ご卒業おめでとうございます!(2024年度卒業式?学位記授与式)
2025.03.21
2025年3月21日(金)、2024年度卒業式?学位記授与式がアゴラ?グローバル プロメテウス?ホールにおいて挙行されました。言語文化学部347名、国際社会学部348名、国際日本学部73名、大学院博士前期課程104名、大学院博士後期課程12名が卒業?修了し、学位が授与されました。
- 学長式辞(学部)
- 学長式辞(大学院)
- 学長式辞(学部)(動画)
- 言語/地域/学部ビデオメッセージ(YouTube: TUFS Channel)
- 言語文化学部長 祝辞
- 国際社会学部長 祝辞(近日公開)
- 国際日本学部長 祝辞(近日公開)
- 大学院総合国際学研究科長 祝辞
- 2024年度卒業式?学位記授与式(ダイジェスト版)動画










学長式辞

皆さん、ご卒業おめでとうございます。今年の卒業生の総数は3つの学部を合わせて768名です。2021年入学で4年で卒業される方が262名、2020年入学で5年で卒業される方が409名、2019年入学で6年で卒業される方が63名です。
5年や6年での卒業者の比率は、大学単位では全国ダントツ1位を誇っていて、その方々が主流派として胸を張っているのは、本当に東京外国語大学ならではのことです。いうまでも、5年以上かけての卒業の大半は、留学による「留年」です。
そのことに表れているように、本学は、ふつうの大学の枠に収まらないところが多々あります。1、2年生の時は、専攻語や英語の授業、留学生なら日本語の授業で、受験勉強以上に勉強させられたと思います。それが終わると、ゼミを選ぶなどの段階にいたり、今度は、いろいろな分野のなかから、いわば自由に選ぶという、責任を伴う選択に迫られました。そして、長期留学を志した皆さんは、厳しい選抜や手続きをへて、実際に、海外の大学に放りだされました。もちろん、大学としていろいろバックアップをし、お世話をしたつもりですが、一人で、はじめて留学先の大学の窓口に立った時は、きっと不安でいっぱいだったのではないかな、と思います。これだけ多くの学部の学生が、世界中の大学に、1名、2名ずつばらばらに旅立っていく大学というのも、日本中で本学だけです。長期の留学を選択しなかった皆さんも、きっと大学でいろいろな体験をされたものと思います。
以上は、いつもの外大の風景ですが、皆さんの場合は、大学生活の前半はコロナ禍でたいへんでした。コロナは、2020年の春に始まりました。2021年度入学の皆さんは、不安ななかで受験の準備をされたと思います。2020年入学の皆さんは入学式もできず、大学生としてキャンパスに入れたのは、半年後の10月でした。オンラインでしか接触できなかった時期、家でパソコンに向かう皆さんのことがどれだけ心配だったか、思い出されます。でも、皆さんは、そうした困難を軽々とのりこえられたように思います。2021年度の入学式は、教室に分散して行いました。ですので、今日卒業する皆さんは、このプロメテウスホールでの式典は、今回がはじめて、ということになります。度重なる緊急事態宣言やワクチン接種などに翻弄され、外語祭もハイブリッドで行われた2021年、長期留学がなんとか復活し、外語祭も対面で行われた2022年、ショートビジットが再開された2023年と、皆さんの学年が上がるにつれ、大学の日常ももどってきましたが、皆さんにとっては、戻るもなにも、1回限りの大学生活が、こうした制限のなかで進んだことは本当に残念だったと思います。それでも、大学生活の後半は、キャンパスでみんなと過ごし、一緒に学ぶことができました。よい思い出とともに、今日の日をむかえられているものと期待しています。
ただ、コロナ禍をへて、シャットダウンされていた世界の往来が普通にもどり、今まで以上に世界の一体化が進むのかと思っていたら、今は、全く逆の動きとなっています。現在の世界が、なんでもありの、弱肉強食の様相を呈していることは、申し上げるまでもありません。ニュースを見るのもつらくなりますが、SNSなどでは根拠のない情報も飛び交い、私たちは、いったいどこに向かって進んでいるのか、人類はいったい過去に学び、進化しているのだろうかと不安に思います。
