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2012年11月 月次レポート(新谷崇 イタリア)

月次レポート 2012年11月
新谷崇
派遣先:ピサ高等師範学校(イタリア)

 11月は、ウーディネの大司教区文書館で1週間、史料調査をした。ウーディネは、イタリア北西部の町で、スロベニアの国境にも近い。ファシズム期に、この地の大司教だったジュゼッペ?ノガーラという人物に興味があった。
 1938年1月8日、ローマでカトリック聖職者たちが行進をした。さらに、この聖職者たちは、ムッソリーニが執務するヴェネツィア宮殿内に向かい、集会を開き、ファシズム政府への忠誠を誓った。参加者は、司教クラスで約70人、教区司祭クラスで約2500人にのぼった。その集会で、ウーディネ大司教であるノガーラは、イタリアの司教を代表して、ムッソリーニへの忠誠を誓う演説をする。時代は、第二次大戦開戦前夜で、まさにイタリア国内のカトリックの支持をファシズム政府が欲していた時である。ノガーラの演説はファシズム政府の期待通りのものであった。
 こうしたカトリック聖職者の体制支持の集会が組織された経緯について、2012年秋以降調べてきた。体制側の史料はすでにローマの国立中央文書館で調査済みである。一方のバチカン側の史料も、バチカン秘蔵文書館で大よそ調査済みである。ただ、重要な参加者であるノガーラの史料だけは、これまで調査できずにいた。ウーディネの大司教区文書館には、事前に電子メールで連絡をし、訪問日を報告したうえで、出かけた。幸いにも文書館のスタッフが非常に親切で、大いに助けられた。
 私が今回調べたのは、ノガーラが大司教だった時期の手紙などを集めた書類ケースである。時間が限られていたので、1930年代を中心に書類をめくった。調査の成果として、ノガーラの演説文の下書きなどが入手できた。そのほか、バチカンとのやり取りの手紙、集会の組織者たちとの電報なども手に入れた。パソコンを持ち込んで書き写したが、時間が足りなかったので複写を申請した。ピサに戻った後、複写料金を銀行振り込みし、電子ファイルで文書を受け取った。12月以降、この史料を分析し、学術論文の形にまとめる予定である。

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