国際日本学

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教員インタビュー

楠本 徹也 KUSUMOTO Tetsuya

役職
大学院国際日本学研究院 教授
研究分野
日本語学、日本語教育学

【English Page】

外から見ると非常におもしろい日本語文法

 私の専門は日本語文法ですが、国文法とは少し違います。外国人への日本語教育が前提ですので、「日本語文法を外から客観的に分析する」「日本語を外国語として分析する」と言ったほうが適切かもしれません。
 1つ例を挙げましょう。「私は学生だ」―これは日本語の教科書でもよく出てくる表現です。その一方、「あなたの好物は?」と聞かれて「私はウナギだ」と答えることがあります。これは、西洋の論理的な文法に慣れ親しんだ外国人からすると、全く理解できない一文です。
 ここでは「主語は?で、述語は...」といった説明は役に立ちません。私が彼らにするのは「日本語では主題性が大事にされるので、主題を前面に出した文構成になることがある」といった解説です。
 日本語を母語とする日本人は、例えば「は」と「が」の違いのように、感覚的に染みついていて意識していないものが非常に多い。しかし、日本語をゼロから習得する外国人にとっては、自分の中にこれから日本語を構築していかなければいけない。そのプロセスの手助けとなるような考え方をいかに伝えるかが大事なのです。「日本語は習得が難しい」と言われますが、実は世界の言語の中でもかなり易しい部類に入ると思います。日本語で難しいのはその構造ではなく、使い方にあります。「私はウナギだ」の例もそうですが、文脈?状況に依存しがちで、また文化的な影響が色濃い言語でもあります。ですから初心者には形から入るよりも、文化的なものを織り交ぜて教えていくほうが効果的なのではと考えています。
 そのためにも、普段当たり前だと思っていることを疑って、何かに気づくことが非常に重要です。「文法は難しくてつまらない」と考えている人は多いでしょうが、そのように考えると実はとてもおもしろい学問です。

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