2009年4月 月次レポート(澤井志保 シンガポール)
月次レポート(2009年4月)
博士後期課程 澤井志保
4月1日にシンガポールに到着しました。私の所属先はシンガポール国立大学(NUS)のアジア研究所(ARI)で、ARIとFASS(同大学人文社会科学部)の両方に所属しておられるブレンダ?ヨー教授の受け入れのもと、両機関にて調査研究と研究者との交流を行うことになっています。地理的には、ARIは、よりシンガポール中心地に近いブキッ?ティマ地区にあるキャンパスに位置しており、すぐ裏が王立植物公園であることもあって、緑に囲まれた美しいキャンパスです。一方、FASSの所在地であるシンガポール西部のクレメンティ近郊に広がる広大なメインキャンパスはブキッ?ティマキャンパスからは少し離れていますが、この2つのキャンパスは、無料のシャトルバスに乗って15分ほどで行き来することができます。
NUSアジア研究所 ブキッ?ティマキャンパスのコロニアル調の建物
シンガポールでの第一週目は、図書館カードや院生室の使い方に加え、ブキッ?ティマとメインキャンパスの両方に広がる広大なキャンパスの設備に慣れることにまず費やされました。また、NUSでの受け入れ教員のヨー教授にご挨拶し、私のシンガポールでの研究にあたって、コンタクトをとるのが調査上有益であると思われるARIとFASS所属の研究者の方々を紹介していただきました。シンガポール国立大学は、香港の大学と同じような優れた設備をそなえていますが、東南アジア研究、アジア移民研究においては、特に際立って多くの優れた研究者を抱えていることがわかりました。また、ヨーロッパやアメリカ大陸などからの東南アジア研究者が現地調査を行ううえでのハブともなっているようで、常に多くの東南アジアないし移民研究者の方々がこの大学を訪れ、ワークショップやセミナーなどの知的交流を行っているのを目の当たりにして、これらの分野での研究レベルの高さに圧倒されました。
そしてこのような素晴らしい研究環境は、大学院生のレベルの高さにも反映されていることを、FASSのアジア移民研究クラスタの大学院セミナーで発表させていただいた際に痛感しました。このアジア移民研究クラスタは、FASSの中で、社会学科や地理学科などの研究者を包括して学問分野超域的に構成されており、ARIにも独立して別に存在するアジア移民研究クラスタとも頻繁に共同研究を行っています。ちょうど私がシンガポールに到着した直後に、このFASSアジア移民研究クラスタの中で、大学院生をさらに積極的に調査研究活動に取り込み、研究者との間でより緊密な情報交換システムを確立させようとする動きが始まり、大学院生と研究者の意見交換?協議のためのラウンドテーブルが開催されたのですが、ヨー教授のご尽力で、このラウンドテーブルに先立って、私の香港での調査について発表させていただきました。規模的には小さな集まりでしたが、アジア各地の社会を取り上げて移民研究を行う気鋭の研究者と大学院生の方々のコメントをいただき、大変勉強になりました。
また、ARIでは、私が、エスノグラフィーと文学テクスト分析を組み合わせた研究を行っているということで、カルチュラル?スタディーズ?クラスタの先生にお声をかけていただき、カルチュラル?スタディーズ?クラスタのセミナーで発表させていただきました。どちらかといえば、移民についての生の情報を中心に議論した前回のアジア移民研究クラスタのセミナーとは違い、こちらでは、より文学テクスト分析の手法や理論に焦点をあてた議論になり、前回とは違った角度から自分の研究を見直すよい機会になりました。