大学院日英通訳?翻訳実践プログラムでオンラインにて同時通訳実習を実施
2021.07.30
2021年度春学期に、大学院総合国際学研究科の日英通訳?翻訳実践プログラムの「通訳翻訳実践研究1」科目において、学部生向けの「通訳基礎II」科目(逐次通訳演習クラス)とのオンラインでのコラボレーション授業の形式で同時通訳実習が2回実施されました。Zoomの言語通訳機能を活用して1回目は学部生の英語でのプレゼンテーションを日本語に、2回目は日本語でのプレゼンテーションを英語に大学院生が同時通訳を行いました。実習で同時通訳を行った大学院生の中から2名(佐々木勇介さん、大川奈央未さん)のレポートを、発表者?オーディエンスとして参加した学部生2名(小渕茉莉奈さん、小幡彩友美さん)の感想と併せて紹介します。
① 英日同時通訳の実習をおこなった学生の感想
-
佐々木勇介さん(大学院博士前期課程 日英通訳?翻訳実践プログラム 2年)
5月31日1限の時間に今年度1回目の通訳実習をオンラインで行いました。学部生が経済に関するテーマのプレゼンテーションを英語で行い、大学院生4名が日本語に同時通訳をしました。
実習の1週間前に担当する学生と打ち合わせをする時間があり、お互いの自己紹介と話す内容などについて確認をしました。資料や原稿の共有は、Zoomのチャット機能や授業後のメールで行いました。事前準備では、いただいた資料や原稿を元に単語帳の作成や内容に関連した情報をインターネットで検索して、背景知識の習得を心がけました。特に固有名詞等、日本語での定訳の有無に関わらず発表者に確認が必要な単語や表現は一覧にしてまとめるなど工夫をしました。実習当日は、冒頭の数分間で各発表者との最終打ち合わせを行い、そこで単語や表現を確認しました。打ち合わせ後に学部生によるプレゼンテーションが行われましたが、発表者の学部生も同時通訳をする大学院生も頑張っていました。
個人的には、日本語と英語における文構造の違いから英語の述語(動詞)を日本語に訳す際に、主語と述語に余計な間ができるという課題を実習で認識することができました。実習終了後、学部生と先生から大学院生の同時通訳に対するフィードバックの時間があり、今後の通訳の向上に役立つアドバイスを沢山いただきました。普段はなかなか自分の通訳を客観的に分析できないため、このような実習でフィードバックをいただけることは大変ありがたかったです。今回、中国体彩网手机版の感染拡大が続く中、このような実習の機会を設けてくださった先生、協力してくださった学部生の皆様に改めて感謝いたします。 -
小渕茉莉奈さん(言語文化学部ドイツ語3年)
英日?日英どちらの言語方向も逐次通訳をやってみる、というのは授業内の課題で自分も体験し逐次通訳をするには事前に入念な準備が必要だと感じたのですが、同時通訳はさらに準備が必要で、また逐次通訳とは異なる難しさがあると今回の大学院生とのコラボレーション授業を通じて実感しました。逐次通訳ではある程度話したところでスピーカーが止まってくれますが、同時通訳では止まってくれません。訳している間にどんどん話が先に進んでしまう中、大学院生の皆さんは落ち着きを保っていたのが印象的でした。内容をすべて訳すというより、話の要点を拾って訳しスピーカーに遅れないように切り替えているようでした。事前に単語リストを作って専門用語?固有名詞も正確に把握する、発表の内容に関する情報をなるべく多く集めておく、といった入念な準備が、焦らずスムーズに訳すことにつながっていたのだと思います。逐次通訳においても単語リストを作りますが、同時通訳では単語一つ一つを確認している暇が全くないので、そうした単語をすべてインプットされてから本番に臨んだのだろうと感じられました。ただ、細かい例の列挙や数字を訳出するのには皆さん苦戦されていて、難しそうでした。
