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2012年11月 月次レポート(近藤野里 フランス)

月次レポート2012年11月

報告者:近藤野里

 今月はGile Vaudelinによって記述されたフランス語発音を電子化したコーパスのデータ処理を行いました。この作業がなかなか思うように進まず、かなり時間をとられたもののデータ処理が完成したため、来月以降は分析を行うことができます。いくつか気付いた点として、18世紀初頭には現代フランス語でのリエゾンの実現にかなり近いものが既に形成されていたこと、子音クラスターの発音は現代フランス語とは異なることが挙げられます。また、今月から17世紀末に書かれたRene Milleranの文法書La nouvelle grammaire francoise.の電子化を始めました。400ページほどあるこの文法書の特徴は、発音されない母音字、子音字がイタリックで示されていることですが、リエゾンの研究を行うために特に語末子音字が発音されていたか、発音されていないかを知るためにとても有用な文法書であるといえます。
 11月21日~24日にドイツのヒルデスハイムで行われる国際セミナーに参加するため、発表準備を行いました。この発表ではリエゾンの理論的分析について「リエゾン子音の位置」の問題を中心に整理することを目標としています。既に近藤(2013)で内容をまとめたものを更に考察した上で発表を行いました。パリからヒルデスハイムに行く途中でミュンヘンに立ち寄り、指導教官の川口裕司教授から紹介していただいたミュンヘン大学のElissa Pustka教授に発表についてのコメントをいただきました。Pustka教授はフランス語音韻論が専門ですが、社会言語学や幼児の言語習得についても明るいため、いくつか文献を紹介していただきました。特に、小学生の綴り字習得についての論文Sabio(2000). Les difficultes de la notion de mot : l'exemple des liaisons graphiques dans les textes d'enfants. In : LINX 42, 119-130.は子供がリエゾンをどのように綴り字へと投射するのかという点を論じる大変興味深い論文でした。国際セミナーでは、普段はあまり触れることのない専門外の発表を聞くことが多かったのですが、多分野ではどのような点が研究における問題になるのかということを知ることができたと思います。ドイツ語、フランス語、英語、イタリア語が入り交じり、それぞれが話せる言語を見つけて相互理解を深めるというのは、普段はあまりないことなので、じれったく思うこともありつつも、なかなか面白い環境を体験できました。また、既に博論及び審査を終わらせた方々、これから審査を行う方と話す機会を得たことで、私もそのステップに進めるように精進せねばと気が引き締まる思いでした。
 ヒルデスハイムからフランスに戻った2日後には、パリ第8大学の博士ゼミで研究計画の発表を行いました。その際に、導入として幼児の言語習得についての研究を行っているイタリア人の友人と共にリエゾン研究の概要の発表を行い、好評に終わりました。自身の発表は、仮説らしい仮説を未だに設定できていないため、少し詰めが甘い発表になってしまいました。現時点で手に入っているフランス語発音が記述されているコーパスのデータ処理を早く終わらせないことには分析ができないため、来月はデータ構築を終わらせることを目標とします。

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