2013年8月 月次レポート(説田英香 ドイツ)
8月レポート
説田英香
報告者は8月1日から2013年度ITP派遣を開始した。派遣先は、ドイツのフライブルク大学であり、派遣先での指導教員はウルリッヒ?ヘルベルト教授である。当大学の文学部近現代史には、2010年9月から在籍し、1970年代から1980年代のドイツ連邦共和国における外国人政策についての研究を行っている。本派遣の目的は、博士論文執筆と、その為に必要となる史料の収集である。報告者は2014年3月に博士論文をフライブルク大学に提出する計画にある。
報告者は7月の一時帰国の際、指導教員の相馬保夫教授に研究指導を仰いだ。その指導をもとに、まずは今後の研究計画の見直しを行った。 当初は派遣開始後すぐに文書館を訪問する計画であった。しかし、博士論文提出の期限が迫っているため、一旦、史料収集に見切りをつけ、本格的に博士論文執筆の作業にとりかかることにした。 宿泊施設との兼ね合いもあり、次回の文書館訪問は11月に計画している。前述の通り、報告者は以前からフライブルク大学に留学していたため、新たに生活の準備などをする必要はなく、即座に研究活動にとりかかることができた。 今月の前半は、一時帰国前から行っていた作業に続き、1983年の「帰国促進法」の結果について調べた。具体的には、 本法を通じてどれだけの外国人労働者とその家族が帰国したのか。また、「帰国促進法」が彼らの移民状況に対してどのような影響を与えたのか、という点について調べた。同時代文献における本法の多義的な評価に対し、文書史料からは政府による漠然とした評価----例えば、「概ね成功」----しか得る事ができなかった。従って、この点については文書史料以外の資料を参照する必要があった。その際、当時政府からの委託で、本法の結果を調査したIAB (Institut fur Arbeitsmarkt- und Berufsforschung der Bundesanstalt fur Arbeit)の調査結果と、研究者による調査文献を二つ参照した(① Liana Unger: Zweite Generation und Ruckwanderung: Ruckkehr in die Heimat oder in die Fremde? Eine empirische Studie zur Remigration griechischer Jugendlicher, Saarbrucken/Fort Lauderdale 1986; ② Beatrix Brecht: Analyse der Ruckkehr von Gastarbeitern, Berlin 1995)。8月の後半は、博士論文の執筆にとりかかった。主に1970年代初頭から1977年までの外国人労働者政策の方針に関する議論をまとめた(博士論文の第一章第三節、第二章第一節にあたる)。これらについては、比較的まとまった史料がすでに手元にあり、すでにまとめを行っていた箇所がいくつかあったため、比較的スムーズに作業をすすめることができた。9月はこの全体的な議論の中に、帰国促進政策の議論を組み込む作業を行う。
以上