2020年度世界史セミナーのお知らせ 終了しました!
東京外国語大学 夏期世界史セミナー ―世界史の最前線XII―
(海外事情研究所主催?高大連携事業)
2020年7月29日(水)?30日(木)に、オンライン?セミナー(zoomウェブ会議)として開催致します。以下の申し込みフォームよりお申し込み頂きました方に、後日、メールにてzoomウェブ会議のURLをお知らせします。
お申し込みは、 こちらのフォーム からお願い致します
プログラム(※今後の調整によって、多少、変更になる可能性もあります。)
7月29日(水)
9:20 開会の挨拶
9:30~10:45 講義1 カメルーン英語圏の帰属をめぐる紛争の歴史(坂井真紀子)
10:50~12:05 講義2 『和解』をひらく―オーストラリア先住民と日本人(山内由理子)
12:05~13:30 昼休み
13:30~14:45 講義3 ゾウの涙―ダーウィンと生体解剖論争(伊東剛史)
14:50~16:05 講義4 1187年の世界情勢と〈十字軍〉の再定位(千葉敏之)
7月30日(木)
09:30~10:45 講義5 歴史はトランプ米政権のシリア政策をどう評価するか(青山弘之)
10:50~12:05 講義6 異宗派障壁論を超えて―中央アジア近代史の地平から(木村暁)
12:05~13:30 昼休み
13:30~14:45 講義7 ナショナリズムをどのように記述するか―ハプスブルク帝国史を例として(篠原琢)
14:50~16:05 講義8 新教育課程と大学入試―ラテンアメリカ史の視点から考える(鈴木茂)
プログラム?講義概要のPDF版はこちらです
参加条件
日程 2020年7月29日(水)30日(木)(2日間)
オンライン?セミナー(zoomウェブ会議)として開催
対象
1.高等学校?予備校の世界史担当教員
2.世界史教育?研究に携わる出版関係者
3.教員免許取得を目指す本学の大学院生
(授業「世界史教育プログラム」の一環)
受付締切 2020年7月24日(金)
受講料 無料
応募方法
下記URLよりフォームにしたがってお申し込み(2020年7月24日(金)まで)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdoqNoMhgiEUXAOlzwNDFOx3PhDHhn8lmRe0mHyeBtjK7oKUA/viewform
講義概要
坂井真紀子:カメルーン英語圏の帰属をめぐる紛争の歴史
アフリカ中部のカメルーン共和国は、その歴史的経緯から10州のうち8州がフランス語圏、2州(北西部州、南西部州)が英語圏という複雑なバイリンガルの統治形態を有している。近年、この英語圏の2州において分離独立派の反政府運動が激化していたが、2018年後半には一般市民を巻き込む大規模な紛争に発展し現在に至っている。この問題は、多くのアフリカ諸国が抱える多様な社会の現実と国民国家という枠組みの相克を改めて浮き彫りにした。本発表では、植民地統治時代から現代までのカメルーンと近隣諸国、旧宗主国の関係を軸に、歴史的な視点から分析を試みたい。
山内由理子:『和解』をひらく―オーストラリア先住民と日本人
イギリスによる植民地化により形成された「入植社会国家」オーストラリアは、白豪主義の歴史で知られる一方、戦前より日本人を含むアジア系移民が流入し真珠貝採取業などに関わってきた。彼らは先住民と共に主流社会からの差別に苦しむ一方、先住民の資源の収奪の上に成立してきた産業構造の一環として働いた。1990年代頃よりオーストラリアでは先住民との「和解」を目指す運動が出てくるが、本講義では、テッサ?モーリス=スズキの「連累の責任」など「和解」に関するコンセプトを軸に、アジア人移民とオーストラリア先住民のアンビバレントな接触の事例を紹介しつつ、ミクロとマクロの側面から「和解」をグローバルに開く可能性を考えてみたい。
伊東剛史:ゾウの涙―ダーウィンと生体解剖論争
世界史では、チャールズ?ダーウィンといえば「進化論」、『種の起源』、「自然選択説」等がキーワードになっている。今回のトークでは、『種の起源』出版以降に焦点をあて、人や動物の感情についてのダーウィンの研究を紹介したい。なぜ、ダーウィンはゾウが涙を流すか否かに深い関心を抱いたのかという研究上の問題を、生体解剖論争という当時の生理学研究を取り巻く問題とリンクさせながら考察する。近年、英語圏を中心にアニマル?ターン(動物論的転回)の影響を受けた歴史研究が盛んだが、そうした動向を紹介する一助になればと思う。
