TP-Bridgeプログラムで多様な学び、春学期に英語による専門科目を実施
2025.09.03

本学の世界展開力強化事業である「太平洋を?架橋?するブリッジ?パーソン養成プログラム(TP-Bridge)では、環太平洋について4領域から学ぶ約40の「Trans-Pacific Studies(TPS)」科目を開講しています。
春学期には、「TPS3:サステイナビリティスタディーズ」では、電気通信大学と連携した「インフォパワード?エネルギー概論」および、東京大学先端科学技術研究センターの講師陣等による「サステイナビリティ?スタディーズ:共創社会の実現に向けた視座とアクション」を開講しました。
両科目とも授業は英語で行われ、本学学生と留学生がともに学び合い、異なるバックグラウンドを持つ仲間同士で活発な議論が交わされました。本記事では、各授業の特色と、受講学生の声をご紹介します。
授業紹介①「インフォパワード?エネルギー概論」
アクティブラーニングアワー:株式会社ModuleX訪問レポート
「インフォパワード?エネルギー概論」は、生活に不可欠なエネルギーを環境に配慮した持続可能な方法で確保し、効果的に利用するための技術の最新動向を学び、私たちの生活を豊かにする技術を探究するオムニバス形式の授業です。アクティブラーニングアワーとして2025年7月8日(火)に、技術とデザインでサステイナブルな照明開発事業を展開する株式会社ModuleXを、電気通信大学と合同で訪問しました。
会社訪問に参加した小野美波さん(国際社会学部 カンボジア語2年)の訪問レポートをご紹介します。
参加学生の感想:小野美波さん(国際社会学部 カンボジア語2年)
私はエネルギー分野の研究や課題について学ぶことが面白そうだという単純な興味からこの授業を履修しました。今回の株式会社ModuleXへの訪問はこの関心をさらに深め、エネルギーや環境課題の解決に向けた方法を考える上で新たな視点を得られる貴重な機会でした。
この訪問で一番印象に残った点は省エネルギーと空間演出を同時に行うという株式会社ModuleXの理念がオフィスで体現されていたことです。例えば、私たち学生が説明を受けた部屋の照明は複数の照明が「点」で光るのではなく、長方形の照明が「面」で光るものでした。「点」で光る照明の場合、照明の下にある物体には影ができてしまうため、影を見た人々は部屋がまだ暗いと判断し照明をより明るくするように調節してしまいます。しかし、「面」で光ることで下の机には影ができにくいため、「点」で光る場合よりも明るさが暗い状態でも人々が明るいと感じやすくなります。つまり、照明の形を変えることで少ないエネルギー消費で人々が満足する明るさを得られるのです。私は省エネルギーという言葉にエネルギーの使用量をどれだけ減らすのかを重要視している印象があったため、意識しなくても省エネルギーになるようにデザインをすれば良いという観点がとても面白いなと思いました。実際にデザインされた空間を体験することで、エネルギーの無駄の削減からデザインを通じて使う人々の経験まで総合的にプロデュースすることがエネルギー課題の解決や持続可能な社会につながる大きな一手になりうる方法であると体感することができました。
「文系」だから「理系」分野の詳細な話はわからないだろうと避けてしまっている人もいるかもしれません。実際、前提知識が少ないままで全てを理解することは難しいです。しかし、今回の株式会社ModuleXへの訪問、そして「インフォパワード?エネルギー概論」全体を通じて「文系」、「理系」に関係なく自分が触れたことのない分野について最新の研究や課題解決のための実際の取り組みを知ることの重要性を学ぶことができました。そしてその分野の課題について自分なりに考えてみることも自身の視野を広げる貴重な機会でした。エネルギー分野に関心がある人はもちろん、新しい視点を得たい人にも、この授業をおすすめしたいです。
今回の訪問に際し、貴重な機会を提供してくださった株式会社ModuleXの曄道悟朗代表取締役はじめ皆様に、心より御礼申し上げます。また、本授業および本訪問をコーディネートしてくださった電気通信大学の横川慎二教授にも感謝申し上げます。


