現代アフリカ地域研究センターでは、日本アフリカ学会関東支部との共催で第35回ASCセミナーを開催します。今回、お招きするのはロンドン大学アジア?アフリカ研究学院のポール?ギフォード名誉教授です。
ある出来事が精霊の存在やその力を通じて人々に理解される。このことはアフリカ諸社会において特別珍しいことではありません。本セミナーでは、科学技術の発展を通じて形成された近代西洋的な認識の仕方との比較を通じて、このようなアフリカ各地に見られる宗教的な事象について考察します(本セミナーは、2019年5月9日に刊行されたギフォード博士の著書『The Plight of Western Religion: The Eclipse of the Other-Worldly』(C Hurst & Co Publishers Ltd)の内容に沿って行われます)。
◆講演者:ポール?ギフォード博士
(ロンドン大学アジア?アフリカ研究学院?名誉教授)
◆演 題:African Religion in Comparison with Western
◆要 旨:In many cultures, the ordinary, natural and immediate way of understanding and experiencing reality has been in terms of otherworldly or spiritual forces. This is generally the case in Africa. According to this understanding, reality is a unified whole, boundaries are fluid and permeable between the natural and the supernatural, between the human and spirit world, between humans and animals, between human and nature. Spiritual forces pervade the universe. These spirits dwell in rocks, rivers, trees, animals and objects. Indeed, nothing is purely matter, since spirits infuse everything. Causality is to be discerned primarily in this spiritual realm, though natural causality is not entirely disregarded. Spirits may be manipulated by others, particularly to inflict evil. 'Healer-diviners' exist to identify and control these pervasive spiritual forces. Religion consists largely in protecting oneself from malign spiritual powers. The absence of destructive spirits forms the idea of the good life. However, in the West a cognitive shift has taken place through the rise of science and its subsequent technological application. This new consciousness has not disproved the existence of spiritual forces, but it has led to the peripheralisation of this 'spiritual' way of thinking, and thus to the 'secularization' of Western societies.
世界のさまざまな文化で、人々は、精霊や別次元の存在の力によって、日々の現実を経験?理解している。そして、これはアフリカで一般的にみられることでもある。ここで、人々が経験する現実とは一つの統合体であり、その内では自然/超自然、人間/動物、人間世界/霊的世界、といったさまざまな境界が流動的に、互いに浸透可能なものとして存在している。そして精霊の力とは、その宇宙観全体を貫くものとなっている。精霊たちは河川や木々に住まいながら、人々の行う万事に影響を与えている。それゆえ、人々の生活で生じるさまざまな因果関係は、自然(科学)というよりも、むしろ精霊の領域におけるものである。また精霊は邪悪な目的のために操作されたりもする。そして、それを特定し、それに対処するのが「宗教的治療者」の存在である。宗教は、このような邪悪なものから自らを守る術を与えるものであり、人々の平穏な日常とは、邪悪な精霊の不在によって形成されるものとなっている。
他方で、西洋においては、科学技術の発展のなかで新たな認識体系が立ち現われてきた。この認識は、精霊の存在を一概に否定するものではないものの、「精霊による」現実理解の方法を周縁化すると同時に、西洋自身の世俗化を導くものとなっている。
◆日時:2019年6月7日(金) 17:40~19:10
◆場所:東京外国語大学研究講義棟322教室
◆使用言語:英語
◆参加費:無料
◆事前申し込み:不要(どなたでも参加できます)
◆共催:東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター、日本アフリカ学会関東支部