日本学術振興会
21世紀COEプログラム


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(文部科学省)


東京外国語大学
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史資料収集−研究担当班


活動報告

2006年度以降 (2005年までの活動報告はこちら)

1. 海外事業 (史資料収集保存・共有事業)

 (1) 昨年度、バングラデシュの解放戦争研究センター「オーラルヒストリー・プロジェクト」との間の3年間にわたる事業協力を終了した。成果として、同センター刊行のBangladesh Liberation War 1971 Oral Evidence, vol. 1-11 Sukuwar Biswas (ed.)Centre for Research on Liberation War of Bangladeshが到着している。なお編者のSukuwar Biswas氏(バングラデシュ解放戦争研究センター編集主幹)は、2006年12月16・17日に開催された総括班主催の国際シンポジュウムで、この間の事業の概要と意義について報告されている。

 (2) インドネシアのハサヌディン大学との協力事業(日本占領下の南スラウェシに関するインタビュー記録のデジタル化)も無事、終了した。すでに60テープ98本分あったマカッサル公文書館の音声資料のデジタル化(CD)とトランスクライブを終えた後は、南スラウェシの未調査地域でのインタビュー調査も実施した。新たにインタビューしたものは60本テープ86本分であり、これもデジタル化している。成果としてはCDのほか、製本化した500ページを超えるトランスクリプト9冊が届いており、その内容を目録化したものも間もなく刊行される。上記の国際シンポジュウムでは、この事業を中心的に担ったA. RASYID Asba,氏 (インドネシア・ハサヌディン大学地域多元文化研究センター長)が報告された。

2. 研究会活動ほか

第15回定例研究会 2006年5月16日 海外事情研究所
倉石一郎(本学外国語学部助教授 オーラル・アーカイヴ班)
高知県における「福祉教員」の経験をめぐって―論文「異種融合的教育編成のなかの同和教育と経験者からのインタビュー」―

第4回日本オーラル・ヒストリー学会大会共催 2006年9月23・24日  研究講義棟113・114・115教室
23日午後にはシンポジウム「戦争・植民地期-オーラル・ヒストリーの視点から」と研究実践交流会が開催され、24日には4部会に分かれて個別報告がなされた。本班からの報告者は以下の通りである。両日とも多くの人々が参加し、活発な意見交換がなされ盛会であった。
河路由佳(本学外国語学部助教授)「1942年度・1943年度のタイ国招致学生事業による在日タイ国留学生-日本側文献と元留学生の語りの間」 第2分科会(植民地支配と史料論)寺内こずえ(本学大学院博士後期課程、在カンボジア日本大使館調査員)「『壁のない牢獄』-クメール・ルージュ時代を語るー」  第3分科会(個人の記憶/ナショナルな記憶)

班主催講演会 2006年12月18日 事務棟小会議室
講師 沈懐玉氏(台湾 中央研究院近代史研究所)
「オーラル・アーカイヴの構築、応用と難点」
 台湾の中央研究院近代史研究所は早期からオーラル・ヒストリーに取組み、1980年代になると口述資料シリーズを次々と刊行してきた。2005年12月、班メンバーの野本京子と河路由佳及び謝佳玲(本学大学院博士後期課程)は同研究所を訪問し、事業の概要について話しをうかがうとともに、口述資料叢書ほかを入手した。
 沈懐玉氏は長期にわたり、研究所において口述調査とその編集・刊行に携わってきた方である。講演の内容は、聞き取り調査にあたっての事前準備の必要性やインタビュアーの心掛けるべき諸点、収集資料の保管などに関するプラグマティックな議論から、研究所の事業の変遷(インタビュー対象の広がりや具体的研究成果など)まで多岐にわたるものであり、きわめて興味深いものであった(当日の講演内容は、本号に日本語に翻訳したものを掲載しているので参照されたい)。大学院生も参加し、活発な質議応答がおこなわれた。

第16回定例研究会 2007年1月23日 海外事情研究所
講師 佐々木孝弘(本学教授)
「ノースカロライナ大学SOHP(Southern Oral History Project)について」

3. 2006年度の調査活動(教員・大学院生)

(1) 今井昭夫
@出張先:ベトナム ベトナム国立社会学研究所ほか
期間:2006年8月28日〜9月10日
内容:ベトナムにおける「戦争の記憶」の聞取り調査
A出張先:ベトナム、ベトナム国立社会学研究所ほか
期間:2006年11月18日〜11月26日
内容:ベトナムにおける「戦争の記憶」の聞取り調査

(2) 倉石一郎
@出張先:イギリス エセックス大学データアーカイヴほか
期間:2006年8月6〜11日
内容:イギリスにおけるオーラル・アーカイヴおよびオーラル・ヒストリー研究の動向調査
A出張先:イギリス ロンドン博物館・British Library(セミナー「オーラルヒストリーとテレビジョン」)
期間:2006年11月29日〜12月3日
内容:イギリスにおけるオーラル・ヒストリー研究の動向調査

(3) 張延紅(本学大学院博士後期課程)
出張先:中国 吉林省延吉市
期間:2006年6月27日〜9月6日
内容:少数民族である朝鮮族の教育実態について学校および個人へのインタビュー調査

(4) 謝佳玲(本学大学院博士後期課程)
出張先:台湾 国家図書館・台湾大学ほか
期間:2006年8月16日〜9月4日
内容:台湾におけるオーラル・アーカイヴとオーラル・ヒストリー研究の動向調査

4. 班メンバー調査によるインタビューの成果

これまで聞取り調査を実施し、音声記録のテープおこしを行なってきた班メンバー―ネパール(石井溥・Purna R. Shakya)・タイ(河路由佳)・ベトナム(今井昭夫)・中国(張延紅)―の成果であるトランスクリプトを製本化しつつある(約70冊)。各冊とも共通の形式での調査概要を「前書き」として挿入することにした。