千葉敏之:1187年の世界情勢と〈十字軍〉の再定位
世界史のなかで独立したトピックとして特別扱いされてきた「十字軍」。この運動を、同時代の世界大の歴史展開のなかに位置づけ直すと、どのように見えてくるのだろうか。本講義では、編著『歴史の転換期4
1187年巨大信仰圏の出現』(山川出版社 2019年)での成果を踏まえつつ、「1187年の地球大の歴史」を俯瞰する観点から、1187年の聖地エルサレムでの事件を再評価する。とくに、最初の東方出征
が「十字軍」へと変質していく過程、ナンバリングされた十字軍の間を縫うように展開した「小十字軍」の位置づけ、聖地国家運営の構造などについて考察したい。
青山弘之:歴史はトランプ米政権のシリア政策をどう評価するか
ドナルド?トランプ米政権の任期終了が近づいている。シリアは、このトランプ政権が最初に軍事作戦の標的とした国であり、その突飛な政策は世界の注目を浴びてきた。2017年4月と2018年4月の化学兵器利用疑惑を口実としたシリア政府支配地域へのミサイル攻撃、2019年3月、シリア領ゴラン高原へのイスラエルの主権承認、2018年末以降の繰り返されたシリア駐留米軍の撤退とその撤回、2019年10月のシリア北西部への爆撃によるイスラーム国のアブー?バクル?バグダーディー指導者の暗殺などである。本報告は、こうしたトランプ政権による一連の介入政策が、シリア情勢にいかなる変化をもたらし、それが未来の世界史においてどう記録されるのかを考える。
木村暁:異宗派障壁論を超えて―中央アジア近代史の地平から
この報告では、中央アジアにおける宗派的マイノリティとしてのシーア派イラン人がロシア帝国保護統治期のブハラで存在感と影響力を増し、それが秩序の動揺をも惹起した事実に注目し、近代性、共時性、超域性といった観点からその脈絡と意味を検討する。ここにみる中央アジア近代史上の一見特異な事象は、異宗派の対立/共生というある種普遍的な歴史問題の一例として、これを比較史研究の俎上にのせることもできるだろう。同時に、これを世界史教育とどのように結節させられるのかについても考えてみたい。
篠原琢:ナショナリズムをどのように記述するか―ハプスブルク帝国史を例として
ハプスブルク帝国史研究、特にハプスブルク帝国の領域における「国民形成」、「ナショナリズム」の研究は2010年代以降、非常に進展し、帝国社会のイメージは大きくかわった。帝国の「長い19世紀」は、「諸国民(ネイション)」の社会がダイナミックに形成されるための豊かな条件を用意したというのである。さらに「国民」は、社会的に存在するある種の「グループ」ではなく、状況と文脈に依存しながらその時々に起こる「できごと」である、というアプローチも生まれてきた。しかし、高校世界史の教科書の基本的な語りは、「民族解放史観」に強く拘束されているように思われる。公民教育の一環としての歴史教育と、歴史研究をどのように結びつけるのか、ハプスブルク帝国における国民形成を例に考える。
鈴木茂:新教育課程と大学入試―ラテンアメリカ史の視点から考える
ラテンアメリカ史の場合、高校世界史では従来から限られた事項しか取り上げられてこなかった。2022年度から施行される高校の新教育課程においては、歴史系科目の再編によって新たに設けられる「世界史探究」は3単位科目とされており、現行課程の「世界史B」に比べて1単位減となるため、減らされこそすれ、増えることはないであろう。しかし、ラテンアメリカは、15世紀末、スペイン?ポルトガル人が到来して以降、大西洋交易圏形成のきっかけとなり、近代世界の出発点となったという意味で、世界史認識には不可欠の地域である。一方、もう一つの新科目「歴史総合」との関連で見れば、ラテンアメリカも19世紀後半以降の世界の歴史を特徴付ける、大規模な人の移動の重要な舞台となり、とりわけブラジルやペルーは、ハワイ?米国と並んで多数の日本人移民の受け入れ先として、日本史との接続が可能である。これらのことから、高校歴史教育におけるラテンアメリカの位置づけには、比較の観点からも意味のある地域内部での出来事と並んで、地域間を結び、グローバルなネットワーク形成に果たす役割を考慮すべきであろう。この報告では、主に現行の「世界史B」教科書の記述をもとに、大学入試での出題を意識しつつ、高校歴史教育におけるラテンアメリカの位置づけについて検討してみたい。
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