2012年2月 月次レポート(蔦原亮 スペイン)
2月月次レポート
蔦原亮
マドリード自治大学
早いもので、今月半ば、本派遣も折り返しを迎えた。ここ、スペインでは晩秋のような気温の日が一月や二月でも続いていた。この報告書を執筆している二月末の本日、気温は二十度を越えており、初夏のようである。報告者は低い気温が極端に苦手で、このような年にスペインにいられたことを幸運と思っているが、その分例年に比べ、異常な量の花粉がマドリード市内を飛びまわっており、例外に漏れず、報告者も花粉に苦しめられている。なるべく花粉に研究を左右されないようにしたい。
その研究であるが、今月、一つの成果が出た。報告者の最終的な目標、つまり博士論文のテーマはスペイン語の各形式を使用するために最低限満たさなければならない条件を記述することである。今月、この大目標の達成につながる小目標を一つ達成することができた。
秋ごろから報告者はスペイン語の各形式の用例を個別に観察していた。各形式一つ一つを使用するための規則を設定するためである。この観察を通じ、報告者は所謂未来形が、ある種の条件文の帰結節において、二人称で使用されることは絶対に不可能であるという事実を発見した。そして、こうしたデータ収集と並行して「なぜ未来形は特定のタイプの帰結節内に現れることができないのか?」、「『特定のタイプの帰結節』はどのように規定されるか?」という点について考察した。仮説を設定し、インフォーマント調査を行い、仮説を反証、修正した。修正を繰り返しても、体系的に扱えない箇所や、余剰の規則を立てることでしか説明を与えられないと思われる箇所については先月の報告書にも書いたコンプルテンセ大学のGarcia Fernandez先生、および、自治大学のElena de Miguel先生の元を訪問し、ご意見と、アドバイスをいただいた。
そして今月半ば、特定の帰結節から未来形を排除している要因、ならびに、そうした帰結節の特性を特定するに至った。この二点について詳細に説明しようとすると、かなり技術的な部分に足を踏み入れねばならないので、本報告書で詳しく述べることは控え、ここで報告者の出した結論は、単に上述の疑問に対して説明を与えるだけではなく、未来形の使用を左右する条件の一端を示していること、つまり一定の説明的妥当性を有していることを述べるにとどめる。
この報告者の結論は、Elena de Miguel先生からも妥当であると認められ、先生の指導の下、今回の調査と結論を論文にまとめることとなった。今月後半、草稿を書き、先日、先生に提出した。この草稿を叩き台として、三月中に完成させたいと考えている。
今回の調査では、語彙論や意味論、生成文法的発想、コーパスの使用といった本派遣中に本腰を入れて学んだ分野の道具立て、発想が大いに役に立った。そういった意味で、この論文はスペイン派遣前半の集大成であり、論文として形になったことを幸いに思うし、報告者の自信にもなった。このことに満足せず、派遣後半はさらに貪欲に研究に取り組んで行きたいと思う。幸い、日々のコーパスや先行文献からのデータ収集から「面白い」と思われるデータを現時点で数点見つけているので、今後はこれらの分析と、さらなるデータの収集、上述の分野の理解をさらに掘り下げることに取り組もうと思う。