しかしながら、東京外国語大学は、それにあらがう大学です。皆さんが本学で学び、自然に身に着けた「感性」は、今の世界の状況をよしとはしないものだと思います。皆さんは、世界には、いろいろな人がいて、それぞれの歴史があり、文化があり、信仰があり、言葉がある。それは、みな、人々の属性であり、優劣はない。たとえ衝突することがあっても、互いに言葉を交わせば、いつかはわかりあえる、それをわかっています。こんなことは、あえて、言葉にしなくても、本学のなかでは、当然の価値観だったと思います。本学で4年間、あるいは5年、6年と学んだ皆さんにとって、こうした当然のことが、当然である世界が、いまだ実現していないことは、今は、無念だと思います。皆さんがこれから出ていく社会では、皆さんの感性が、ちょっと変わっている、と思われることさえ、あるかもしれません。ただ、皆さんは、これらの人生でこうした現実に立ち向かい、当然のことが当然となる社会の実現のために尽くしてくださるものと、確信しています。
外大は小さな大学ですから、人数の点でみると、卒業生は、社会のなかでほんの一握りにすぎません。でも、会社の中でも、地域のなかでも、世界のどこかでも、同じような志をもって生きていくと、あれ、ここにも外大生がいる、と思うことがきっとあります。学長を務めた6年間、卒業生の皆さんと会うたびに、そのことを実感しました。
なので、世界の今の状況を前にしても、私は、悲観をしていません。きっと、今日旅立つ皆さんが一つ一つの核となり、社会をかえていってくれると信じているからです。その力が皆さんにはあります。自分を信じ、理想を捨てずに、これからの人生を歩んでほしいと思います。
大学はこれからも皆さんを応援しています。どうか、元気で、自身も周りも、幸せにするような人生を、歩んでください。今日は、本当におめでとうございます。
2025年3月21日
東京外国語大学長 林佳世子
学長式辞(大学院)
10月以降に博士論文を提出され博士号を授与された12名の皆さん、また大学院博士前期課程の世界言語社会専攻を修了された69名、国際日本専攻を修了された35名の皆さん、修了、おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
博士号を取得された方々は、今読みあげられた論文タイトルからわかるように、長い研さんの結果、言語学、言語教育学、人類学、平和構築学など、人文社会の諸分野に貢献されました。博士論文執筆の間にはコロナ禍もあり、海外での調査は言うに及ばず、人と突っ込んだ議論をすることもできない時期もあったと思います。それを乗り越えての博士号取得であるだけに、皆さんの研鑽とその成果を心から讃えたいと思います。
皆さんが博士論文で追及された問いは、自分だけのものと思われるかもしれませんが、決して、そうではありません。実は、社会が皆さんに問いかけた問いだと思います。だからこそ、皆さんが見出した答えを、ぜひ、社会と共有し、社会で役立てていっていただきたいと思います。人文社会分野の研究は、一人ひとりの問いが、重なりあい絡み合って、一つの方向を指し示します。社会の問いに応える活動を、これからも続けて行っていただき、社会を変える力になってください。人文社会系の研究には社会を変えていく力があることを、若い皆さんの研究で示していっていただきたいと心から願っています。
修士課程を終えられる104名の皆さんも、2年または3年の期間に、多くのことを経験され、修士論文に結実されました。104名のうち、49名は日本に留学してこられた皆さんです。修士課程での生活は皆さんにとって、どのようなものだったでしょうか。学部生時代と違い、ひとりで課題に立ち向かう時間が多かったのではないでしょうか。問題をたて、問題をとく方策を見つけ、実証していく、その積み重ねだったと思います。しかし指導教員や先輩、友人の支えもあったでしょう。学外の研究仲間を見つけられた人も多いと思います。そうしたつながりが、これからの皆さんの人生を豊かにしていくと確信します。
さて、大学院を修了される皆さんは、これから修士号、博士号をもった人材として、社会に巣立っていかれます。ただ、私が思うに、修士号や博士号は、称号としてだけ、意味をもつわけではありません。大事なことは、皆さんが、何かを突き詰めて、研究し、自身の言葉で論理的にそれを説明する力をもっている人だということです。皆さんが突き詰めた問題は、そもそも、先ほどのべましたように、社会が皆さんに突きつけた問いでもありました。
