2014年2月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)
月次レポート(2月)
水沼 修
こちらでご指導いただいているEsperan?a Cardeira先生との今月の面談では,主に,先行研究の章の構成や,ポルトガル語の初期の文法家の記述,データ分析等について話し合いを行いました.
博士論文で,先行研究を扱う章については,以前の面談で決められた方針をもとに執筆をすすめておりましたが,今回の話し合いで,その構成に少し修正を加えることになりました.取り上げる諸研究はいずれもポルトガル語の複合時制に関するものですが,各研究で用いられている 用語や概念(「助動詞」,「文法化」など),方法論はそれぞれ異なります.ポルトガル語の歴史において,複合時制形式が成立した時期や,同形式において直接目的語と過去分詞の性数一致がみられなくなった時期について考える際,たとえ同じデータにもとづいていても,その前提となっている概念に関する考えが異なれば,導き出される結論も違ったものとなります.特に,「haver/ter+過去分詞」の形式を複合時制として考えられるための条件については,研究者によって様々な見解があるため,細心の注意を払う必要があります.この点については,他のロマンス諸語に関する諸研究における扱いを参照することで,研究成果のより正確な評価が行えるのではないかと考えています.これらを十分踏まえた上で,これまでの研究の成果をまとめ,明らかになっていることと,そうでないことをきちんと整理し,博士論文において,本研究の意義を明確に提示できればと思っています.
また,ポルトガル語の初期の文法家については,これまでFern?o de Oliveira(Grammatica da lingoagem portuguesa)や,Jo?o de Barros(Grammatica da Lingua Portuguesa)の記述を中心に見てきました.Jo?o de Barrosについては, 文法書以外の,他の作品におけるhaver/terの使用を調査したRosa Virgínia Mattos e Silvaの研究なども参考にすることで,著者のメタ言語的記述についてより深く理解することが可能となると考えています. 17世紀以降の文法書については,「複合時制」に関する詳しい記述があまり多く見られませんが,比較的近年の文法家(Manuel Said Ali,Epiphanio da Silva Dias等)の記述を参考にしつつ,同形式がそれぞれの時代でどのように考えられていたのかについて,概説したいと思っています.
データに関しては,haver/terが生起する全例文の抽出,および,各項目ごとに整理する作業を行っています.今回の面談では,主に,分類することが難しい例について,協議を行いました. 「所有表現」については,所有対象物に関する分類方法(Mattos e Silva)の妥当性を今後も検討を続けることになりました.また,terの「存在表現」についても,意味論がご専門の先生を交えながら,その定義等に関し,話し合いを続けていくことになりました.
当地滞在期間ものこりわずかとなってきましたが,有意義な時間をすごせるよう精一杯努力していきたいと思います.