大学院日英通訳?翻訳実践プログラムの大学院生が学部生と合同授業で遠隔同時通訳を実践
2025.07.02
2025年6月20日(金)の1限目に、大学院日英通訳?翻訳実践プログラムの大学院生が、学部生向けに開講されている通訳概論クラスとの合同授業で、オンラインで同時通訳を行う遠隔同時通訳の通訳実習を行いました。本番の2週間前の授業で、Zoomの通訳機能についての説明と音声チェックを行う機会が設けられ、迎えた当日は、80人以上が参加しました。参加者の中から代表で、遠隔同時通訳を担当した大学院生の前橋慧河さんと、遠隔同時通訳を聞く体験をした学部生の沓澤空来さんと青木佳那さんの感想を紹介します。
大学院日英通訳?翻訳実践プログラム博士前期課程2年 前橋慧河さん
今回の通訳実習では、Zoomでの通訳機能を活用した遠隔英日同時通訳を、学部生に向けて行いました。内容としては、とある大学の卒業式で行われた英語でのスピーチを扱いました。トークテーマも、遠隔で行う通訳形式も、前回のキャンパスツアー形式の通訳実習とは大きく異なっていたため、難しさを感じましたが、自信にも繋がったと実感しています。
まず自信となったのは事前準備がうまく機能したことです。これには主に3つが起因していると考えます。1つ目は、原稿をあらかじめ渡されることを想定した実習であったため、専門用語や固有名詞についてよくリサーチしたことです。通訳者同士で訳語を統一し、訳出にばらつきが出ることを防ぐことができました。2つ目は、スピーカーの人物像についても過去のインタビュー動画などから考察を行ったことです。それにより、口調や言葉遣いをできるだけ本人に近づける意識を持てました。3つ目は、何度もリハーサルを重ねることです。当日に通訳の交代をスムーズに行うことができ、本番を想定した事前準備の重要性を認識しました。当日は、前回の実習よりオーディエンスの数が多く、緊張感がありましたが、その中でも大きなミスがなくやり遂げられたことは自信となりました。
一方で反省点も多く見つかりました。例えば、スピーカーの話す速度が想定より早く、訳出が遅れがちになった点や、インターネット環境やマイクの質によってオーディエンスに聞きづらさを感じさせてしまった点です。特に遠隔同時通訳では、機材やネット環境の準備も入念にする必要があることを強く体感しました。今回の反省点を今後の実習に活かし、さらに良いパフォーマンスをオーディエンスへと届けられるように練習し続けていきます。
言語文化学部2年 沓澤空来さん
大学院生の皆さんの同時通訳は、初学者である私から見たらとても自然で快適に聞くことができました。たとえ事前に原稿が出ていて翻訳をしておくことができたとしても、話し手の抑揚の付け方や間の取り方、感情の込め方など、その場で対応しなければいけない要素はたくさんありますが、それらにも上手に対応されていたように思います。授業の課題として自分で翻訳した際にあまり意図がつかめなかった部分で、大学院生の皆さんの同時通訳を聞いて意味が鮮明になった部分もありました。自分の英語力の不足も痛感しました。貴重な体験をありがとうございました。
言語文化学部2年 青木佳那さん
遠隔同時通訳を体験し、通訳者自身のスピーチ力の重要性を実感しました。私は、今まで通訳という業務について、通訳する内容を重視した考え方をしていていましたが、院生の方々の自然な日本語、ユーモアを反映したスピーチを聞き、内容を正確に伝えるには、淡々と内容を伝達するのではなく、あたかもスピーカー本人のようにスピーチ全体をコントロールする力が必要なのだと理解しました。特に、今回はZoomを利用した遠隔同時通訳で、通訳の日本語を選択している状態では、音声情報は通訳者の日本語のみになります。オーディエンスに伝わる情報量が制限される環境でも、通訳するスピーチの内容、スピーカーの意図、スピーチの面白さを伝えるために、通訳者が果たす役割は大きいと分かりました。