たふえねが施設企画課に聞いてみた!~東京外大が環境問題にできること~
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近年、地球温暖化や気候変動の問題から、温室効果ガスを排出せずに電力を生産することができる太陽光や風力を使用し自然エネルギー(再生可能エネルギー)を用いた発電が注目を集めています。
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」すなわちSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)には、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標13「気候変動に具体的な対策を」という自然エネルギーや気候変動に焦点を当てた目標があります。
東京外国語大学では、「教職員?学生と協働で地球温暖化対策を推進し、大学が使うすべての電力を2030年度までに自然エネルギー電力へ転換(生産または調達)することを目指す」という目標を掲げています。この目標を達成するため、大学はどのような取り組みをしているのか、東京外大初の環境系サークル「たふえね」がインタビューしました。
座談会参加者
- [たふえね] 高橋明花(たかはしはるか)さん 国際日本学部3年
- [たふえね] 安川莉菜(やすかわりな)さん 国際社会学部2年
- [たふえね] 渋谷(しぶや)さん 国際社会学部2年
- [施設企画課] 七部俊夫(たなべとしお)課長
取材担当
- 国際社会学部西南ヨーロッパ地域/イタリア語3年 牟田園小桃(むたぞのこもも)さん
東京外国語大学ホームページ「環境?エネルギーへの取組」「環境報告書」
開放的で緑ゆたかなキャンパス
渋谷 まず、キャンパスを取り巻く東京外大の環境について質問いたします。東京外大のキャンパスはドラマやCMなどのロケ地としてよく使用されています。特徴的な中央広場の円形回廊や堀や門が無いオープンなキャンパスはどのようなコンセプトで設計されたのでしょうか。
七部 本学は、今から22年前の2000年に北区西ヶ原からここ府中へキャンパスを移転しました。当時から東京外大では世界の言語と文化、社会、国際関係などを対象として教育研究が行なわれていましたので、留学生や外国人教員を交えた異文化をめぐる対話や世界言語文化に関する対話を重要視していたようです。キャンパス計画の基本理念として「対話と交流をベースに、世界に開かれたキャンパスをつくる」という目標が掲げられていて、学内外の幅広い対話と交流を可能とするようなオープンなキャンパスを目指していました。そのため塀や柵のような外部と遮断するものを設置せず、外部とつながりを持てるキャンパスになっています。中央広場は大学全体の交流と対話の核となる広場として位置づけられていて、将来にわたって建物による日影や圧迫感が無く、開放的で明るい環境を有する空間として計画されています。その中央広場にある円形回廊は各建物を有機的に結びつけることで、空間と様々な活動に多様性を与えて、大学に一体感をもたせることや、大学と地域の接点となるアライバルコート(TUFSモニュメント周りの広場)と中央広場の間を回廊で視覚的に分けて、それぞれ性格が異なる空間となるように計画されています。
渋谷 環境という観点からキャンパスを見たときに、優れている点や反対に少し困っている点、大変な点などはありますか。
七部 この大学のキャンパスは移転当時から緑が多く、樹木の本数は900本ほどにのぼり、キャンパスの外周や回廊内の中央広場には草地も広くあります。環境という観点から見ると、この緑豊かなキャンパスは都市部で気温が上昇するヒートアイランド現象の抑制や空気の浄化など環境負荷低減に寄与していると思います。ただその一方で、定期的な維持管理は大変ですね。樹木は大きくなったら切らなければならないし、雑草が生えたら草刈をする必要があります。維持管理のための人件費などのコスト面、さらに事故がおきないように安全面にも気を遣う必要がある点など、難しいところです。
電力の「生産と調達」
安川 つづいて、目標についてお伺いしたいと思います。大学ホームページの「環境?エネルギーへの取組」を見たところ、「エネルギーの生産または調達」という文言があったのですが、これはどういった意味でしょうか。
七部 「生産」というのは、例えるならば太陽光で電力を生産するということです。エネルギーを自ら作り出すことを「創エネ」と言いますが、太陽光などを使って自ら電力を作り出し、「創エネ」することを「生産」と捉えています。現在キャンパス内の建物に順次太陽光パネルを設置していまして、2009年度には留学生日本語教育センターの屋上に30kWの太陽光パネルが設置されました。昨年2021年度は、附属図書館の屋上に30kWの太陽光パネルを設置しました。今年度も新しくアゴラ?グローバルの屋上に太陽光パネルを付ける予定です。一方で、「調達」というのは、電気を電力会社から買ってくることと捉えています。現在は火力発電による電気でキャンパスの電力を賄っている状況です。しかし、自然エネルギー化に向けて、太陽光発電や地熱発電、風力発電などの自然エネルギーによって生産されたグリーン電力を供給している会社から「調達」することを検討しています。
環境にやさしい機器の購入?使用
渋谷 機器の購入?使用にあたっての取り組みについてお伺いしたいと思います。大学ホームページの「環境?エネルギーへの取組」のページでは、「キャンパス内の主要な施設のLED照明導入割合を100%に推進します」と記載されていますが、現在の割合はどのくらいですか。
七部 現在附属図書館や本部管理棟、研究講義棟の講義室や廊下はLED化が済んでいます。今年度は研究講義棟の事務室や演習室、トイレなどのLED化を予定しています。昨年度完了した分で整備率は67%になります。ほぼ7割は終わっていますね。今後も整備を続けていく予定です。
渋谷 「環境報告書 2021」からはグリーン購入を行っていることも書かれています。ほとんどの品目で目標値を100%達成していますが、具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
