2012年3月 月次レポート(小久保真理江 イタリア)
ITP 3月報告書
小久保真理江
先月までボローニャでは厳しい寒さが続きましたが、今月は日毎に気温が上がり、春の訪れを実感できる快適な気候でした。多くの大学生が卒業を迎える季節でもあるため、論文の口述審査を終えた学生たちの歓声や歌声を窓越しに聞きながら図書館で論文執筆を進める日々が続きました。
具体的な作業としては、まず先月に引き続き、第二章第一節の執筆に取り組みました。この節ではファシズム政権下のイタリアにおけるアメリカ大衆文化の受容について音楽?映画?出版の分野を中心に論じています。今月下旬にはこの節の執筆を終了し、友人にネイティブチェックを依頼しました。
その後は、第二章の続きを執筆するため関連文献に再び目を通しながら詳細な構成を再検討し、第二章第二節の執筆に取りかかりました。この節ではファシズム政権下のイタリアにおけるアメリカ社会のイメージについていくつかの傾向と特徴を分析します。
月半ばには、先々月に執筆した原稿(第三章第二節)のネイティブチェックが終わったため、友人の細かな添削やコメントをもとに、加筆修正を行いました。博士論文の核となる部分であり、他の節に比べ分量が多く内容も複雑であるため、この節の執筆?修正には予想以上の時間がかかりましたが、ようやく月末に指導教官に提出することができました。指導教官には来月再び面会し、この原稿についての意見をいただく予定です。
また今月は、大学外のイベントを通して論文執筆に有益な情報を得ることもできました。ボローニャでは毎年3月に国際コミックフェアが数日間に渡り開催されます。期間中は図書館や書店などボローニャの街中で様々な作品が展示されるほか、アーティスト自身による作品のプレゼンテーションなど多様な企画が開催されるため、グラフィックノベルを含めたコミック出版の最新事情を知るための貴重な機会となっています。今年は論文執筆作業で多忙なため、様々な展示を見て回る時間はなかったのですが、ファシズム政権下のイタリアにおけるコミックの歴史について書かれた研究書( Eccetto Topolino: lo scontro culturale tra il fascismo e il fumetto)のプレゼンテーションに出席することができました。ちょうど自身の博士論文で同時期のイタリアにおけるアメリカ大衆文化の受容について執筆していたところでしたので、1930年代の大衆文化の状況や、アメリカンコミックの流通事情、ファシスト政権による出版規制などに関する著者のお話が大変参考になりました。イベント終了後には、著者の一人と直接お話するなかで、研究に関する助言をいただくことができました。
3月24日には、イタリアに短期渡航されていた東京外国語大学側の指導教員にボローニャで面会する機会を得ました。論文の執筆状況を報告すると共に今後の研究の方向性についても相談し、貴重な助言をいただきました。これから論文提出までの残り四ヶ月間、 今まで周囲の方々からいただいた助言や励ましを心に留め、体調管理にも気をつけながら執筆作業を集中的に進めて行きたいと思います。