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2013年10月 月次レポート(近藤野里 フランス)

ITP-EUROPA
月次レポート2013年10月

近藤野里(パリ第8大学)

 今月は9月末にコーパスの作成が完了したRene Milleranの文法書のデータ処理を開始した。この作業は年内に終える予定である。博士論文に関しては、今月は特にMorin (2005). Liaison et enchainement dans le vers aux XVIe et XVIIe siecles, De la langue au style, pp.299-318.を通読し、16世紀および17世紀における韻文におけるリエゾンの特徴についての傾向を探った。
 Paul Passyによって19世紀末に書かれた「Le Francais Parle (1889)」における母音の分析を始めるために、データ処理を行った。この母音の分析については、東京外国語大学フランス語研究室紀要「ふらんぼー」に11月末に投稿し、また12月初旬に行われるJournee PFC (http://www.projet-pfc.net/pfc2013.html)で発表する予定である。この書は発音記号でフランス語の記述がされており、電子化したものをコーパスとして使用している。特に長母音の観察および「位置の法則」に関わる母音の観察を行うために、データ処理を行った。また、19世紀末のフランス語の音韻体系についての知識を深めるため、以下の論文を通読した。Martinet, A. (1985). La prononciation du francais entre 1880-1914, In Histoire de la langue francaise 1880-1914, Antoine, G. & Martin, R. (dir), Paris : Editions du CNRS.、Lefebvre, A. (2000). La prononciation du francais entre 1880 et 1914, La Linguistique, 36, pp. 341-365.
 このコーパスの特徴として、語末音節だけではなく語中音節にも長母音が観察されることが挙げられる。特に、語中音節の長母音は今日のフランスで話されるフランス語においては大変珍しいものである。ただし、ケベックのフランス語では、この長母音が今日でも観察される。このケベックフランス語における長母音については、Cote(2010)の論文La longueur vocalique devant consonne allongeante en contexte final et derive en francais laurentien. In Carmen LeBlanc, France Martineau & Yves Frenette, red. Vues sur les francais d'ici. pp.49-75. を読むことで理解を図った。この母音の分析は来月も引き続き行う予定である。

 

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