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2012年12月 月次レポート(近藤野里 フランス)

月次レポート2012年12月

報告者:近藤野里

 12月初旬のパリは気温が氷点下まで下がり、なかなか寒い日が続きましたが、年末にかけて徐々に暖かくなり、 快適な日々を過ごしております。
 今月は12月10日、11日に開催されたフランス現代中間音韻論(InterPhonologie du Francais Contemporain IPFC)学会に参加しました。発表こそしないものの、修士の頃から関わってきたプロジェクトの学会に参加できたことは大変嬉しい出来事でした。また、今年の学会テーマが私の博士論文のテーマに部分的に関わっていたため、興味深く発表を聞くことができました。この学会にはフランス語音韻論の研究者が数多く参加しています。特に、カナダのオタワ大学の音韻論の研究者であるMarie-Helene Cote教授の論文をここ数年何度も読んできたため、同教授に個人的にいくつか質問できたことなど、とてもよい機会に恵まれたといえます。
 先月から始めた17世紀末に書かれたRene Milleran(1962)の文法書La nouvelle grammaire francoise.の電子化を今月も引き続き行っています。400ページほどあるこの文法書の特徴は、発音されない母音字、子音字がイタリックで示されていることですが、リエゾンの研究を行うために特に語末子音字が発音されていたか、発音されていないかを知るためにとても有用な文法書であるといえます。ただし、データ化には大変時間がかかり、目標では今月中に終了する予定でありましたが、あと1ヶ月半はかかる見込みであるため、来月も継続して作業にあたるつもりでおります。
 13世紀、14世紀フランス語の子音の発音について書かれたDe Jong(2006)による博士論文(La prononciation des consonnes dans le francais de Paris aux 13eme et 14eme siecles)を通読しました。この論文は14世紀にパリ近郊で書かれた韻文、古文書における綴り字から当時の子音の発音が如何なるものであったかについて書かれた論文であり、報告者の博士論文の方法にとって大変参考になるものです。14世紀以降から、綴り字に語源的な子音字が含まれるようになった、という点が、De Jong(2006)の論文で証明されています。綴り字と発音の関係が少しずつ複雑化していく時代である14世紀末のフランス語と、現在調査を進めている17世紀のフランス語の関係を考える良い機会になったといえます。

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