2012年8月 月次レポート(説田英香 ドイツ)
8月レポート
説田英香
派遣先: フライブルク大学(ドイツ)
8月は文書館での史料収集を行うため、ベルリンで過ごした。今回対象となったのは、外務省の文書館 (Auswartiges Amt - Politisches Archiv)と、連邦大統領府の文書館 (Bundesprasidialamt)であった。本レポートでは、これらの文書館調査の様子と結果について報告を行う。
報告者は2?3月に行ったコブレンツ連邦文書館 (Bundesarchiv Koblenz) での調査をもとに、1982?85年の史料の閲覧申請を行っていた。結果、6月から徐々に申請していた史料の閲覧許可が下り始め、現在では申請史料のほぼ全てを閲覧できる状態となっている。それらの史料は主に連邦労働省、労働庁、内務省のものであるが、原則的にはコブレンツ連邦文書館での閲覧することとなっている。しかし、連邦大統領府の史料に限っては、連邦文書館に引き渡す事が不可能であったため、直接大統領府まで出向く必要があった。まだ公表されていない史料ということもあり、付き添いのもとでの閲覧、書き写しやメモの禁止(コピー申請は可)という条件での閲覧となった。閲覧したファイルは、1973?1986年の「外国人同市民」(Auslandischer Mitburger)の統合政策に関わるものであったが、残念ながら、直接論文に使えそうな史料を見つける事はできなかった。閲覧するファイルが非常に少なかったということもあり、連邦大統領府での作業は2時間程度で終了した。従って、8月は主に外務省文書館での作業となった。
外務省文書館への訪問は初めてであった。同ヘルベルト研究室の経験者からは、目録やデータベースが非常に使いにくいと聞いており、事前にオンラインで所蔵目録を閲覧する事も不可能であったため、少々不安を抱いての調査開始となった。訪問の手引きでも強く勧められていた通り、できる限りの事前準備として Johannes-Dieter Steinert: Migration und Politik: Westdeutschland-Europa-Ubersee 1945-1961の文献をもとに、外国人労働者政策の担当部局と所蔵番号のリストアップを行っていった。本書は、外務省の史料を本格的に使用した、外国人労働者の歴史に関する唯一の研究文献といえる。研究対象時期は1961年で終了しているものの、そこから1973年以降の外国人労働者および外国人政策を担当した部局を調べる事は容易である。このリストを元に、文書館の担当者と面談をしたのだが、本書における史料番号の引用方法が間違っていたため、結局、所蔵史料をゼロからリストアップせざるを得なくなった。事前に聞いていた通り、データベースでの検索は容易でなく、テーマに関連する史料番号に辿り着くまで、1週間程の時間を要した。今回は、外国人法、滞在許可法、労働許可、ビザ、外国人労働者の統合および外国人政策、そして国別の史料を幅広く閲覧した。しかし、国別の史料に関しては量も多かったことから、トルコと一部イタリアのものしか閲覧する事ができなかった。国別の史料には、ドイツの外国人政策や外国人労働者?その家族の実態に対する、募集国側の政府やメディアの反応等を示す史料が多く含まれていた。募集国側とのやり取りは外国人労働者および外国人政策の研究に当たって欠かせない点である。従って、これらの史料は今後も重点的に見て行きたい。連邦文書館とは異なり、外務省の文書館ではデジタルカメラでの写真撮影が許可されている。従って、関連する史料は全てデータとして直接持ち帰る事ができた。
今月をもち、報告者の2011年度短期派遣は終了となった。8月21日に3週間程、一時帰国し、9月半ばから再びフライブルクへ戻ることとなっている。一時帰国中は9月以降に向けての準備を行いたいため、文書館で収集した史料を読み込む作業は難しいが、9月半ばから本格的に研究を再会できるように、少なくともデータの整理は済ませておく計画である。
以上