七部 グリーン購入というのは、2000年に制定された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」いわゆるグリーン購入法という法律に基づいて行っています。グリーン購入法とは、国の機関などが環境負荷低減に関する製品の調達を推進することで、循環型社会の形成や持続的発展が可能な社会の構築を目指すという法律です。物品でしたらグリーン購入法で認定された製品があるので、そのようなグリーン購入法適合製品のコピー用紙や文具類、オフィス家具などを積極的に購入する取組みが行なわれています。
渋谷 2020年の中国体彩网手机版感染症の世界的流行により、省エネルギー型機器の導入が進んだ点がありますか。
七部 コロナ禍への対応で換気設備を改修した施設があります。昔より効率の良い換気設備になっているので、省エネ化が図れていると思います。
「もったいない」を減らす試み
安川 建築物の管理などに当たった取り決めについて質問いたします。これからますます暑くなっていく中で、冷房の使用が増えると思います。現在は研究講義棟などの教室の冷暖房は中央管理になっていて、個別の教室でつけたり消したりということができないような設定になっているかと思うのですが、そういった教室ごとの使用状況の把握というのはどのように行っているのか教えていただきたいです。
七部 毎期の授業開始の時期に教務課から授業日程をもらい、それをもとに空調機のスケジュール設定をしています。自動的にシステムが作動するようになっているんです。基本的に時間割上で使用されている教室はその時間帯に空調機が作動するようになって、授業が終わるとまた消えるという仕組みです。
安川 そのような仕組みになっていたのですね。続いて教えていただきたいのですが、現在東京外大では発電時に発生する排熱を空調設備に利用して省エネを実現する「コ?ジェネレーション」という技術を導入していると聞きました。今後CO2削減のために新たに新しい技術を導入する予定はありますか。
七部 具体的な計画はまだありませんが、昨年度、非常勤講師の浜島直子先生経由で、たふえねの学生の石川柚葉さん(国際社会学部)から、東京外大へ太陽光発電を導入するための方策を提案したいというお話がありました。その際、東京工業大学の大学院生の方を石川さんからご紹介を受けて、いろいろと検討していただいたり、何度かお話をさせてもらいました。その時に薄膜型太陽光パネルをご紹介していただきまして、これは従来の太陽光パネルよりも薄く、軽量で、曲げることもできるというものです。私の方も薄膜型太陽光パネルについて、この時初めて知りましたが、このようなパネルがあるのだと驚きました。それと、ある大学では太陽光パネルの開発が進んでいるようで、従来の平面型太陽電池よりも発電効率が良く、なおかつ軽量な円筒型太陽電池の研究が行われているようです。円筒状の蛍光管のような細い管がたくさん並べられた太陽光発電の装置になります。実用化まではまだ至っていないのですが、実用化に向け研究開発が進んでいるようです。最初に話をした薄膜型太陽光パネルもそうですが、軽いため、建物の上などで重いものを載せられないところにも太陽光パネルを設置することができたり、もしくは壁などにつけたりすることも可能になるので、設置できる場所を増やすことができると思います。今後、可能であればこのような新しい太陽光パネルや発電装置を導入することも考えています。
できることをやろう
高橋 大学と施設企画課さんが「2030年度までに自然エネルギーへ転換する」という目標に向かって、技術的?設備的に様々な取り組みをされているということがわかりました。こちらの目標は「教職員?学生と協働で」目指すというふうに書かれていたのですが、わたしたち学生はどのように大学のカーボンニュートラルに貢献できると思いますか。
七部 学生の方に限らず、われわれ職員も同じと思いますが、できるところから少しずつやっていくしかないのかなと考えています。特に学生の中には、今すでにたふえねさんが立ち上がっていますよね。そういった動き自体が大学への貢献になっていると思います。われわれ施設企画課の立場からは、太陽光パネルをつけたり、LED照明をつけたり、施設や設備などのハード面からこの目標にアプローチしています。私から言うのもなんですが、皆さんには省エネや節電など身近なところからやっていってもらうのがよいのではないかと思います。
高橋 カーボンニュートラルは省エネや節電だけで達成できる目標ではないとは思いますが、一方でハード面だけで達成できる目標でもないと思っています。私たちたふえねは、環境への気持ちや考え方などハート面からカーボンニュートラルに貢献していけるような団体を目指して活動していこうと思います。
七部 たふえねさんから学生の皆さんに活動の輪が広がっていくのですね。
「#TUFS水打ち隊」
2022年7月11日に昼休みにたふえねが主催する水打ちイベント「TUFS水打ち隊」がおこなわれました。円形広場の噴水を利用してキャンパスを涼しくする取り組みです。たふえねのみなさんによる水打ちもおこなわれました。「暑いキャンパスを涼しくするだけでなく、このイベントを通して地球温暖化や気候変動の問題について考えてもらい、学生から変わっていこう!」という思いから始まったイベントです。実際に、多くの学生が噴水の水で遊んで涼しさを感じたり、温度計を使って水打ちの効果を調べたりしました。
編集後記
今回はたふえねさんと施設企画課の方のインタビューを記事にさせていただきました。たふえねさんとは以前「SDGsクロストーク」サークル設立の経緯などを聞かせていただきました。またそれだけではなく、教室にシールを貼って節電を呼びかける活動に参加させていただいたこともあります。これからもたふえねさんの活動も楽しみにしています。また、実際に大学や職員の方の取り組みをお聞きすることができ、大学全体で環境問題の改善に貢献していくという目標に実感がわきました。実際の生活面では、使用するプラスチックを減らすため、飲み物のペットボトルを水筒に変えました。小さなことですが、インタビューにもあったとおり、できることをできる範囲でやっていきたいと思っています。
取材担当:牟田園 小桃(国際社会学部西南ヨーロッパ地域/イタリア語3年)