作家の多和田葉子さんらを招きワークショップ&朗読会を開催
2021.06.08
2021年5月19日(水)、作家?詩人の多和田葉子さんと共立女子大学名誉教授で翻訳者の満谷マーガレットさんをお招きして、ワークショップ「海を越える『献灯使』――翻訳のなかで声となる言葉たち」をオンラインにより開催しました。
このワークショップは、昨年10月に東京外国語大学出版会から刊行された『多和田葉子/ハイナー?ミュラー 演劇表象の現場』(多和田葉子著、谷川道子?山口裕之?小松原由理編)の出版記念イベントとしても考えられていたものでしたが、福島第一原子力発電所の危機的な大事故から10年という節目にあたる今年、日本のディストピア的状況を描き出す2014年の作品『献灯使』をとりあげ、そのさまざまな翻訳を通じて、多和田さんのメッセージを浮かび上がらせることを、このワークショップのなかで試みました。
『献灯使』はまた、アメリカでの翻訳 “The Emissary” が刊行された2018年に全米図書賞?翻訳部門を受賞したことでも知られています。ゲスト講師として参加いただいた満谷マーガレットさんは、その翻訳者です。
このワークショップでは、『献灯使』の現在すでに翻訳が出版されているものを中心として、チェコ語、ポルトガル語、ドイツ語、中国語、英語、ロシア語、タイ語、トルコ語、韓国語という、全部で9つの言語による朗読を行いました。これらのうちポルトガル語は、すでに翻訳が完了しているものの未出版の原稿を使わせていただき、またロシア語については翻訳がまだ存在しませんが、本学の博士課程の留学生が作品の中から一箇所を選んで翻訳に挑戦しました。
翻訳者たちは(この10月から本学に留学するリオデジャネイロ州立大学の学生も含めると)すべて本学の学生たちでした。朗読する箇所は、すべて学生たちが自分自身で選び出したものです。対訳の画面を提示しながら朗読したのち、学生たちは選んだ箇所についてのコメントやそこで翻訳によってどのようなことがあらたに生まれているかについての説明を行いました。そのそれぞれに対して、多和田さんと満谷さんからの質問やコメントがあり、『献灯使』という作品のもつ強烈なメッセージとともに、翻訳という行為そのものの豊穣さを共有できる時間となりました。
イベントポスター