演習:考古学研究 月5限、小川英文


演習の授業は、基本的にみなさんの発表を中心に進めて行きます。つまりみなさんが材料を提供してくれないと授業が成立しません。ここは、文章によって問題を深めて行く表現者としての実践の場です。同時に発表者以外のひとたちも、単に事実関係だけの質問や意見ではなく、発表者、提題者が抱える問題を共に考え、作品としての論文がまとまっていくようなアドバイスを与えることが責務として課せられます。すなわち、演習の場にいる全員が、問題はそれぞれ違っていても、共に学び、論文を完成して行くプロセスを共有する、問題への批判的視野を共有するという、学びの相互性を確保して行きたいと考えています。

この演習に集まったみなさんの問題を中心に議論して行きますので、実は考古学だけをテーマとしたゼミではありません。

この授業も、1年次から学生のみなさんに開放していますので、先輩がどのように格闘しているか、はやくから体験しておきましょう。

4限目の卒論演習から引き続いてこの授業を行っています。院生の授業とも重なっています。

授業の目標:
 この授業では、演習形式で発表、購読、質疑応答を行うとともに、3年生以降のコース別のテーマに対する取り組み方の基本的姿勢を形成することを目標としています。各自のテーマに則した問題設定を行い、自分で調べ、まとめて、発表し、議論して、文章で表現することを身につけることが、この演習の目標です。

 授業は、以下のように、各自の疑問を解消しながら進めて行こうと考えています。

1.  地域と自分との関わりを、どのような問題について設定し、その問題についての疑問や関心をどのように深化させていくか。

2. そしてそれらの疑問や関心について、いったいどのように情報や文献を集めればよいのか。

3.  さらに集めた情報や文献を自分なりにまとめるためには、それらの情報や文献をどのように読み、問題をさらに掘下げたり、広がりをもたせていくのか。

4.  そして最終的にそれらの情報を自分なりにまとめて、レポートや論文のかたちに書いて表現し、主張すればいいのか。

論文作製のための問題の整理のしかたから文章の書き方、そして各人のテーマに則した文献の探し方、問題への視角の設定、分析方法の設定、さらに目次の立て方、実際の執筆までのアドバイスを行います。

世間の風評に惑わされず、常識の犠牲者にならないように、自分で情報を集めて、自分で判断でき、ちゃんと自分の主張がある文章を書けるためにはどうしたらいいか?これは小川自身の問題でもあります。文章の書き方の本を読みながら、わたしの経験を交えながら、みなさんと考えて行きたいと思います。

 

授業のスケジュール:

 4〜7月はわたしが問題としてきた、石器研究、民族考古学、狩猟採集社会研究について論じながら、最近の問題点について力点をおいた講義を行う。その後、6月からはこれらの問題について書かれた論文を各自に読んできてもらい、発表・討議する。

 夏休み前には、各自のレポートのテーマについてアドバイスを行う。レポートの提出は10月の最初の授業時。

 10〜2月は、引き続き東南アジア考古学・民族学についての論文を読みながら、新たな問題点を考察する。1月からは、各自のレポート作製についてアドバイスする。

 1年間にわたって考察するテーマは、東南アジア考古学とナショナリズム、世界システム、ディアスポラ、サバルタン、オリエンタリズムなどである。

 

論文作製指導:

4月最初に、みなさんの発表テーマを聞きます。そして発表予定日を決めて、次の週から各自の発表を始めます。
その発表に対して演習出席者全員で議論して行きます。発表者は簡単なレジュメを作ってきてください。

レジュメやレポートの形式については、論文リテラシーのページからダウンロードしてください。

 夏休み前の授業では2週にわたって、夏休み中に書くレポートのテーマとその研究の内容について、ひとりづつ発表してもらいます(ひとり約15分)。それぞれのテーマと分析の方法、そしてデータ収集の方法と文献目録、さらにレポートの構成(目次)について発表してください。このレポートは夏休み明けに提出してもらい、成績の良いものを授業中に公表します。

 10月〜12月にも前期と同様に、与えられた論文とテーマについて、グループごとに購読と発表をこなし、冬休み中にレポートを課します。

 1月〜2月には、4年次のより具体的な研究テーマの設定を各人が行い、各自発表してもらい、それについて全体で討議します。そのテーマを春休み中にレポートにまとめ、4年生になってからの研究課題とし、卒論へと繋がるように発展させる。

3月下旬には、3年生に卒論のテーマと目次、文献目録を提示してもらって、内容について発表してもらう、発表会を開きますので、準備をしてください。


成績評価のしかた:
年数回のレポート提出、発表に対する質疑応答や討議での積極度によって総合的に、A〜Dまでの評価を下します。

評価基準:出席50%、レポートなどの課題提出20%、授業への貢献度30%、

受講上の注意:

受講生に望むこと:1年間、かなりきつい授業ですが、みなさんの大学での生活のあり方を決定づける授業ですので、元気に、積極的に取り組んでください。


 

◎講義で使用する本:

『留学生・大学生のための論文ワークブック』くろしお出版 を使用します。しかしワークブックですの毎週、各自が自宅でこなしてきたタスクを提出してもらい、授業中には簡単に説明したり、質問を受ける程度で進めていきます。夏休前に終わらせてしまう予定です。その他、「書く」ための本をいくつか挙げます。授業で読みたいと思います。本屋でのぞいて買っておいてください。この他にもそのつど、適宜、文献を紹介していきます。

 

参考文献:

古郡延治 1997     『論文・レポートのまとめ方』ちくま新書 660円

清水幾太郎 1959     『論文の書き方』岩波新書 630円

辰濃和男1994     『文章の書き方』岩波新書 620円

本多勝一 『ルポルタージュの方法』

◎お願い

卒論や指導教官制を希望し、講義・演習・卒論演習を受講する方へボランティアのお願いです。受講者への便宜を計るため、小川との連絡や資料コピーなどの仕事をボランティアで働いてくれる方を募集します。各授業数名でいいですから申し出てください。よろしくお願いします。

 

小川研究室連絡方法:

e-mail: kidlat@tufs.ac.jp
授業のおしらせ: http://mixi.jp/home.pl

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