2010年7月 月次レポート(石田聖子 イタリア)
月次レポート
(2010年7月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])
ヴァカンスに出かけるひとが増え、大学で目にするひと影が日毎にまばらになってゆく今月は、まず、先月より作業を開始した博士論文第三章第一節の執筆、及び、推敲作業を行った。執筆、推敲を終えた第一節原稿をもとにしては、通常通り、派遣先大学指導教員とのあいだで議論を行ったばかりでなく、渡伊中であった本学側指導教員である和田忠彦教授にも直接面会して指導を受ける機会を得ることができた。特に、和田教授からは、論文の内容はもとより、イタリアの映画学専攻に身を置いて博士論文を執筆するにあたっての具体的なアドバイスを様々なレベルにおいて頂くことができ、派遣者にとって大いなる励ましとなった。
上記作業に並行してはまた、つづく第二節の執筆にあたった。第二節では、1909年から1914年まで未来派のメンバーとして活動していたパラッツェスキが同派を電撃的に脱退する三ヶ月前に「ラチェルバ」誌に発表した未来派宣言「反苦悩/Il controdolore」(1914)を対象とした分析を行う。派遣者は、同宣言を、第一に、未来派の所信表明として、第二に、パラッツェスキ個人の詩学表明として、次いで、第三に、20世紀的笑いのとりうる(派遣者によれば全三種の)形態のうちのひとつの理論化の試みとして読むことが可能と考えている。従って、同宣言にて表明された思想、及び、その表現形態の検討は、パラッツェスキ作品を専ら取り扱う同章においてばかりでなく、博士論文全体においてもっとも重要な箇所のひとつとなると考えられる。同節に関してはまた、以前に別所で発表した同論旨の論文を下敷きとして活用するため、具体的な作業としては、現在、既存の日本語論文をイタリア語の論文として通用させるべく再構成する作業を行っている。
ところで、先月のボローニャ映画祭時より引き続いて今月末まで毎晩、ようやく日が暮れる22時より、ボローニャの中心に位置するマッジョーレ広場にて、野外上映会が開催されている。夏の夜の広場での野外上映会は、ボローニャばかりでなくイタリア各地において夏の風物詩として知られているが、ボローニャ市民のあいだでは特に人気のある催しであるらしく、夜な夜な、夕食後の散歩を兼ねて、多くの市民が会場に足を運んでいるようで、実際に、人気のある映画の上映の際や週末には、立ち見が出るほどの大盛況ぶりである。リュミエール作品の3D上映や、生オーケストラによる伴奏付き無声映画の上映などの工夫を凝らしたプログラムに加え、フェリーニ作品、及び、同時期の喜劇を含むイタリア映画といった派遣者の個人的興味を引くプログラムも多く、派遣者も、「星空の下の映画館」に足繁く通っては、ボローニャの夏の夜を大いに楽しんでいる。
野外上映会会場(マッジョーレ広場)の様子。