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2011年1月 月次レポート(小久保真理江 イタリア)

                                           2011年1月 ITP月次レポート
                                                                  小久保真理江
  
  今月は重要文献の閲覧や映像資料の視聴の作業と併行して、博士論文の執筆作業に取り組みました。私の博士論文のテーマは「チェーザレ?パヴェーゼとアメリカ文学?映画との関係」で、現在はそのなかの「階級」に焦点を当てた章を執筆しています。
  また今月は、研究に必要な映像資料について、ボローニャとトリノの複数の教授?研究者に相談した結果、それぞれの方から非常に有益な情報?助言をいただくことができました。特にトリノの研究者ヴァレーロ氏が提供して下さった映像資料に関する情報は、大変貴重なもので、このような助けによって博士論文執筆のための研究を効果的に進められることに、非常に感謝しています。
  今月末には国際セミナー発表原稿の加筆修整も行いました。先月にボローニャで開かれたITP国際セミナーではパワーポイント資料を用いて発表したため、来年度出版予定の発表論文集では原稿だけで内容が十分伝わるよう、引用や文献情報を追加しました。また、自らの発表原稿を読み直しながら、その内容を博士論文にどのように取り込むべきかについても改めて検討しました。
  1月19日にはボローニャのグラムシ研究所で開かれた「コロニアル?ポストコロニアルのイタリア文学セミナー(Giornata di Studio sulla letteratura coloniale e postcoloniale italiana)」に聴衆として参加しました。このセミナーはボローニャ大学の教授たちによって企画されたものですが、ナポリや、バリ、シエナなど他の地域の研究者も発表者として招かれており、聴衆も含めて様々な視点から議論が交わされました。エリトリア、ソマリア、エチオピア、リビアなどの国々を植民地支配したイタリアの歴史とイタリア語で書かれたテクストとの関係をテーマとしたセミナーで、文学だけでなく、歴史学や文化人類学、言語教育学などの複数の領域を横断する内容の議論でした。「コロニアル」「ポストコロニアル」という定義の問題性や、新たなステレオタイプ、カテゴリー化の危険性についての意識を持ちながら、こうした研究を進めて行くことの重要性がセミナーでは度々強調されました。コロニアル?ポストコロニアルのイタリア語文学についての研究は、イギリス、アメリカなど英語圏の大学で先に進み、イタリアでは最近になってやっと研究が広がり始めたという状況のようです。セミナーの最後には、エリトリアやエチオピアに出自を持つイタリア語の作家たちを招いた円卓討論が行われ、実際に植民地支配の傷跡を抱えて生きてきた立場からの、緊張感ある激しい議論も交わされました。コロニアル?ポストコロニアルのイタリア語文学というテーマついて、まだ数少ないイタリアの研究者や作家たちに会い直接話を聞くことができた貴重な一日でした。


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