大学院日英通訳?翻訳実践プログラムでオンラインにて同時通訳実習を実施

2022.01.19

2021年度秋学期に、大学院総合国際学研究科の日英通訳?翻訳実践プログラムの「通訳翻訳実践研究2」科目において、学部生向けの「通訳基礎II」科目(逐次通訳演習クラス)とのオンラインでのコラボレーション授業の形式で同時通訳実習が2回実施されました。

春学期に引き続き、Zoomの言語通訳機能を活用してオンラインで同時通訳を行う遠隔同時通訳(Remote Simultaneous Interpreting)を、トピックとメンバー構成を変えて行われました。

1回目は学部生の英語でのプレゼンテーションを日本語に、2回目は日本語でのプレゼンテーションを英語に、大学院生が同時通訳を行いました。実習で同時通訳を行った大学院生の中から2名(佐々木勇介さん、高月環綺さん)のレポートを、発表者?オーディエンスとして参加した学部生2名(久野紀子さん、鳥居真利那さん)の感想と併せて紹介します。

① 秋学期1回目(2021年11月15日実施)の英日同時通訳実習

レポート:佐々木勇介さん(大学院博士前期課程 日英通訳?翻訳実践プログラム 2年)

秋学期1回目の通訳実習では、学部生がSNS関連のテーマのプレゼンテーションを英語でそれぞれ発表し、大学院生4名が日本語に同時通訳しました。実習の1週間前に担当する学生と打ち合わせをする時間があり、自己紹介と話す内容などについて確認しました。資料や原稿の共有は、打ち合わせ中のZoomにあるチャット機能や授業後のメールで行いました。

今回はSNS関連のテーマであったこともあり、事前にいただいたスライドや原稿などの資料を元にSNSの定義やメリット?デメリットなどについてインターネットで検索し、ニュース記事やSNSに精通した専門家が書いたブログなどを参考に情報収集を行いました。また、スライドや原稿に目を通して自分が理解できなかった表現や混乱した箇所をメモにまとめ、当日朝の打ち合わせに臨みました。

当日は、準備段階でまとめた確認事項を発表者に質問し、不明点をなくして実習に移りました。実習時に意識していたことは、普段通訳をするとき、発表者に遅れないようにしようと早口になりがちであるため、それを聞きやすい早さにすることと発表者が一番聞き手に伝えたいメッセージは必ず訳すことを心掛けていました。

実習終了後、学部生と先生から大学院生の同時通訳に対するフィードバックをする時間があり、今回も通訳の上達に役立つアドバイスを沢山いただきました。意識していた早口の癖はプレゼンテーションの細かい情報まで訳出していたことで、結局出てきてしまいましたが、発表者の一番伝えたいメッセージはしっかりと訳せたことは良かったと思います。今回いただいたフィードバックを今後の通訳に活かしていきます。

今回もオンライン形式ではありましたが、貴重な通訳実習の場をくださった先生、協力してくださった学部生の皆様に改めて感謝申し上げます。

感想:久野紀子さん(言語文化学部3年)

Zoomを用いたオンライン授業で、SNSについての英語の発表を大学院生の方々に同時通訳していただきました。同時通訳とはどのようなものなのかを実際に見ることができ、非常に刺激の多い経験となりました。学習したことは大きく分けて主に二つあり、一つは事前準備についてです。事前に発表で使うスクリプトとパワーポイントをゼミ生と共有した人もいれば、パワーポイントのみ共有してほしいという大学院生もいました。通訳の事前準備の方法は人それぞれ自分に合ったものがあること、それを自分で見つける必要があることを学びました。また、パワーポイントの参考文献やその他関連する資料を徹底的にリサーチしていて、背景知識の固め方?重要性を実感しました。私の発表では固有名詞をいくつか挙げましたが、そのようなリサーチ、クイックレスポンス、発声練習などの入念な事前準備から、大学院生の方々は戸惑うことなく自信を持って訳出されていて、尊敬の念を抱きました。

