徹底的に学ぶので、外国語の資料にあたれるのは強みだと思います。日本語のフィルターを通すと、ときにはステレオタイプな情報しか得られないこともありますから。

篠原 翻訳の過程で、言葉の意味が変わることもありますね。また、ある言葉がいつの間にか使われなくなったり、歴史の表舞台に突然現れたり、言葉一つにも歴史的なものがたくさん埋まっている。そういう理解も、歴史の学びには必要ですね。

小野寺 歴史に倫理性や感情を持ち込むことに関しては、研究者の中でも議論がありますが、たとえば根本に「ナチスはひどいことをした」という気持ちがない人がナチズム研究をするのは怖いと、私は考えます。また、「当時の価値観だから」という人もいますが、そこで議論を断ち切らないことに、歴史という学問の大切な部分があるはずです。

篠原 そうですね。「歴史総合」は、これまでの暗記重視の内容ではなく、話し合い、考えることに重点を置いています。その中で、歴史を学ぶことの根本から考えてもらいたいと思います。

(『東京外国語大学統合レポート2023』より)

受験生の皆さまへ

2022年4月から新たに「歴史総合」が高等学校の必履修科目となりました。

「歴史総合」は、高校で学ぶ従来の「世界史」「日本史」とは二つの点で大きく異なっています。一つは日本史と外国史の区別をなくしたことで、明治に近代的な教育制度がはじまって以来、中等教育(中学?高校)以上ではじめての試みです。ちなみに大学の史学科ではいまだにほとんどのところで「日本史」「西洋史」「東洋史」という区分で研究?教育が行われています。「歴史総合」ではテーマにしたがって世界の歴史的課題を同時代的に考察しますが、これは私たちが暮らし、学ぶ日本と世界とのつながりを考えるうえで非常に重要なことです。

もう一つは、過去に起こったできごとをただ覚えるのではなく(多くの人は歴史を「暗記科目」だと誤解しています)、いくつかの歴史的なテーマをもとに、自分自身と歴史との関係、現代社会と歴史との関係を考える、あるいは、歴史の中に自身が持っている問題の源を考える、といったことに力点が置かれていることです。教室での学びを通して「自分で歴史の意味を考える」、そして「自身と歴史との関係について表現する」といったことを実践するような科目に生まれ変わりました。

本学では、歴史学のみならず、地域研究や世界の言語?文化など、人文社会科学の幅広い分野を専攻することができますが、いずれの分野を学ぶにあたっても、「歴史総合」が試みる歴史へのアプローチはとても重要であると考えています。

このような想いから、本学では中国体彩网手机版7年度(2025年度)一般選抜前期日程試験から個別学力検査の試験科目として『歴史総合、世界史探究/日本史探究』を課すことにしています。

そして今回、この新たな試験科目のイメージを受験生の皆さんと共有するため、サンプル問題を作成しました。受験対策としてはもちろんのこと、このサンプル問題を通じて本学の教育理念への理解を一層深めていただけると嬉しく思います。

サンプル問題

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