本学大学院生が学際言語学会で特別賞受賞
2024.12.17
博士後期課程3年の吉武大輝さん(ベルギーに休学留学中)が、2024年11月14日(木)~15日(金)にカナダのモントリオール大学で開催された学際言語学会 VocUMで発表を行い、特別賞を受賞しました。
発表題目は「Comprendre, c’est pouvoir prendre par l’intelligence : L’implicite intentionnel par l’usage métaphorique et la manipulation du sens」(日 :「Comprendre, c'est pouvoir prendre par l’intelligence ―― メタファーの使用による意図的な暗示と意味操作について」)です。
吉武さんの受賞コメント
修士課程在籍時にモントリオール大学に派遣留学していましたが、その時にこのモントリオール大学主催の学際言語学会 VocUMに聴衆として参加したことがありました。この学会ではテーマが毎年決められており、今年のテーマは Langage et (dés)information(「言語と(偽)情報」)でした。「偽情報」は社会的概念に特徴づけられますが、私の研究では「言語レベルの偽情報」として「語彙の比喩的使用による意図的な暗示と意味操作」という題目で発表をしました。
語彙というものは常に意味変化の潜在性を有しますが、規範的な多義性が存在しなかった古代語においては新しい使用法は斬新なものとみなされます。この点において、語彙の比喩的使用には意味論的曖昧性(話者の暗黙性)というある種の偽情報性がはらむことになりますが、話者の真意が対話者に伝わらなければコミュニケーションは成立しません。そこで新用法に対するメタファー的推論やメトニミー的推論といった認知バイアスを介して、類似した意味をもつ語ないしは意味的に隣接した関係にある語が共起させられ、語義が一意に定まるように仕向けられます。今回はフランス語の動詞 comprendre の意味変化を例に挙げてこの現象を実証しました。
学会では招待講演を含めて計19名が発表を行い、様々な側面の「偽情報」を勉強することができました。派遣留学中に「自分もいつかここで発表してみたい」と思っていましたが、今回ここで発表できたと同時に受賞できたことをありがたく思います。今後も博士論文執筆へ向けて研究を進めていく予定です。