授業紹介②「サステイナビリティ?スタディーズ:共創社会の実現に向けた視座とアクション」
本授業は、東京大学先端科学技術研究センター(以下「東大先端研」)の森晶子特任助教を中心としたオムニバス形式講義です。災害、インクルーシブ社会、再生可能エネルギー、デザインとテクノロジー、食糧問題といったサステイナビリティ?スタディーズにかかわる様々なテーマを横断的に学ぶことができた点が大きな特色です。最新の研究や事例を通して、持続可能な社会の実現に向けた複雑な課題の構造を理解し、共創や異分野連携の意義を考察していきます。授業では、東大先端研や他機関の研究者が登壇し、最先端の学際的研究の成果を講義しました。
受講生に対して実施した行った授業後の「サステイナビリティ?スタディーズの授業を通じて学んだことを振り返り、あなたの考え方がどのように変化したか」というアンケートで寄せられた感想をご紹介します。
- 「この授業を通じて、学際的な協働とは単に異なる分野の知識を組み合わせることではなく、複雑な課題を理解し、取り組むためのまったく新しい方法を生み出すことだと学びました。再生可能エネルギーからインクルーシブデザイン、食の持続可能性まで幅広いテーマを扱う中で、データ分析やシステムモデリングといった科学的思考が、人文学や社会科学に属すると考えられてきた分野においても不可欠であることに強く気づかされました。たとえば、インクルーシブデザインの講義では、工学、社会心理学、教育学が交差し、障がいを持つ人々の科学技術分野への参加を促進できることを学びました。同様に、防災?復興に関するセッションでは、気候科学、都市計画、社会政策が統合され、地域に根ざした適応的な解決策が提示されました。これらの例は、人文科学と自然科学は別々の領域だという以前の私の考えを大きく揺さぶり、そうした区分は人工的かつ制約的であり、現実の問題に取り組むうえでは意味をなさないことを理解しました。」
- 「他の学生、とりわけ留学生との協働から多くを学びました。グループプロジェクト1と2では、異なる国から来た学生と一緒に取り組みました。最初は緊張しましたが、すぐにみんながそれぞれ異なる考え方や視点を持っていることに気づきました。例えば、環境政策について議論したときには、自分の国の取り組みを紹介してくれる学生もいて、一つの国でうまくいく方法が他の国では必ずしも通用しないことを学びました。これによって、グローバルな解決策についてより深く考えるようになりました。また、最後の交流会では、先生方や学生と話す中で多様な視点を理解でき、自分の意見を発信する自信もつきました。」
- 「最も大きな気づきのひとつは、多様な背景を持つ他の学生から学べたことです。グループディスカッションでは、文化や経験が人々の考え方に大きな影響を与えることを実感しました。たとえば「クアドラレマ(四重のジレンマ)」の議論では、私は経済と安全保障を優先しましたが、ある仲間は経済と環境を、また別の仲間は経済と人権を選びました。優先順位の違いはありましたが、私たちは最終的に「地域社会や地球のために貢献したい」という共通の思いを見出すことができました。この多様性は私の理解を深め、傾聴?共感?協働の価値を教えてくれました。」
受講生の声からは、この授業を通じて学際的な協働の新しい可能性を理解し、多様な文化的?学問的背景を持つ学生との交流から視野を広げ、グローバルな課題解決には傾聴と共感、そして協働が不可欠であることを実感している様子がうかがえました。本講義の目標である、「多様な学際的研究や事例から社会課題の複雑さを理解し、説明できるようになる」、「異なる分野や立場の人々と協働する」、「異なる背景を持つクラスメートと共に取り組み、自らの考えを融合させて発表につなげる」ことに、受講生が様々な側面から取り組んでいたことがわかります。
本授業の実施にあたり、東京大学先端科学技術研究センターの森晶子先生をはじめ、多くの先生方にご尽力いただきました。心より感謝申し上げます。


なお、2026年度以降も「インフォパワード?エネルギー概論」および「サステイナビリティ?スタディーズ:共創社会の実現に向けた視座とアクション」の開講が予定されています。
TP-Bridgeでは、オンラインプログラム(COIL型授業)、オンキャンパスプログラム(TPS科目)、オンサイトプログラム(インターンシップ?海外研修)を通じて、環太平洋地域に関する多様な学びの機会を提供しています。詳細は、東京外国語大学TP-Bridge公式サイトにてご案内していますので、ぜひご覧ください。