トップ  »  新着情報  »  2013年7月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)

2013年7月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)

ITP-EUROPA月次レポート(7月)

水沼 修

 先月に引き続き,今月も,リスホ?ン大学博士課程の中間報告 に向けての準備を進めました.作業内容としては,先行研究の精査,及び,電子化コーパスから抽出したデータの整理が中心でした.

 先行研究については,特に現代ポルトガル語における直説法現在完了に関する研究を中心に整理を行いました.

 当該形式(HABEO FACTUM)の,俗ラテン語から現代ポルトガル語に至るまでの意味機能の変遷については,これまでの諸研究においていくつか仮説が立てられています.代表的なものとしては,俗ラテン語における機能(present states of resulting from past actions)から直接現代ポルトガル語における機能(継続?反復)へと変化したとするもの(例:Harris 19821)や,俗ラテン語から現代ポルトガル語に至る過程で,いわゆる結果構文(resultative perfect),そして,広い意味での"完了"(「単純過去」的用法も含む)を表わすような機能を経たとするもの(例:Squartini 19982)が挙げられます.

 博士論文においては,大規模な資料体から得られたデータを用いて,これら諸説の検討を行いたいと考えています.

 個々の例における用法を意味論的観点から考察を行うのに際し,現代ポルトガル語における用法に関する記述を正確に踏まえた上で,「ロマンス諸語」の枠組みにおけるホ?ルトカ?ル語の現在完了の位置に注目しなか?ら,この形式の歴史的発展のプロセスを明らかにすることができればと考えています.

 データの抽出作業については,これまで同様,電子化コーパスを用いて,「haver/terが過去分詞を伴う形式」だけでなく,"haver"または"ter"に関する全ての用例(所有を表わす形式,不定詞を伴う形式,存在を表わす形式等)を扱い,これら用例の分類?整理を行っています.

 大学は,今月末から夏期休暇に入りますが,この期間を有意義に活用し,休暇後の指導教員との面談に向けて準備を進めて行きたいと思います.


 

1 Harris, M.B. 1982. The "past simple" and "present perfect" in Romance, in N. Vincent and M.B. Harris (eds), Studies in the Romance Verb, London, pp.43-70.

2 Squartini, M. 1998. Verbal periphrases in Romance, aspect, Actionality, and grammaticalization, Berlin-New York, Mouton de Gruyter.

 

このページの先頭へ