『深淵の沈黙』刊行記念 野平先生×真島先生トークイベント開催

2018.07.13

2018年7月5日(木)、紀伊國屋書店新宿本店において、本書を翻訳した野平宗弘先生と東京外国語大学出版会編集長の真島一郎先生のトークイベントが開催されました。
トークイベントでは、詩人にして思想家ファム?コン?ティエンの叛逆の人生をふりかえりながら、「俺はヘラクレイトスやハイデッガーを血と涙で読むというのに、大学教授どもときたら近視眼でしか読めない」といってアメリカでの留学生活を放棄した話や、せっかく就いたフランスの大学での哲学の助教授職も、学校哲学がバカらしくなってやめてしまった話などのエピソードも交え、家庭や周囲の迷惑など顧みることなく己の深淵を見つめ思想し詩作してきた、早熟で破天荒なティエンの人生が紹介されました。
さらに、『深淵の沈黙』に関する議論の中では、とりわけ本書の附録に収められた「ニーチェの沈黙への回帰」を巡って、ベトナム戦争状況下で述べられた「真理とは何か? 真実とは何なのか? 問いがまだ答えられていないうちに(…)問いはすでに、血と涙で、炎と灰で、白い布で、子供の冷たい瞳で答えられている」という絶望の言葉や、「どうしてニーチェは沈黙しなければならなかったのか?」という各断章冒頭の反復表現とともに読者に訴えかけてくる語りの、ほとんど宗教的と言っていいほどの震撼すべき迫力に触れ、安易な答えや解決など求めることなくひたすら問い続けること、剥き出しの<性>(存在)に到るまで問うていくこと…、そして、それらをティエンが求めていたことの重要性についての指摘がなされ、ベトナム戦争の混迷が続く1967年に刊行された思想闘争の書である本書の、いまなお失せない魅力とその思想的可能性に迫りました。
その後、訳者の野平先生によるサイン会も開催され、イベントは盛況のうちに終了しました。

なお、『深淵の沈黙』刊行記念の選書フェア「いまだ夜深き時代、『深淵の沈黙』を読む」は期間を大幅に延長し、紀伊國屋書店新宿本店3階にて、8月9日(木)までの予定で開催しています。

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