グローバル化にともなって地球規模での人の移動がますます進む中、日本においても総人口の2%を超えて外国人が暮らすようになり、多言語?多文化化が進んできています。外国人にとって住みやすい日本社会を作っていくためにも、司法の現場において多言語?多文化化へ対応できる体制をしっかり作っていく必要があります。
東京外国語大学と青山学院大学は、法廷、捜査、弁護活動など様々な司法の現場で、異なる言語と文化のあいだに立ち、コミュニケーションの円滑化にあたれるスペシャリストを養成するため、「司法通訳養成講座」を開講いたします。講座修了後は、法廷のみでなく、捜査や弁護士との相談など、多様な場面での活躍が期待されます。
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「司法通訳養成講座」の特徴 ?信頼される司法通訳を目指して?
司法現場の第一線で活躍する講師陣による演習を少人数で行います。
★ 今年度は、ポルトガル語、フィリピノ(タガログ)語、ミャンマー(ビルマ)語の3言語を開講予定
司法の現場では、通訳言語の多様化が進んでいます。本講座では、司法通訳としては学ぶ機会の少ない言語の講座を提供します。
★ 通訳技法にとどまらない専門知識を獲得
司法通訳には、法律や司法制度、さらには在留外国人を取り巻く制度や動向に関する専門的な知識が求められます。本講座では、司法の現場で求められる通訳技法や倫理のほか、多文化共生社会に関わる知識、法律用語や裁判のしくみなど、司法通訳に必要な背景知識を総合的に時間をかけてじっくりと学びます。
★ 質の高い通訳人材を養成
学習成果を確認するために、授業の中で試験を行います。こうして、信頼される、質をともなった司法通訳として活躍していただくことを目指します。
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講座の概要?お申込方法
講座名 | 司法通訳養成講座 |
開講期間 |
2022年度1年間(2022年4月開講予定) |
開講日 |
春期間 秋期間 |
開講場所 |
全講座オンラインにて開講 |
開講科目 |
?通訳概論 ?司法通訳Ⅰ?Ⅱ ?多文化共生基礎 ?法廷通訳実践Ⅰ?Ⅱ ?現代法実務論 ?は東京外国語大学担当 ?は青山学院大学担当 |
開講言語 |
ポルトガル語、フィリピノ(タガログ)語、ミャンマー(ビルマ)語 |
受講資格 |
日本語と、開講言語のうちのどれか1言語について、高度な語学力があること |
募集人数 |
3言語 計20名程度 |
選考 |
(一次審査)書類審査 一次審査の結果は、2022年1月末までにお知らせします。二次審査は2月上旬に行います。最終結果は2月末にお知らせします。 |
受講料 |
年間 261,000円(予定) |
募集期間 |
2021年12月13日(月)~2022年1月14日(金) |
申込先 |
東京外国語大学 多言語多文化共生センター |
募集要項 ?所定様式 |
※提出書類については、?募集要項の「出願手順」ページをご確認ください。 |
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カリキュラム
1限 |
2限 春 11:00-12:30 |
3限 |
4限 15:45-17:15 |
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春期間 | 通訳概論 | 現代法実務論 | 司法通訳Ⅰ | 法廷通訳実践Ⅰ |
秋期間 | - | 多文化共生基礎 | 司法通訳Ⅱ | 法廷通訳実践Ⅱ |
「現代法実務論」については、青山学院大学法学部の正課の授業を受講していただきます。
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学修成果の認定(司法通訳養成講座修了証)
本講座は履修証明プログラムとして開講されており、修了者には履修証明書を交付します。更に、各科目15回の授業のうち、全科目に12回以上出席し、かつ司法通訳Ⅰ?Ⅱおよび法廷通訳実践Ⅰ?ⅡのすべてにおいてA の成績評価を受けた方には併せて、両大学長連名の司法通訳養成講座修了証も発行します。講座修了後は、各種研修会等、司法通訳としてレベルの向上と質の継続的な確保を図る機会を提供します。また修了証を取得した方のうち、希望者を「司法通訳養成講座修了生」として登録し、司法関連機関から依頼があったときに紹介します。
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科目概要?講師
法廷通訳実践Ⅰ?Ⅱ
