「繁茂する革命―20-30年代プラトーノフ作品における、自然と人間」 古川哲
研 究
ロシア革命の時期に作家として出発し、ソ連が国家として確立していく時代に主要な作品を遺したアンドレイ?プラトーノフ(1899-1951)に関する博士論文執筆のための資料収集が今回の調査の目的である。博士論文では、修士論文(「アンドレイ?プラトーノフの『土台穴』における受動性と受難をめぐって」、修士(学術)、2004年3月、東京外国語大学)で十分に明確に論じることができなかった「受動性」の問題を、問題設定を変えつつより深く追究してみたいと考えている。対象と媒介なしで接してみたいという直接性への希求、またそれゆえの〈恐怖〉という感情を強くテクストに定着させたという点でプラトーノフは際立っている。そのような対象への直接性への希求がプラトーノフにおける受動性を生んでいる、という作業仮説を現在の筆者は立てている。
そのような受動性が現われる一つの局面として、登場人物が自然との関係においてとる態度がある。「繁茂する革命」という研究題目は、筆者の、作品に現れる自然と人間の関係を重視しつつ革命の問題を扱いたいという意図からきている。アンドレイ?プラトーノフがソビエト作家同盟の委嘱により1935年に著した中編『ジャン』は、とりわけ第三章の冒頭において、自然描写と登場人物の行動に緊密な関連がみられる。言い換えれば自然描写がプロットとの関係において必然性をもって配置されている。
それゆえに自然と人間の関係を論じるには適切な箇所だと考えられる。すでに、筆者はこの箇所について考察し発表したことがある(「アンドレイ?プラトーノフ『ジャン』におけるオリエンタリズムについて:問題提起」、「現代文芸研究のフロンティア 7(21世紀COEプログラム「スラブ?ユーラシア学の構築」研究報告集)、北海道大学スラブ研究センター、2005年、pp.149-153.)が、今回の調査はこのとき行った作業の継続でもある。
詳しくは学術調査報告書(PDF)をご覧ください。
報告者
- 名前: 古川哲
- 研究テーマ: 繁茂する革命―20-30年代プラトーノフ作品における、自然と人間
- 渡航先: モスクワ
- 旅行期間: 平成20年2月25日~3月11日(16日間)
- 調査旅行の概要: ロシア国立文学芸術アルヒーフにおいて作家アンドレイ?プラトーノフの小説『ジャン』(1935年)のタイプ原稿を閲覧、筆写した。ロシア国立図書館において、プラトーノフについての2006年以降の文献を調べ、重要と思われたものは複写した。
- 学術調査報告書(PDF)