世界の言語や文化、歴史や社会の特性を解明すること、それを通じて、世界の人々の間の相互理解を促進すること、人と人の対話の場をつくること、地域社会において共生のための仕組みづくりを行うこと、言語教育をDXの時代に即したものにしていくこと、人の心を豊かにする文化をより身近なものにしていく取組みなど、研究すべきこと、あるいは、研究マインドを持って社会でなすべきことは、無限にあります。
「世界」を舞台に活動する人間として、分断が進み、利己的な行動、さらには信じられないような戦争や人道危機が平然と行われる社会に、ストップをかけることも、皆さんなら、きっとできます。私たちは、東京外大で学んだ皆さんが、社会を変えていってくれると信じています。どうか、次のステージで、存分に皆さんの力を発揮してください。大学は、ずっと皆さんを応援しています。
改めまして、修了おめでとうございます。
2025年3月21日
東京外国語大学長 林佳世子
言語文化学部長 祝辞

東京外国語大学言語文化学部の2024年度卒業式を迎えられた皆さん、卒業おめでとうございます。
皆さんは、東京外国語大学という学び舎で多くのことを学び、さまざまな経験を積んできました。その成果が今日、晴れて卒業という形で結実し、皆さん一人ひとりが新たな一歩を踏み出すこととなります。
東京外国語大学で、そして言語文化学部で、自分はいったいどのようなことを学んで、どのような収穫を得ただろうかと考えてみると、皆さん、それぞれどのような思いが沸き起こるでしょうか。
まず、とりわけ1年生、2年生の時に努力したであろう専攻言語の学習。近年、生成AIや高度な自動翻訳技術の発展により、「外国語を学ぶ意義とは何か」という問いが投げかけられています。確かに、AIは驚くべき速さで言語の壁を越えつつあります。しかし、外国語を学ぶことは、異文化への理解を深め、多様な価値観に触れることであり、異なる背景を持つ人々との相互理解を促進し、共生社会の実現に貢献する力となるにちがいありません。
そして、ゼミ?卒論で取り組んできた研究。皆さん、今振り返ってみて、どうですか。どのような研究テーマであれ、ある学問分野をその基礎から学び、研究を進めると、いかに自分がこれまで知らなかった世界が多いか、そのことを知った、しかも知ることになった分野は自分が学んだ範囲だけであって、自分が学んでいない世界には、まだ自分が知らない膨大な人類の知見が存在しているのだということが、わかったのではないかと思います。孔子も『論語』の中で、“知之為知之、不知為不知。是知也。”(之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。)と、つまり、「自分が知っていることを知っていると認め、知らないことを知らないと認める。これが『知っている』ということである。」と述べていますね。
学びによって自らが知る世界が増えるという経験は、今後様々な課題に直面し解決していかなければならない時に、どう取り組めば良いかという豊富な視座を提供してくれることになると思います。私としてはぜひ皆さんには、この学ぶという姿勢を、今後も持ち続けてほしいと思います。
この場合の学ぶというのは、何も本を開いて勉強し、その分野の知識を増やすということだけを指しているのではありません。「既視感」という言葉がありますね。既視感とは、これまで一度も見たことがないのに、いつかどこかで見たことがあると思う感覚でしょう。ここで発想を転換させて、その逆、つまり、これまで何度も見てきたものを今初めて見るかのような感覚で見ることを考えてみましょう。哲学者の鷲田清一氏はその著書『哲学の使い方』の中でこれを「未視感」と名付け、新しい目でものを見ることの大切さについて述べています。私たちは学びを通じて多くの知見を得ることによって、人間や社会の中にある、これまで気づいていなかった側面に気づき、初めて目にするかのように感じられる、これまで見えていなかった景色が見えてくるのです。いわば日々の物事を見る際の解像度が上がると言い換えてもいいでしょう。同じ人生なら、より彩りのある人生を送ってみたいと思いませんか。
