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2010年12月 月次レポート(岩崎理恵 ロシア)

2010年12月月次報告

                                                                                                    報告者:岩崎理恵
                                                                                       派遣先:ロシア国立人文大学

12月はもっぱら、早稲田大学演劇博物館のプロジェクト「演劇研究基盤整備―舞台芸術研究文献の翻訳と公開」に提出する翻訳の仕上げに追われていた。

プロジェクトの趣旨は、英米、フランス、ドイツ、ロシアのモダニズム期の演劇論を翻訳し、インターネット上で公開していくというもので、報告者は、1908年に書かれたブロークの評論「ヘンリック?イプセン」を担当した。テキストと注釈は、ちょうど11月に発刊されたアカデミー版ブローク全集の第8巻に収められたものを参照したが、解説を執筆していたのが指導教授のマゴメードワ先生だったため、ご好意で印刷に回す前の原稿を参照させていただき、早めに作業を始めることができた。20日に提出した翻訳の第一稿は、プロジェクト会議の席で検討されるとのことで、1月中には修正稿に取り掛かることになる。

そのほか、2月に行う予定の報告の要旨をまとめるため、ロシア語の添削をお願いしている家庭教師のオリンピアーダ先生のレッスンを受けに行った。また、先日のブローク学会で知り合った、モスクワ大学アジア?アフリカ研究所のニーナ?ファリゾワさんとのささやかな翻訳プロジェクトもスタートさせた。これまで訳し溜めてきた5百篇ほどの中から、まずは博士論文の一部として発表するつもりの作品を選び出し、ニーナさんと意見交換しながら、手を入れていくつもりである。

詩の翻訳では特に、訳語の選択が重要になる。辞書的な意味では適していると思われても、微妙なニュアンスの違いについては、ネイティブスピーカーのアドバイスに教えられることが多い。

また、議論の過程で、それぞれが作品への理解を深めることもできているのではないかと思う。願わくは「過程」だけに満足せず、共同研究の成果を形として残せるよう努力したい。

12月はイベントも多く、第一週には、中央芸術家会館(Центральный дом художника)で行われた国際ブックフェア「ノンフィクションNo.12」に出かけた。去年も参加したのだが、1年の滞在の間に、編集者や文学関係者の知り合いが少しずつ増えてきたこともあり、今年はブースに知った顔を見つけたり、学会やイベントで知り合った人とまた会ったり、といった楽しみも加わった。研究に必要な本は、街中の書店などでほとんど手に入れてしまっているのだが、ここではブースを見て回りながら、各出版社のカラーを知ることができるのと、定価より安く手に入るため、「お楽しみ」的な本を見るにはうってつけである。クリスマスや新年の贈り物として本を買っていく人も多く、私もロシア人の友人のために宮沢賢治童話集(エカテリーナ?リャボワ訳)を購入した。

このように、個人的には充実した一カ月だったが、日本でも報道されたように、12月のモスクワは治安の不安定さや、氷雨などの異常気象で混乱も見られた。来年も、安全と健康には十分留意して研究に励みたいと考えている。

 

 

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