教育アプローチの具体的内容と、今後の展開について説明します。
教育の根幹となるのが、三時間連続授業を基本とする必修科目である「PCS演習I~IV」である。一年目に履修する演習Ⅰでは平和構築、紛争予防の基礎、紛争原因の分析方法、およびナショナリズム論や民主化論などの社会科学の基礎理論を講義する。演習Ⅱでは、紛争実態分析のための論理的、総合的思考育成に力点を置き、実際のケースを取り上げて平和構築のシミュレーションを行ないつつ、討論、フレゼンテーション能力の向上を図る。二年目は、演習Ⅲにてそれぞれの学生の研究テーマに即したフィールド調査の指導を行ないつつ、研究対象地域?テーマでのインターンシップを促す。演習Ⅳでは、学生がインターンおよびフィールド調査で得た調査結果をもとに論文執筆できるよう、集団で論文指導を行なう。
必修科目の他、紛争研究の基礎理論を学ぶ選択科目として、PCS研究方法論、平和研究、国際関係論、国際法?国際協力などを開講し、社会科学の基礎理論を学習させる。学生は世界各国から本プログラムに加わるため、入学までに学生が学んできた学問分野は多岐にわたり、また履修内容もまちまちであるため、これらの理論研究の講座を通じて、学生個々の知識を相対化しつつ専門性を深めることに力点を置く。また東アジア、中東、アフリカ、欧州など地域別の紛争事例を取り上げる科目を開講し、出身国の紛争実態を他地域の事例と比較対照することで、比較研究の視角を学習させる。これらの科目では、アジア経済研究所など日本屈指の途上国研究機関から客員教員を迎え、専門性の高い講義を学生に提供している。さらに国連大学、国際基督教大学(ICU)との単位互換協定を結び、受講可能な科目に多様性を持たせている。また恒常的に開講する授業以外に、内外の研究?援助機関やジャーナリスト、国際機関などから講師を招き、紛争実態の現状報告を受ける機会を頻繁に設けて、学生の紛争理解の幅を広げる体制を取っている。
紛争研究は学問体系としては新しい学問であることから、社会科学(政治学、国際関係論、社会学など)、人文科学(歴史学、文学、心理学など)など各分野を融合的かつ統合的に学生が学ぶことが出来るよう、開講講座のバランスに工夫を施している。また紛争研究は最新の現状分析が必要な講座であることから、毎年出来る限り最新の資料をそろえて学生の関心に応える他、オーディオ資料を多用してより具体的な実態把握を促進している。さらに国際的ネットワークでの学生募集?指導を行なっているため、遠隔指導が可能なようにウェブカメラを通じた教育を取り入れている。
今後、さらに予防開発や平和構築行動などの方面で授業内容の充実をはかり、カリキュラム開発を進めて、教育メソッドを開発する。また、学生の教育課程において、現地でのフィールド調査やインターンシップは極めて重要であることから、現地調査方法の指導のために教員が国内外の紛争解決?平和構築の現場に学生を引率し、直接平和構築の現状に触れる機会を拡大?発展させる予定である。