卒論を書き終え、卒業を迎えることで、やっと苦労した大学での勉強も終わったと、ホッとしている人も少なくないでしょう。それはそれでいいでしょう。ただ、大学での学びは、単に知識を得るだけではなく、新しい「物の見方」を得ることでもありました。それは、皆さんがどんな学問分野を選んだとしても共通していることだと思います。今後も、日々の暮らしの中で、予期せぬことから学び続けることで、見えなかった世界が見えてきます。そのことが、皆さんがこれから歩む道をより深く、豊かなものにしていくはずであり、またそのことは、皆さんが大学で学んで得た収穫の一つではないでしょうか。
卒業生の皆さんが新たなステージに進むための勇気と希望を胸に、これからの人生を切り拓いていくことを期待しています。そして、どんな場所にいても、この東京外国語大学で過ごした日々が、皆さんの強い支えとなり、未来への道しるべとなることを願っています。
皆さんの今後のご活躍を心よりお祈り申し上げ、私の祝辞といたします。
2025年3月21日
言語文化学部長 三宅登之
国際社会学部長 祝辞
(準備中)
国際日本学部長 祝辞
(準備中)
大学院総合国際学研究科長 祝辞

大学院博士前期課程を修了した皆さん、そして博士後期課程を修了し、博士の学位を取得された皆さん、おめでとうございます。
また、これまで皆さんを支えてこられたご家族や友人の皆さま、そして指導にあたられた先生方に対しても、心よりお祝いと感謝を申し上げます。
皆さんのここに至る道のりには、多くの苦労があったことと思います。文献を渉猟し、理論的枠組みを追求し、議論を重ねながら、自らが設定した問いに対してその答えを見出す努力を続けてこられたはずです。在学中のそうした努力の積み重ねは、皆さんにとって最も貴重な財産であると思います。
みなさんがこの大学院で研究に取り組んで来た期間に、世界は大きく変動してきました。ロシア?ウクライナ戦争、中東における紛争と戦闘の激化、東アジアにおける緊張の高まりなど、各地で対立が先鋭化しています。こうした状況を理解するためには、歴史的な背景、経済的な利害、そして文化的?宗教的な価値観の違いが複雑に絡み合っているということを解明する必要があります。
また、いわゆるグローバルサウスの台頭は、国際社会の力学を大きく変えつつあります。従来の先進国中心の世界秩序から、多極化する世界へと移行するなかで、新興国の影響力が増しています。こうした国々は、経済成長によるインパクトのみならず、自由民主主義的な政治体制や国際秩序に対抗し、独自の文化や価値観を対置するなど、政治や文化の面でも存在感を強めています。
このような国際紛争や国際政治をめぐる諸課題は、まさに、ここにいる皆さんにとっての学術的問いであり、答えを探求するプロセスであったと思います。表面的な分析にとどまるのではなく、深い歴史的?社会的文脈を踏まえて考えることが、今ほど求められている時代はありません。
皆さんが大学院で取り組んできた研究は、こうした複雑な世界を読み解き、新たな未来を切り拓くための重要な礎となります。そして大学院で研究に打ち込んだ日々は、皆さんの今後の人生にとってきわめて貴重な経験として、後に振り返ることになるはずです。大学の教員には、サバティカルという制度があり、一定の期間研究に専念する権利が与えられます。このサバティカルを終えると、久しぶりに大学院生時代と同じようなとても充実した研究生活を送ることができたと語る方が多いです。大学院での日々がかけがえのないものであるというのは、研究者に限られるものではないと思います。
皆さんがこれから歩む道は多様であり、アカデミアの研究者として研究を続ける人、企業や官公庁などで専門的な知識と技能を活かして働く人など様々です。そしてそれぞれに、異なる挑戦が待ち受けていることでしょう。しかし、どのような道を選ぶにせよ、ここで培った知的探究心と批判的思考を大切にしていただきたいと思います。
修士?博士の学位を取得したことは、皆さんにとって終着点ではなく、新たな出発点となります。新しい知的冒険が始まることを意味します。皆さんの未来が希望に満ちたものであることを心より願い、改めてお祝いを申し上げます。おめでとうございます。
2025年3月21日
大学院総合国際学研究科長 鈴木義一