刑事裁判のしくみなど、司法通訳として働くために必要な法律の知識を学びます。捜査から始まる刑事手続の流れと、無罪推定など手続上の重要な原則を確認します。犯罪と刑罰を定める法律である刑法のほかに、家族関係、労働など外国人が遭遇しそうな場面に当てはまる法律の基本を解説します。そのうえで、被疑者(容疑者)取調べ、弁護人と被疑者の面会、法廷での起訴状朗読など、いくつかの場面での通訳を体験します。司法通訳が接する法律実務家である弁護士、検察官、裁判官から、通訳への期待を聴く機会も設けます。理解を確認するための試験が何度かあります。この試験の結果と平常点、体験授業での実技により成績を評価します。
主任講師:後藤 昭(一橋大学法学部卒業。東京大学法学政治学研究科博士課程修了。法学博士。2018年度まで青山学院大学法務研究科教授。青山学院大学及び一橋大学名誉教授。)
現代法実務論
憲法訴訟、民事事件、行政事件、刑事事件、家事事件などの訴訟のみならず、企業における予防法務やADR(訴訟外紛争解決手続)、交通事故案件、知財案件などの様々な法的領域について、現実に問題?紛争となる場面と、そこでの弁護士の役割を学びます。この科目は、神奈川県弁護士会法教育センターから派遣された弁護士による講義を中心としています。司法や法律相談で通訳を行う上で知っておきたい「現場」について、弁護士から直接に学ぶことで、具体的な法的問題と弁護士の活動内容の実践例に触れ、具体的なイメージを持つことができます。
コーディネーター:佐竹 宏章(青山学院大学法学部助教。博士(法学)。)
各回講師:神奈川県弁護士会法教育センター派遣弁護士によるリレー講義
通訳概論
本講座では通訳の概論を取り扱います。通訳の形態や技術、学習法などについて、理論を通して考察するほか、国内外の通訳の歴史も振り返りこれまで通訳行為が行われてきた経緯や背景を見ていきます。また通訳の倫理規定や専門性などにも焦点を当て、言語的な要素のほかに通訳者に求められるものにはどういうものがあるかを検討します。これに加えて通訳者のストレスマネージメント(セルフケア)について専門家をゲストスピーカーとしてお招きし話を伺うほか、外国人問題を多く扱う弁護士からも話を伺う予定です。講義の中では適宜グループでのディスカッションを行い、能動的な参加や考察を促しながら、通訳という営為を多角的に捉えていきます。
講師:岩田 久美(大阪外国語大学イスパニア語科卒業。1992 年よりフリーランス通訳。2011 年、東京外国語大学多言語?多文化教育研究センター「コミュニティ通訳コース」第2 期修了後、専門家相談会、弁護士事務所での相談通訳を担当し、2017 年からMIC かながわ医療通訳として活動。)
司法通訳(ポルトガル語)Ⅰ?Ⅱ
日本で事件に巻き込まれるポルトガル語圏の方は決して少なくありません。特に法廷通訳や捜査通訳の場合は、被告人や被疑者をはじめ、事件関係者の人生に大きく関わるため、通訳者の役割はとても重要であると言えます。本講座では、実際の通訳現場に即したオリジナル教材を用い、メモの取り方、サイトトランスレーションなどの訓練をするとともに、司法通訳者に求められる法律用語や独特な表現の訳出方法などの解説をします。また、独自のシナリオ(台本)を用いた模擬裁判の通訳実践を行うほか、法廷通訳、接見通訳、捜査通訳などの相違点や各場面において求められる実践的な知識についても分かりやすく解説します。
講師:板尾 彩未(ブラジル出身。中央大学法学部卒業。通訳案内士。2000年から法廷通訳、捜査通訳などをする傍ら、政府からの依頼でポルトガル語圏の法律案翻訳を担当。2019年度の本講座の講師。)
司法通訳(フィリピノ(タガログ)語)Ⅰ?Ⅱ
目的1:フィリピノ(タガログ)語と日本語の司法通訳者の養成
目的2:通訳全般の基本訓練
授業内容1:法廷通訳など司法通訳全般に関する理解と通訳訓練。日本語の法律用語に相当するフィリピノ(タガログ)語の単語や表現/現場で頻出するフレーズの訳出訓練など/接見通訳訓練/捜査通訳訓練/模擬公判通訳訓練
授業内容2:通訳全般に通じる基本訓練。シャドウィング訓練/リプロダクション訓練/ノートテイキング訓練/日本語とフィリピノ(タガログ)語のサイトトランスレーション訓練
逐次通訳を基本とします。そのほか、受講生の要望により授業内容を追加します。
講師:高畑 幸(大阪外国語大学外国語学研究科を経て大阪市立大学文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。現在、静岡県立大学国際関係学部教授。1995~2005年度、大阪外国語大学非常勤講師(フィリピン語)。)
司法通訳(ミャンマー(ビルマ)語)Ⅰ?Ⅱ