二つ目が、訳出方法です。大学院生の訳出を客観的に聴き、よかった点?改善点をオーディエンスとして評価しました。大学院生の方々は共通してハキハキと聞き取りやすい声で訳出していて、通訳者はただ言語を他の言語に変換することではなく、オーディエンスに伝えることを意識することが重要だと実感しました。同時に、主語と述語の不一致、スピーカーとのテンションの違いなど、その難しさや留意すべき点を考えさせられました。

今後通訳に挑戦してみたいと思っている私にとっては非常に貴重な機会になりましたし、このような実践演習は通訳?通訳者への理解の促進にも繋がると考えます。今後の通訳練習の際、この経験を活かしたいと思います。

② 秋学期2回目(2022年1月10日実施)の日英同時通訳実習

レポート:高月環綺さん(大学院博士前期課程 日英通訳?翻訳実践プログラム 2年)

秋学期2回目の通訳実習では、学部生が日本文化に関連したテーマの日本語プレゼンテーションを、英語に同時通訳しました。実習の前に、担当する学生とお互いのことを知るためにアイスブレイクをZoomで行いました。

スピーカーの意図も深く理解した上で同時通訳に取り組もうとしたことで、資料から読み取った学術的なキーワードはいうまでもなく、場合によっては学術記事を精読する必要がありました。精読することで自らの表現を練り、いかに簡潔かつ洗練された用語で同時通訳するかに尽力しました。

本番が始まる前に発声練習や資料を、サイトトランスレーションの技法を用いて事前準備を行い、万全の体制で本番に臨みました。日本文化とは言いつつも、今回の内容は多岐に渡り、その全てに精通する必要がありました。そもそも、一つの通訳を行うのに必要な準備時間は自分自身の知識を増やすために、相当かかります。その中で、様々なコンテンツが含まれる今回は、特に多くの準備を要しました。それを可能な限りこなし、自分のものにしていく過程は大変ではありましたが、有意義なものでした。それを踏まえて、当日に各発表者とブリーフィングを行いました。英語に存在しない日本語独特の表現や言い回しについて特に意見交換をしました。スピーカーの意見を最優先とし、オーディエンスに伝えたい意図を明確化することを常に心がけました。一方、学部生からいただいた第三者の視点からのフィードバックも極めて重要で、客観的によかった点と改善点を伝えていただき、それを踏まえた上で、同時通訳の能力を常に磨き続けることがいかに大切であるかを実感しました。

再び遠隔同時通訳の実習の機会に恵まれ、改めて自分自身の能力を試す場にもなりました。またとない機会を設けてくださった先生、貴重な意見を下さった学部生の皆様に感謝申し上げます。

感想:鳥居真利那さん(言語文化学部3年)

大学院生の方々に日英同時通訳をしていただき、多くのことを吸収することができました。みなさん日本語母語話者であるにも関わらず、流暢な英語で落ち着いて通訳しており、訳が難しいもの(固有名詞や数字など)も適切に訳出していました。下調べやクイックレスポンスなどの練習をしっかりとされていたのだということがその通訳からわかり、改めて事前準備の大切さを実感しました。

また、大学院生の方々は、通訳をする際に耳からの情報を非常に大切にされているのだということがわかりました。事前にスピーカーから台本をもらっていたとしても、それを全訳して読み上げれば良いというわけではありません。スピーカーが台本通り話すとは限りませんし、表情や声のトーンを見ながら通訳の調子も合わせていかなくてはなりません。そのためにメモを取ったりスピーカーの顔を見ながら聞き取りをされている様子が、大学院生の方々からうかがえました。

そして何より、今回の授業を通して、自分の通訳へのモチベーションを上げることができました。私は英語が得意というわけではなく、通訳の経験もまだ浅いですが、勉強と練習を積み重ねれば、いつか大学院生の方々のように素晴らしい通訳ができるようになるのだと希望を持つことができました。

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