「モンゴル民族教育における教科書編纂の実態」 スチンゴワ
研 究
本調査研究は、中国におけるモンゴル民族の教育?日常生活?アイデンティティ形成に関する博士論文のための研究の一環となるものである。
中国は漢民族を中心とする統一された多民族国家であり、漢民族以外の民族を少数民族と称する。これまで公認された少数民族は55を数え、その総人口は1億であり、全国人口の8.4%を占めている。全人口に占める比率で見れば「少数」ではあるが、量的に見れば決して「少数」ではない。
中国の憲法は「序言」のなかで、中国は漢族と五十五の少数民族から構成された「統一された多民族国家」であると定めており、さらに第四条では各民族の一律平等、民族区域自治の実行や各民族言語や文字の使用と発展の自由などを定めている。
中国における少数民族の中には、約600万人のモンゴル人も含まれており、モンゴル民族の教育は中国少数民族教育の代表的な価値を有するといわれている。その最も重要な要因として、モンゴル民族がかつて広大な土地を支配した歴史的な経緯から、現在も十以上の自治区、省に渡り幅広く居住していることや、二言語教育の歴史が長く、中国民族教育の雛型を形成したこと、及び最も早く成立した自治区であること(1947年5月1日に内モンゴル自治政府として成立し、その後1949年に内モンゴル自治区と改称)が挙げられる。
中国におけるモンゴル民族教育に関する研究は近年増えつつある。しかし、その多くは「理論的」、「理念的」な言説で、実際に民族学校の現状やその民族学校のカリキュラム?教育内容に関する実証的研究はほとんど見当たらないのが現実である。
詳しくは学術調査報告書(PDF)をご覧ください。
報告者
- 名前: スチンゴワ
- 研究テーマ: モンゴル民族教育における教科書編纂の実態
- 渡航先: 内モンゴル
- 旅行期間: 平成19年12月18日~平成20年1月2日(16日間)
- 調査旅行の概要: 内モンゴル教育出版社モンゴル語教材編纂組メンバーのうち3人に、教材編纂にあたり、どのような思惑を持って教材内容を選択しているのか、その決定にあたり、どのような考え方を優先しているか、その根拠は何か、等についてインタビュー調査を実施した。また、教材審査に携わる方2人に、教育出版社で編纂された教科書がどのような基準で審査を経て採択されているかについて、インタビュー調査を行った。今回の調査結果は、モンゴル民族教育における教育内容はいかなるプロセスを踏まえて選定されているのか、そして、その内容はどのような人間形成に寄与しうるのかについて分析し、考察を行うための一次資料となる
- 学術調査報告書(PDF)