2013年8月 月次レポート(蔦原亮 スペイン)
八月月次レポート
マドリード自治大学
蔦原亮
今月の大半は大学の夏季休業期間にあたるため、研究室や図書館が使用できず研究の大半をマドリード郊外にある自宅で進めた。現在派遣者の住むアルコベンダス市はマドリードの中心部から電車で30分ほどのところにあるベッドタウンである。もともと閑静な地域ではあるが、今月は派遣者のルームメイトを含む、住民の大半が海岸部や山間部に出払っていたために、輪をかけて静かであった。
街全体が想像以上に落ち着いていたおかげか、派遣者の生活パターンも休業前に比べ、規則正しい健康的なものになったように思う。朝は早めに起きて涼しい内に研究に取り掛かり、気温が上がったところで昼食の準備を始める。昼食後、研究を再開し、気温が下がる夕方に夕食と翌日の食事の買出しにでかけ、その後、近隣住民用に開かれているプールで体温を下げる。ということを今月は繰り返した。こうしたリズムの生活の中では体調や集中力が目に見えて改善されたようで、あらためてよい生活習慣を保つことがいかに重要であるかが身に染みて理解された。
研究については先月、重点的に検討したLieber (2004)の英語における動作主名詞の分析手法を用いて、派遣者の分析対象となるスペイン語の動作主名詞を分析することを目指した。Lieberの分析手法の他言語への応用は既にBisettoやMelloniらにより、イタリア語においてなされている。これらの研究も参考にしつつ、コーパスから収集した分析の対象となる語を実際に観察しながら検討を進め、スペイン語においても、このLieberの手法を用いることで、動作主名詞の見せる様々な振る舞いを体系的に記述することができるのではないかという手ごたえを得た。来月以降はこの方向性で、動作主名詞をさらに詳しく観察していきたい。
また、今月は修士課程時代の同級生の訪問があった。派遣者同様、その同級生も秋に学会発表を控えており、互いの発表の要旨を説明しあった。同級生の研究分野と派遣者の研究分野はまったく異なるものであったが、それ故に、却って互いの要旨の独りよがりな、明確ではない部分が浮き彫りとなり、非常に有意義な時間となったように思う。
来月には今回の滞在における学会発表の第一弾が控えている。様々な方からいただいたアドバイスを基に、万全の準備をした上で臨みたい。