同時通訳中は原稿を見て訳出をしていますか?という学部生の質問に対して、全員一致で原稿は見ないと答えたのは驚きでした。「細かく内容を取りすぎてしまうと、原稿から少しでも逸れたときに焦ってしまう」とのことで、基本的にはリスニングを重視していることがわかりました。よく聞いて、素早く訳す。シンプルなようで実際には非常に複雑で、頭をフル回転させなければならない行為だなと改めて思いました。
② 日英同時通訳の実習をおこなった学生の感想
-
大川奈央未さん(大学院博士前期課程 日英通訳?翻訳実践プログラム2年)
今年度2回目となる今回の実習(7月5日に実施)では1回目とは逆の言語方向で日本語から英語への同時通訳を行いました。今回も学部生の方達に協力していただき、皆さんのプレゼンテーションを同時通訳するという実習でした。前回のテーマは経済でしたが、今回は発表する方達の趣味や故郷の話などより個人的なものとなり、一人一人の「伝えたい」という思いが強く感じられる発表内容でした。私はそのような皆さんの思いに応えられるように「頑張ろう」という気持ちで事前準備に取り掛かりました。頂いた資料を最大限に活用し、背景知識や関連情報の収集などを行い、同時に単語帳や想定文の作成など時間をかけながら準備を進めました。実習当日は発表する方と打ち合わせの時間を持つことができました。この本番直前の打ち合わせでは内容に関する最終的な質問や内容の確認を行い、そしてお互いに声を掛け合いました。私は緊張する気持ちを抑え、一言も落とさないという意気込みで本番に臨みました。実習はZoomの通訳機能を使用して行われましたが、マイクスイッチの操作などでトラブルが発生する事もあり気を抜くことはできません。以前にも増してオンライン通訳が一般化しつつある中、Zoomでの通訳実習も貴重な経験となりました。
実習後は参加学生全員との振り返りの時間があり、自分のパフォーマンスを客観的に見つめ直すことができました。また数々の助言や活発な意見交換からは多くの気づきや学びを得ることができました。通訳は一度きりでやり直しはできませんが、この振り返りは、反省を踏まえて次につなげていくことができるとても貴重な学びの時間となりました。とにかく数を多くこなすというスタイルの通訳訓練とは少し違い、日英通訳?翻訳実践プログラムでは一つ一つを準備から振り返りまで一貫して行うことで、通訳技術の向上はもちろんのこと学術的な観点からも体系的に通訳を学ぶことができます。今学期以降も様々な実習が予定されていますが、引き続き一つ一つ丁寧に取り組んでいきたいと思います。 -
小幡彩友美さん(言語文化学部ドイツ語3年)
今回の大学院生とのコラボレーション授業で私は同時通訳を初めて生で聞いたのですが、まず最も驚いたのがその技術力です。大学院生の方々は、私たちの発表を聞きながら同時に訳をしているとは考えられないほど、綺麗な文章を、聞き取りやすい速度で、どもってしまったり大幅に飛ばしてしまったりすることもなく通訳をされていていました。私たち学部3年生も普段の授業で通訳演習を行っているのですが、事前に用意した原稿に頼ってしまう私たちとは違い、原稿を見ず耳に頼って通訳されている点がとても印象的でした。発表後、僭越ながらフィードバックを述べさせていただく時間には、素晴らしい通訳から改善点を絞り出すのに大変苦労しました。
さらに、技術以外の面でも多くのことを学ばせていただきました。私の発表を担当してくださった大学院生の方は、資料を事前にお送りした際に受領したことを瞬時に伝えてくださったり、事前打ち合わせの時に訳語の確認をしてくださったりと、発表者にも丁寧な配慮をしてくださりました。中には発表直前に音声確認をされる方や、学部生の発表で紹介されていた漫画を実際に購入して読み内容理解に努められた方もいらっしゃり、準備への余念のなさが伝わってきました。
今後は大学院生の皆さんを指標とし、今回学んだことを自分の通訳にも反映していきたいと思います。このような機会を設けてくださった西畑先生、そして大学院生の皆様、誠にありがとうございました。