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2012年3月 月次レポート(中村隆之 フランス)

短期派遣EUROPA月次報告書3月

中村隆之(東京外国語大学リサーチフェロー/フランス社会科学高等研究院)

今月は、報告者にとって2011年度短期派遣プログラムの最終月となる。このため、今月は研究だけでなく帰国準備に追われる日々となった。

研究の方面では先月同様人文書院のwebで連載をはじめた論考の第2章の執筆をおこなった。その概要は先月の報告で触れたので省略するが、本論執筆のためにフランスでこれまで地道に収集してきた資料が大変役立った。

今月の活動としては、全-世界研究所のセミナーに二度出席した。一度目はグリッサンについての研究書『エドゥアール?グリッサンとポストコロニアル理論(Edouard Glissant and Postcolonial Theory)』の著者セリア?ブリトン氏の講演である。グリッサンの専門家といえる膨大な知識を背景としながら、グリッサンの後期作品にみられるキータームや思考スタイルなどについて説得的に論じた。二度目は、グリッサンと親交のあったイタリア人の現代画家ヴァレリー?アダモ氏と、セミナーの企画を担当する哲学者フランソワ?ヌーデルマン氏の対話形式で進められた。グリッサンの反自伝的小説『全-世界』を読み解くヒントを与えるような懐古的な話が印象的だった。また、この活動と関連して、グリッサンの詩を中心に研究するパリ10大学博士課程の学生ラファエル?ロロ氏(Raphael Lauro)から、グリッサンの研究誌発刊を射程に入れた研究者ネットワークを構築したいという提案を受け、その最初の打ち合わせをおこなった。報告者の帰国後も、ネットワーク構築に向けた作業をフランスの研究者を中心に、日本をはじめ各国の研究者とともに共同で行なってゆく予定である(なおこの計画には、同プログラムでパリに滞在中の廣田氏も参加している)。

このほか、今年生誕100周年を迎えるL.-G.ダマスをめぐる催しに参加し、グアドループの作家ダニエル?マクシマン氏のダマスについての貴重な証言を聞いたり、レユニオン?クレオール語の言語学者ロベール?ショーダンソンの話を伺ったり、こちらの友人や研究者仲間に相次いで会うなど、きわめて活動的な月となった。

思えば、報告者は2010年4月からフランスに滞在し、同年8月以降から短期派遣プログラムを活用させていただいた。あわせて2年におよぶ長期滞在となったが、この間、このプログラムには格別なご支援を賜った。関係各位には心より感謝申し上げるとともに、この滞在成果を糧に帰国後も引き続き研究に励む所存であることを表明し、最後の月次報告書を終えたい。

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