多文化教育研究プロジェクト 連続セミナー「多文化共生としての舞台芸術」 第2回「戯曲の読み方」

日時

2021年5月20日(木)17:40~19:10

場所

Zoomウェビナーでのオンライン開催

講師

杉山剛志(すぎやま つよし)(演出家、国立ベトナム青年劇場 芸術監督)

演出家?国立ベトナム青年劇場 芸術監督。
パリ?コンセルヴァトワールの教授から体系的な俳優教育を5年間受け、その後、ロシア国立モスソヴィエト劇場の芸術副監督演出家ユーリー?エリョーミン氏に師事。演劇の本場モスクワで演出を学ぶ。国内公演の他、海外フェスティバルへの招聘多数。ステーリノ?ポゾリェ国際演劇祭で入賞(セルビア 2015)。ベトナム国際演劇祭で最優秀演出家賞、最優秀作品賞を受賞(2016)。ベトナム国立劇場で演出をした作品は国立劇場のレパートリーとして現在も上演され続けている。ベトナム国際演劇祭で最優秀作品賞を受賞(2019)。テアトロ演劇賞正賞を受賞(2020)。2021年に国立ベトナム青年劇場の芸術監督に就任。

内容

戯曲を手にした時、演出家や俳優にはそれ以外の人たちとは異なる読み方があります。それは演出家がその場面で何が起こっているのかを理解したり、俳優が役の人物を演じる為に必要な具体的な要素を戯曲から読み解くことを助けてくれます。本セミナーでは「俳優の芸術性とは何か」についてや、「生きる演技を生み出す為には戯曲の何に焦点を合わせ、どんなアプローチの仕方が役に立つのか」についてチェーホフの『桜の園』の一幕の冒頭場面を使って解説します。
戯曲が苦手な方や、演技に直結する戯曲の読み解き方を知りたい方、創造の可能性をもう一歩先に広げたい演出家の方はぜひ奮ってご参加ください。

*チェーホフの戯曲『桜の園』を扱いますので、事前に第1幕冒頭をお読みください。
 こちらからお読みいただけます。
 冒頭部分を読みましたら、事前にこちらのアンケートにお答えください。

*なお、このセミナーはリレー講義「世界文学に触れる」と合同で行われます。

備考

  • 一般公開
  • 参加費無料
  • 事前申込制
    参加ご希望の方は、5月19日(水)17:00(日本時間)までにこちらのフォームよりお申し込みください。

主催

東京外国語大学 総合文化研究所

共催

東京外国語大学 語劇支援室

予告 多文化教育プロジェクト 連続セミナー

  • 第3回「演出」江原早哉香(演劇集団「風」演出担当)
  • 第4回「字幕」未定
  • 第5回「ミュージカル」高橋知伽江(脚本家、翻訳家)
  • 第6回「舞踊」永田宜子(新国立劇場 前研修主管参事(元舞踊チーフプロデューサー))
  • 第7回「日本の古典演劇」
  • 第8回「日本の現代演劇」内野儀(学習院女子大学教授、アメリカ演劇?日本現代演劇)

お問い合わせ先

沼野恭子 nukyoko[at]tufs.ac.jp ([at]を@にかえて送信してください)

講演報告

第2回は、フランスとロシアで修行を積まれ、現在、演出家?国立ベトナム青年劇場芸術監督である杉山剛志氏が担当した。自然な演技を引き出す演技法として知られるスタニスラフスキー?システムの解説と、チェーホフ作『桜の園』を題材に戯曲分析のデモンストレーションを行った。

戯曲を分析するにあたって重要なことは、読み解くべきものは戯曲に書かれている「台詞」や役の「感情」ではないことだ、と杉山氏は言う。俳優が自然な演技をするためには、作者によって与えられた「状況」、そこから派生する登場人物それぞれの「事件」(人物に大きな影響を与え、その人物のそれまでの行動や目的、人間関係、状況などを変化させる事象)を軸として読み解かなくてはならない。

実際に『桜の園』の冒頭部分の戯曲分析が行われた。主人公であるラネーフスカヤが領地に到着する日の明け方に、召使いの男女2人と商人のロパーヒンが会話する場面である。事前に「この場面では登場人物たちは何をしているのか?」というアンケートを取ったが、「ラネーフスカヤを待っている」という回答が大多数であった。しかし、この場面に至るまでに登場人物たちの周りでどんな「事件」が起きたのか分析すると、登場人物たちは決して主人公を待っているのではなく、召使いの男女の逢引きがロパーヒンに邪魔されていたという状況が浮かび上がった。

最後に杉山氏は、演劇という芸術分野には考え方や境遇、環境などが異なる人間の人生に想像力を持って接し、洞察し、その人の立場に立ってその人の視点で世界を観て、理解し、共感する行為、またはそのプロセスがあり、まさに多文化共生と密接に繋がっているものであると述べた。

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