2017年11月16~18日にシカゴで開催された全米アフリカ学会(African Studies Association)第60回年次大会に、センター長の武内が参加しました。今回は、科学研究費(基盤研究S)「『アフリカ潜在力』と現代世界の困難の克服:人類の未来を展望する総合的地域研究」(代表者 松田素二京都大学教授)の支援をいただき、大会でパネルを組むことができました。アジア経済研究所で実施した共同研究会の成果をもとにして、"Land Reform, Rural Changes, and Political Power in Africa"と題したパネルを組みました。
Chair
Scott Straus (University of Wisconsin-Madison)
Discussant
Sara Berry (Johns Hopkins University)
Panelist
Shuichi Oyama (Kyoto University) "Autonomy and authority of chiefs regarding administration of customary land in Zambia"
Teshome Emana (Addis Ababa University) "The Political Economy of Land and Socio-economic Dynamics in a Rural-Urban Interface in Ethiopia"
Horman Chitonge (University of Cape Town) "Land Restitution in South Africa Re-Loaded: What Happens after the Land is Restored?"
Shinichi Takeuchi (Tokyo University of Foreign Studies / IDE-JETRO) "African Enclosure in the Context of Land Law Reforms"
(パネリストの皆さん。左から、テショメ?イマナさん(アジスアベバ大学)、大山修一さん(京都大学)、私、ホーマン?チトンゲさん(ケープタウン大学)、そしてコメンテーターを務めてくださったサラ?ベリーさん(ジョンズ?ホプキンス大学))
全米アフリカ学会の年次大会は、数百の分科会が開催される巨大な学術大会です(プログラム)。私たちはその中で、土地法改革、伝統的権威、大規模土地取引といった論点を扱うパネルを組みましたが、似た内容のパネルは他にも散見され、この問題が世界的な関心を集めていることが確認できました。私たちのパネルは、アフリカの土地問題に関する優れた研究で知られるロンドン?スクール?オブ?エコノミクスのキャサリン?ブーン(Catherine Boone)教授が出席するなど盛況で、多くの刺激的なコメントを受けることができました。
案内が立ち並ぶ会場入り口
(様々な出版社がブースを出しています)
学会終了後の11月22日、私たちのパネルでチェアを務めてくれたスコット?ストラウス教授の勧めで、彼が務めるウィスコンシン大学マディソン校を訪ねました。訪問の主たる目的は、この大学にあるAfrican Studies Programの活動についてヒアリングを行うことです。プログラム長のNeil Kodesh准教授(歴史学)と副プログラム長のAleia Ingulli McCord准教授(環境?エネルギー学)に話を聞くことができました。このプログラムには全学の学部(college)?学科(department)からアフリカに関わる研究者が集まっており、その数は教授、准教授クラスで76人という大規模なものです。プログラムでは、アフリカに関するセミナーを開催したり、アウトリーチ活動(小学校、中学?高校での授業)などを行っているとのことでした。毎週水曜日のお昼時に開かれるアフリカセミナーは、1970年代から40年以上にわたって続けられているそうです。このプログラムは、1970年代にJan Vansina, Philip Curtin, Aristide Zolbergといった当時ウィスコンシン大学にいた著名なアフリカ研究者が学問分野を越えて連携し、立ち上げたものです。研究?教育の基本的枠組みは学科に置かれていますが、こうしたプログラムが存在することで、アフリカに関心を持つ学部生にさらなる専門への入り口を示すことができるのだろうと思いました。
(African Studies Programが入っているIngraham Hall)
午後から、スコット?ストラウス教授の学部生向け授業を見学させてもらいました。9月から12月の学期に約30回開催される"The Comparative Study of Genocide"と題された授業で、学部3-4年を対象としたものでした。ちょうど教授が専門とするルワンダのジェノサイドを取り上げた回で、40~50人の学生を対象として約70分のドキュメンタリーを見せ、その後質疑応答を行っていました。ドキュメンタリーは国連や米国の関与を批判的に取り上げた内容でしたが、ショッキングな映像に対して活発に質問が出されていました。
(政治学科の建物)
ストラウス教授のはからいで、アポなしであったにもかかわらず、ウィスコンシン大学関係の研究者にお目にかかることができました。なかでも、Michael Schatzberg教授、Crawford Young名誉教授とお話しできたのは、本当に嬉しいことでした。お二人とも、コンゴの勉強を続けてきた私にとっては憧れの存在です。ストラウス教授に心から感謝したマディソン訪問でした。
(スコット?ストラウス教授)