学長あいさつ

東京外国語大学長
春名 展生
人を育て、未来をつむぐ東京外国語大学
――自由で寛容な学びの場から誰も置き去りにしない未来へ――
私たちは今、転換期にいます。国際情勢が一時的に動揺しているという意味ではありません。人口、食料、資源、エネルギー、気候、等々。地球社会の持続可能性が失われる兆候が見受けられます。持続可能性を備えた未来社会を創造するだけでなく、それを誰も置き去りにしないかたちで構築するうえで、世界の多様性を存立の基盤とする東京外国語大学であるからこそ果たしうる役割があると私は考えています。
これまでも東京外国語大学は「多様性を力に変えていく」という使命の下、具体的には多文化共生に寄与する教育?研究?社会貢献の推進に努めてきました。今後は、この任務を一段階引き上げ、未来をつむぐ過程に多様な発想と価値観を織り込む存在として、これまで以上に大学間共同研究や産学連携に取り組む機会を探し求め、研究および社会貢献の幅と深度を拡張していきます。
東京外国語大学は、先行きの見通しが立たない時代に卒業生?修了生を送り出す高等教育機関でもあります。変化しゆく社会に適応するには、柔軟な思考力と果敢な行動力、そして自律的な判断力が求められるでしょう。これらの力を養成するため、東京外国語大学は、多様な価値観にふれ、多様な人々と交わる「越境」の機会を国内外に用意しています。
今後は、越境の経験で培われる多面的な力を総合的に活用する実践の場として、創造的な共同研究や産学連携に学生が参画する仕組みを整えていきます。また、多元的な経験の教育的な効果を最大限に引き出すには、十分な準備を含めて相応の時間を要するため、今後の東京外国語大学は、修士課程までの進学を標準とするような新たな教育体制の開発を進めていきます。
未来をつむぐ学生と研究者の新たな挑戦や試行錯誤を促すには、制度的な支援にくわえ、自由な発想を育む環境が欠かせません。私自身、学生と教職員をはじめ、さまざまな方々と対話を重ね、開放的で寛容な風土の保全と強化に努めます。