外務省専門職員、在外研修中のイギリスから?山本実和さんインタビュー
世界にはばたく卒業生
在学中の英国留学を機に、日本の文化や制度を説明することにやりがいを感じ、外交の世界に興味を持った本学卒業生の山本 実和(やまもと みわ)さん。外務省専門職員として英国で在外研修中の山本さんにオンラインでインタビューをしました。
インタビュー担当:言語文化学部 ポーランド語4年 山口 紗和(やまぐち さわ)さん(広報マネジメント?オフィス学生取材班)
世界への関心
―――お仕事のことを伺う前に、学生時代のことをお伺いできたらと思います。まずは、本学の国際社会学部北西ヨーロッパ地域を選んだ理由を教えてください。
子供のころ、親の仕事の都合でオーストラリアや台湾に住んだことがあったので、何となく将来は、世界と関わりが持てる仕事に就きたいなと漠然と思っていました。興味のあった国際関係や国際協力分野の学問が学べて、英語などの語学力の基礎が固められる、さらに留学プログラムが充実しているという理由で、東京外国語大学(以下「東京外大」)の国際社会学部を志望しました。
北西ヨーロッパ地域を選んだのは、イギリスの映画や音楽が好きで、イギリスへの関心があったからです。イギリスのことをしっかり学び、一度イギリスに留学してみたいなという思いがありました。
―――ゼミなど、在学中は特にどのようなことに興味を持って学びを深めたのでしょうか。
1年次から世界教養プログラムで、自分の興味のあるさまざまな授業を幅広く履修しました。将来は国際社会で仕事がしたいと思っていたので、国際法の知識があれば役に立つのではないかと思い、松隈潤教授の国際法ゼミに所属することにしました。サイバーセキュリティの研究やジェノサイド研究など、ゼミ生の興味は幅広いものでした。私は、日本における移民児童の教育権の保障をテーマに卒業論文を書きました。
―――サークル活動などはいかがでしょうか。
空手道部に所属していました。大学に入ってから空手を始めたので、私にとっては新しいチャレンジでした。1年次から留学前の3年次まで2年半、自分なりに頑張りましたしやりきったという感じです。壁にぶつかったときに人を頼ったり、逆に人が困っているときに助けたり、そういう人間的な成長もできたと思っています。親しい仲間にも出会えましたし、大学時代の貴重な経験です。部員がいろいろな国に渡航しているので、ちょっとした会話で、マレー語の挨拶やアラビア語の「ありがとう」などが飛び交っていて、多様な雰囲気に満ちていたことも、東京外大ならではだと思います。
―――山本さんも在学中に留学をされたのでしょうか。
3年次だった2019年の夏から、イギリスのエセックス大学へ長期派遣留学しました。1年間の予定でしたが、中国体彩网手机版感染症のパンデミックが起き、少し早めて7か月で帰国しました。エセックス大学では、主に国際人権法などの人権分野を勉強しました。エセックス大学は人権分野に強いことで有名です。東京外大の学術交流協定校であったことは、とても運が良かったです。世界中からいろいろなバックグランドの留学生が学びにきていて、中には自分自身が難民や移民という学生もいました。そのこともあって人権分野の議論もより広範で、皆、自分の意見をしっかり持っていて刺激されました。このことが、外務省の専門職を目指そうと思った大きなきっかけです。
留学で感じた焦燥感、外交の世界へ
―――エセックス大学での留学経験が外務省専門職を志す大きなきっかけになったとおっしゃっていましたが、具体的に教えていただけますか。
エセックス大学の人権分野の授業には、さまざまな国から人権分野を学びにきている留学生がいて、それぞれの経験を持ち寄って「国際組織は今後このように動くべきなのではないか」などといった議論がされていました。日本国内だけでは気づかなかった視点がたくさん組み込まれていて、同じトピックであっても多面的な議論がされていることに驚き、日本はこのままだと国際社会においていかれてしまうのではないか、という焦燥感を抱きました。
また、留学中は日本の文化について聞かれたり説明したりする機会がたくさんあって、普段当たり前に感じていたことも、いざそのことを知らない相手に自分の言葉で伝えようとすると、そういえばその文化はどこにルーツがあるのだろうか、どのように説明したらいいのだろう、と考えながら話す機会が多々ありました。相手にとっての日本のイメージが自分の説明で変わるかもしれないと思うと、責任感を感じつつもおもしろいなと思いました。そういった体験を通じて外交の世界に興味を持つようになりました。
―――現在、イギリスで研修中とのことですが、どのような研修なのでしょうか。
