当プログラムの概要について説明いたします。
東京外国語大学「平和構築?紛争予防」修士英語プログラム(Master's Program for Peace and Conflict Studies 略称:PCS)は、平成16年4月、外国人留学生を対象に、平和構築?紛争予防に携わる専門家の養成?再教育を目的として開設され、18年度より国際協力専攻平和構築?紛争予防専修コースに改組された。そのプログラムは(1)世界各地の地域紛争の個別分析、紛争予防、平和構築に関する理論的研究と、(2)危機管理、国際機関マネジメントなど実務能力育成を二つの柱として位置づけている。すべての講義を英語で行なうことで、世界中の学生に対して広く教育機会を提供する本プログラムは、日本国内の大学のなかでもユニークな存在であり、開設以来現在まで、世界30カ国からの留学生が本プログラムを受講している。とりわけ、アジア、アフリカなどの紛争当事国からの留学生ないし研修生を積極的に受け入れ、これら学生が課程修了後直接出身国ないし地域の平和構築に貢献するべく、総合的教育プログラムを導入している。また非紛争地域出身の学生が、紛争地域出身の学生と同じ場で学ぶことによって、紛争実態の現実に対する共通認識、相互理解をより深めることを推進している。具体的には、これまで本プログラムを受講した学生の出身国として、紛争当事国としてはアフガニスタン、イラク、東ティモール、カンボジア、レバノン、ナイジェリア、ネパール、コロンビアなどが、また先進国からは日本、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどが挙げられる。
なかでも国際協力機構(JICA)の長期研修生を、主として紛争経験地域から数名受け入れているが、彼らはすでに出身国で政府機関など紛争解決?開発の実践的役割を担うポジションにあり、それらの国々の若手実務家に対してわが国の持つ紛争解決?開発のノウハウを直接的に伝える人材育成の重要な機会となっている。更なるプログラム詳細はこちら(スライド/PDF)。
大学院GPのプロジェクトでは、理論面、実践面のPCS講座の強化を図ります。理論面では、学生の研究力拡充を目指し、他大学や、研究機関から平和構築分野の専門家を招き、包括的なカリキュラム構築に取り組んでおります。また、平和構築におけるメディアの重要性に注目し、著名な雑誌編集長や、CMデザイナーを招き、講義を行ないます。その理論形成を拡充する手段として、実践力の養成があげられます。学生はスタディーツアーとして、沖縄、韓国(19年度)に赴き、平和?紛争の現場から、平和構築に必要な経験を培っていきます。また、修士論文に必要な調査として、海外でのインターンシップやフィールドワークを積極的に支援し、より質の高い研究成果を目指しております。
また、社会に開かれた平和構築を目指して、19年度には、本講座の主催で国際シンポジウムを開催いたしました。9カ国から19名の専門家を招き、300名の参加者と共に、理論?実践の両アプローチから総合的に議論を行いました。さらに、PCS講座の発展を目指し、ネットワークの拡大にも取り組んでおります。これは平和学のプログラムを持つ、他の大学の教員や学生との交流の機会を提供し、相互が様々な視点や考えを共用していく中で、より多様な可能性を引き出す、平和構築の人材育成を目指すものです。
以上、PCSは研究力、実践力の相互育成を目指し、大学院GPの支援を平和構築へ向けて、最大限に有効活用していく次第です。
平成18年度に文部科学省、「大学教育の国際化推進プログラム」により採択を受けた、PCSにおけるもう一つの事業です。PCSのユニークな授業として、他国の大学とのオンライン授業を展開しています。参加校はインドネシアのガジャマダ大学、カンボジアのパニャサストラ大学、スリランカのペラデニア大学の3校。リアルタイムでの、各国教授によるレクチャー、多国間での教員、学生同士の活発な意見交換が行われます。各大学の学生が自分の大学にいながらにしての国際的なクラス参加で刺激を与え合い、平和構築という課題に対しての新たなネットワーク作りの発展に結びついています。また、こちらの事業では海外?国内大学のPCS関連プログラムとの学術コンソーシアムにも力を入れており、PCS分野での更なる協定や共同事業が見込まれています。グローバルキャンパスプログラムのHP(英語)はこちら。