本講座は、法廷をはじめとする司法に関わる場で、被告人や被疑者、あるいは当事者が通訳を必要とする場合に、適切な日?緬語通訳を行うことのできる司法通訳人を養成することを目的としています。授業では、司法通訳全般に関する理解、通訳人として倫理規範、裁判や拘留に関わる手続きの流れと準備、定型的又は頻出する法律用語やフレーズの確認、翻訳書面の作成等について学び、後半では、比較的頻度の高い事案を場面設定し、オリジナルのシナリオによりロールプレイングなどの実習も行います。メモの取り方、シャドーイング、サイトトランスレーション(サイトラ)等、種々の訓練も組み合わせ、通訳全般に共通する基本訓練も行います。
講師:原田 正美(大阪外国語大学大学院外国語学研究科修士課程修了。大阪大学外国語学部ビルマ語非常勤講師。1993年から法廷通訳を開始、その他の司法通訳、アテンド通訳、会議通訳等各種通訳を行う。)
多文化共生基礎
グローバル化の加速により、日本社会の多言語?多文化化が進行するなか、ホスト社会と在留外国人とのあいだで様々な問題が顕在化してくるようになり、全国各地で多分化共生の推進が急務となっています。本授業では、在留外国人を取り巻く動向や歴史的経緯、政策や制度などの基礎的知識を身につけるほか、様々な課題に最前線で取り組む方々を講師として招き、リレー形式で「多文化共生のいま」をテーマに講義を行います。
コーディネーター:小島祥美(東京外国語大学多言語多文化共生センター長。世界言語社会教育センター准教授。)
各回講師:多文化共生などの分野における専門家によるリレー講義
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注意事項
- 受講者の決定
- 一次審査として書類選考を行 い、結果を全員の方に通知します。選考を通った方には二次審査を実施します。
- 受講料納入
- 受講料は前納制です。受講決定者に対し本学より送付する受講案内をご覧の上、期日までに指定口座に受講料を納入してください。口座振込に係る手数料はご本人負担でお願いします。一度納入された受講料は払い戻しできませんので、ご了承ください。
- 受講のキャンセルについて
- 受講決定後、やむを得ず受講を取り消される場合は、速やかに東京外国語大学多言語多文化共生センターまで電子メールでご連絡ください。
- 休講?補講
- 講師の都合および主催者側の通信?機器トラブル(※)により休講となった場合には、原則として補講を行いますが、天災等の事情により、やむを得ず休講となる場合は、原則として補講を行いません。
※連続して30分以上配信できなかった場合。受講生側のインターネット接続が切れて受講できなくなった場合も補講は行いません。
- 講師の都合および主催者側の通信?機器トラブル(※)により休講となった場合には、原則として補講を行いますが、天災等の事情により、やむを得ず休講となる場合は、原則として補講を行いません。
- 録音?録画?写真撮影
- オンラインで行われる授業の様子を出席者の許可なく写真にとり、それをSNSなどで共有することや、講師の許可なく、授業の内容を録音?録画し、それを公開することは固くお断りします。
- 受講資格の取り消し
- 次のような好ましくない行為があった場合は、教室からの退出、受講の停止、もしくは受講の取り消しをすることがあります。なお、受講料の返金はいたしません。
- 他の受講生の迷惑となる事や、授業の進行を妨げる様な行為を行った場合
- 受講の手続きや受講料の納付を完了していない場合
- 法令等や公序良俗に反する行為があった場合
- 配布されたZoomによる授業のURL、ミーティングIDやパスワードを他人と共有する行為があった場合
- オンライン授業で配布された資料等を、担当教員の許可なく再配布する行為があった場合
- その他受講案内等に反する行為があった場合
- 次のような好ましくない行為があった場合は、教室からの退出、受講の停止、もしくは受講の取り消しをすることがあります。なお、受講料の返金はいたしません。
- その他
- 受講生側の機器接続不良による受講料の返金は致しかねます。あらかじめご了承ください。
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お問い合わせ先
東京外国語大学 多言語多文化共生センター
〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1
? 042-330-5867
e-mail tc-jimu[at]tufs.ac.jp([at]を@に変えて送信ください)
青山学院大学 庶務部庶務課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25
? 03-3409-6366
e-mail agu-sll[at]aoyamagakuin.jp([at]を@に変えて送信ください)