講義:東南アジア考古学 木5限、小川英文


この授業は実際には少人数ですので、講義形式をやめて、演習形式で進めています。そのためこの授業は、基本的にみなさんの発表を中心に進めて行きます。つまりみなさんが材料を提供してくれないと授業が成立しません。ここは、文 章によって問題を深めて行く表現者としての実践の場です。同時に発表者以外のひとたちも、単に事実関係だけの質問や意見ではなく、発表者、提題者が抱える 問題を共に考え、作品としての論文がまとまっていくようなアドバイスを与えることが責務として課せられます。すなわち、演習の場にいる全員が、問題はそれ ぞれ違っていても、共に学び、論文を完成して行くプロセスを共有する、問題への批判的視野を共有するという、学びの相互性を確保して行きたいと考えていま す。

授業の目標:
この授業では、東南アジア考古学の講義とともに、3年生以降のコース別のテーマに対する取り組み方の基本的姿勢を形成することを目標とする。東南アジア考古学についての講義を聴き、発表やレポートなどのタスクを果たすと同時に、各自のコースのテーマに則した問題設定を行い、自分で調べ、自分でまとめて、文章で表現することを身につけることを目標とする。

 授業は、以下のような疑問を解消しながら進んで行こうと考えています。

1.フィリピンと自分との関わりを、どのような問題について設定し、その問題についての疑問や関心をどのように膨らませるか。

2.そしてそれらの疑問や関心について、いったいどのように情報や文献を集めればよいのか。

3.さらに集めた情報や文献を自分なりにまとめるためには、それらの情報や文献をどのように読み、問題をさらに掘下げたり、広がりをもたせていくのか。

4.そして最終的にそれらの情報を自分なりにまとめて、レポートや論文のかたちに書いて表現し、主張すればいいのか。

 論文作製のための問題の整理のしかたから文章の書き方、そして各人のテーマに則した文献の探し方、問題への視角の設定、分析方法の設定、さらに目次の立て方、実際の執筆までのアドバイスを行います。

 世間の風評に惑わされず、常識の犠牲者にならないように、自分で情報を集めて、自分で判断でき、ちゃんと自分の主張がある文章を書けるためにはどうしたらいいか?これは小川自身の問題でもあります。文章の書き方の本を読みながら、わたしの経験を交えながら、みなさんと考えて行きたいと思います。

 

授業のスケジュール:

東南アジア考古学:

 4〜7月は東南アジアの自然環境、生業について概観すると同時に、わたしが問題としてきた、石器研究、民族考古学、狩猟採集社会研究について論じる。夏休み前には、各自のレポートのテーマについてアドバイスを行う。レポートの提出は7月の最後の授業時。

 10〜12月は、東南アジア考古学・民族学についての論文を読みながら、新たな問題点を考察する。

 1〜2月は、同様に論文購読を行うと同時に、各自のレポート作製についてアドバイスする。レポート提出は2月はじめ。

 

論文作製指導:

 4月〜7月までは、フィリピンの問題について論じた文献や、テーマの選び方、問題の設定のしかたや文章の書き方についての本を紹介したり、現在フィリピンについてどのような研究分野があるかなどについて講義します。毎回の授業の冒頭では論文作製のためのワークブックを教材に使います。ただしワークブックは、授業では、簡単にわたしが説明するだけで、自宅で自学自習してきてください。毎回、授業の始めにワークブックの練習問題を宿題としてやってきたか調べます。このタスクの達成度は直接成績に反映します。

 つぎに図書館での本の探し方、インターネットでの文献検索方法や情報の集め方について実際に体験しながら講義します。AV実習室のコンピュータを使いながら情報の集め方について講義します。

 この間にみなさんは、それぞれのフィリピンについての関心や疑問を研究テーマとして設定します。そして自分でその問題について論じている参考文献を集め、そのリストを作っていきます。

 つぎに、わたしが与えた論文の購読やテーマについて調べ、発表してもらいます。その際、みなさんを5つのワーキンググループに分け、グループは互いに競い合って、購読と発表を行い、その成績によってグループの再編を行います。読んできてもらう論文はフィリピンに関するもの、現在の学問の方向性を決定づけているグランドセオリーや新しいテーマについてのものを、わたしが選んできます。具体的には、世界システム、ジェンダー、ナショナリズムなどです。夏休みまではこのようにして、研究の基本的な姿勢と技術について、みなさんの体験を通じて講義します。 

 夏休み前の授業では2週にわたって、夏休み中に書くレポートのテーマとその研究の内容について、ひとりづつ発表してもらいます(ひとり約15分)。それぞれのテーマと分析の方法、そしてデータ収集の方法と文献目録、さらにレポートの構成(目次)について発表してください。このレポートは夏休み明けに提出してもらい、成績の良いものを授業中に公表します。

 10月〜12月にも前期と同様に、与えられた論文とテーマについて、グループごとに購読と発表をこなし、冬休み中にレポートを課します。

 1月〜2月には、4年次のより具体的な研究テーマの設定を各人が行い、各自発表してもらい、それについて全体で討議します。そのテーマを春休み中にレポートにまとめ、4年生になってからの研究課題とし、卒論へと繋がるように発展させる。

 

成績評価のしかた:購読、発表、ワークブックのタスク消化、東南アジア考古学についての年2回のレポート、発表に対する質疑応答や討議での積極度によって総合的に、A〜Dまでの評価を下します。

                                        

受講生に望むこと:1年間、かなりきつい授業ですが、みなさんの大学での生活のあり方を決定づける授業ですので、元気に、積極的に取り組んでください。

教科書:『論文ワークブック』

 

◎お願い

卒論や指導教官制を希望し、講義・演習・卒論演習を受講する方へボランティアのお願いです。受講者への便宜を計るため、小川との連絡や資料コピーなどの仕事をボランティアで働いてくれる方を募集します。各授業数名でいいですから申し出てください。よろしくお願いします。

 

小川研究室連絡方法:
e-mail: kidlat@tufs.ac.jp

授業のお知らせ: http://mixi.jp/home.pl
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