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2010年12月 月次レポート(説田英香 ドイツ)

12月レポート (説田英香)

派遣先:ドイツ フライブルク大学 歴史学部近現代史 Ulrich Herbert教授
派遣期間:2010年9月末~ 一年間

 12月に入り、フライブルク大学歴史学部近現代史のUlrich Herbert教授研究室の一つを割り当ててもらえることとなり、更に研究環境が整いました。12月は隔週で実施されるHerbert教授によるゼミとトルコ語の授業の傍ら、文献調査を行いました。

 派遣以前は日本で、1970年代?80年代西ドイツにおけるトルコ出身外国人労働者?移民の全体史を博士論文のテーマに設定しておりましたが、Herbert教授のアドバイスを参考に、研究対象時期を80年代に限定し直しました。また、研究対象もトルコ出身者を中心としておりましたが、とりわけ80年代から急増傾向にあった庇護申請者 (Asylbewerber) や帰還民 (Aussiedler) も比較対象として、考察対象に組み込む方向です。これらのテーマ変更も念頭に置き、引き続き文献調査を行いました。
 その中でも今月は、とりわけ「多文化文学 (Interkulturelle/Multikulturelle Literatur)」を中心に調べました。多文化文学とは、二つ以上の文化的視点から書かれた文学のことを指します。今でもメディアでは時々みられますが、少し以前までは70年代?80年代を中心に使用されていた「ガストアルバイター文学 (Gastarbeiterliteratur)」や「移民文学 (Migrantenliteratur)」の用語が使用されておりました。ドイツにおける多文化文学としては、ドイツとトルコの二つの文化?社会的視点から書かれたものが、代表的なものとして挙げられます。近年ドイツでは、とりわけ「第二世」「第三世」による自伝が相次いで出版されています。これらの自伝は、一つとして「彼ら/彼女ら」のメッセージを伝える、受け取る場として機能します。その傍ら、ステレオタイプの創出?再生産の場としても機能します。私の多文化文学の関心は、もちろんこれらを歴史研究の史料として使用することにあります。従って、今月は主に多文化文学の位置づけと役割、そして史料としていかに使用できるか(方法論)といった点に重点を置き、調査を行いました。
 私の考察対象時期である80年代には実際にどのような多文化文学が存在していたのか、また80年代に関するどのような多文化文学が存在しているのかという点までは調査することができませんでした。現在、多文化文学を専門に扱っている文芸学者 (Literaturwissenschaftler) Carmine Gino Chiellinoによる研究書を取り寄せ中ですので、手元に届き次第、引き続き調査を進めたいと思います。

参考文献:Elisabeth Beck-Gernsheim, Kopftuch, Zwangsheirat und andere Mi?verst?ndnisse (Frankfurt am Main: Suhrkamp, 2007).

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