在外研修といって、担当言語を母国語とする国へ留学する制度です。私の場合は、英語を担当言語としているので、昨年の夏からイギリスで勉強をしています。外務省に入省すると、最初に、基本的な国際情勢やビジネスマナーなどの研修を2か月ほど受け、その後1年間、霞ヶ関の本省で勤務します。再び3か月間の集中研修を受けて、約2年間の在外研修に出発します。私は今、バース大学という大学で、ジェンダーと政治学の分野を専攻しています。人との交流を深めながら、留学先の文化や政治、全般的な教養を学んでいきます。学生に戻ったような感覚で、毎日授業に出て、課題を提出して、というような生活を送っています。
―――外務省本省ではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
私は半年ずつ2つの課室に所属しました。はじめの半年間は、「国際保健戦略官室」という部署で国際保健の業務に当たりました。具体的には、コロナ禍が収束した後、国際社会がどのようにして次のパンデミックを防ぐか、といったことに焦点を当てた仕事をしていました。世界保健機関(WHO)で新しくパンデミック対応についての条約が作られているのですが、その条約交渉の土台の部分を担当していました。後半の半年間は、「女性参画推進室」というジェンダーを担当している部署で勤務しました。
―――印象に残っている出来事などはありますか。
2022年12月に、世界のさまざまな地域からジェンダー分野のトップの方々をお招きして、「国際女性会議WAW!(ワウ!)」が開催されました。その際、担当部署で勤務をしていたのですが、先進的な議論をたくさん聞けて、さらにそれを形にしていく工程に携われたので、貴重な経験でした。そのほか、G7広島サミット応援業務で、イギリス代表団と在京イギリス大使館との連絡調整を担当したことも印象に残っています。
―――今後のキャリアについて、目標などがあれば教えてください。
この研修の後すぐに在外公館に配属されることになります。まだどこの国に配属されるかはわかりませんが、配属された国の方々の意見を幅広く聞き取り、交流関係を深めたいと考えています。そのために、十分なコミュニケーションができるように語学力を伸ばして、相手の言っていることを汲み取れる幅広い知識を身につけていきたいです。英語の専門職は人数が多いので、専門性を身につけていくことも求められています。ジェンダーや人権などの分野の専門家になれたらなと思っていますが、今後の業務の中で変わっていくかもしれません。いずれにしても、自分の強みと言えるような専門分野を見つけたいと思っています。
最後に?東京外大の魅力、メッセージ
―――東京外大の魅力はどんなところだと思いますか。
東京外大は、大きな大学ではないですが、学べる分野が多岐に渡っていると思います。また、人数もそれほど多くない大学ながらも、友達、先輩後輩、教員がそれぞれ、さまざまな国に行った経験があり、それを日本に持ち帰って共有できるということが東京外大でいい経験だったと思っています。留学だけでなく国内のプログラムに参加するなどアクティブな人がとても多いので、自分一人では経験できないことを周りの人と日常的に共有でき、キャンパスの中でも世界が広がっていきます。それが東京外大の魅力なのではないかと思います。
―――受験生や外務省専門職員を志す学生にメッセージがあればお願いします。
東京外大生の語学力や豊かな経験は、外務省専門職員として求められている人物像だと思いますし、東京外大での学びは外務省の仕事ととても親和性が高いのではないかと思います。私もいろいろと迷走してきたのですが、自分の興味や関心のどこがその後のキャリアにつながるかわからないので、最初から何かに固執せずに、いろいろなことに興味関心を持って学んでいくことが重要なのではないかと思います。
―――本日は、貴重なお話をありがとうございました。
インタビュー後記
1つの物事に固執せず、ジェンダーや人権の問題などさまざまな分野に目を向け、多角的な視点から学びを深めてこられた山本さんの姿勢に感銘を受けました。また、そうした学生時代の学びを活かして、実際に国際社会の発展に貢献できるような職に就かれたとあって、これからどのようにご活躍されることになるんだろうと、わくわくしながらお話を聞かせていただきました。私自身、何事においてもまずは挑戦してみようという気持ちを大切にし、積極的に取り組んでいきたいです。
取材担当:山口紗和(言語文化学部ポーランド語専攻4年)
本記事は、学生取材班によるインタビューに基づき、広報マネジメント?オフィスが作成しました。
ご意見は、広報マネジメント?オフィス(koho@tufs.ac.jp)にお寄せください。